
「少年探偵団シリーズ」を著した小説家・江戸川乱歩氏が生まれたのは、1894年10月21日の事。一昨年の2014年は、彼が生誕して120年に当たり、其れを記念してポプラ社から「みんなの少年探偵団」、「全員少年探偵団」、「少年探偵」、「恐怖の緑魔帝王」が刊行されて来た。
江戸川乱歩氏が「少年探偵団シリーズ」を著したのは、1936年から1962年に掛けて。「小高い丘に建つ怪しげな洋館」や「原っぱに設置されたサーカス小屋」等、終戦の傷跡が未だ残っている様な時代を背景にし、「潜入任務を得意とする“ポケット小僧”」や「青銅の魔人や宇宙怪人等に変装する怪人二十面相(四十面相)」等、奇異な設定が特徴。自分が子供だった頃、終戦の傷跡を感じられるのは、渋谷等で時折見掛ける傷痍軍人の姿位だったけれど、其れでも少年探偵団シリーズの世界に魅了されたもの。自分より後の世代にも少年探偵団シリーズは読み継がれているというのだから、凄い作品だと思う。
で、今回読了した「みんなの少年探偵団2」はシリーズの第5弾で在り、且つシリーズの締め括りでも在るのだとか。著者は有栖川有栖氏、歌野晶午氏、大崎梢さん、坂木司氏、そして平山夢明氏と、実に豪華なラインナップ。「ミステリー界を牽引する彼等が、『少年探偵団シリーズ』を、どう現代に蘇らせるのか?」に興味津々。
少年探偵団シリーズの魅力の1つで在る“不可思議且つおどろおどろしさ”が最も色濃く再現されていたのは、平山夢明氏の「溶解人間」。タイトルからも、其れは伝わって来るかと。又、全体的なイメージで言えば、江戸川氏の作風に近かったのは、大崎梢さんの「闇からの予告状」だろう。
個人的に最も心に残ったのは、歌野晶午氏の「五十年後の物語」。小中学校時代の同級生が61歳で亡くなり、其の告別式の後に集まった同級生達が亡き友を偲ぶ中で、50年前の意外な事実が明らかになるというストーリー。映画「スタンド・バイ・ミー」のほろ苦くもジーンと来るテーストが堪らなく好きな自分には、似たテーストを持つ此の作品が心に引っ掛かるのだろう。
総合評価は、星4つ。