ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「ぼくらに嘘がひとつだけ」

2022年10月26日 | 書籍関連

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棋士将棋用語としては俗に将棋指し」・「プロ棋士」とも言い、本将棋を職業(専業)とする人の事。現代では日本将棋連盟に所属し、棋戦に参加する者を指す狭義)。女性限定の制度による「女流棋士」(女流のプロ)やアマチュアへの普及・指導を担当する「指導棋士」は、(狭義の)棋士では無い。

・女流棋士:女性の棋士。日本の将棋界では、「プロ棋士の制度(男女の区別無し)」と「女流棋士の制度(女性のみ)」という2つのプロ制度が併存しており、狭義(制度上)の「女流棋士」は後者を指す。 
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王将等、将棋のの種類、又、「新進棋士奨励会(奨励会)
を経てプロ棋士を目指す場合、「21歳の誕生日初段を、又、満26歳の誕生日迄に四段になる必要が在る。』という厳しい年齢制限が設けられている。」等は知っているが、各駒の特性(役割や動ける範囲等。)は全く知らない。だから、「棋士」と女流棋士」に付いては、「男性を『棋士』、女性を『女流棋士』と呼ぶだけの違い。」と思っていた。実際には「『棋士は男女共に存在し、女流棋士は女性だけ。』という違いだけでは無く、立場等も全く異なる存在。」というのを今回知って、「そうだったんだ。」と驚いた程。

将棋の世界を舞台にした小説ぼくらに嘘がひとつだけ」(著者綾崎隼氏)を読んで、将棋に付いて色々知る事となった。近年藤井聡太竜王の活躍により、将棋に注目が集まっているが、我が国の将棋人口は「凡そ1千2百万人」だとか。東京都の人口が「約1千4百万人」なので、物凄い人数で在る。自分の様に、将棋の駒の特性を知らない人間なんて、少数派に入るのかも知れない。

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「才能を決めるのは、遺伝子か、其れとも環境なのか?」

エリート棋士・長瀬厚仁(ながせ あつひと)&元女流棋士・梨穂子(りほこ)が両親という京介(きょうすけ)。」と、「落ち零れ女流棋士・朝比奈睦美(あさひな むつみ)の息子・千明(ちあき)。」。2人の“天才”少年は、瞬く間に奨励会の階段を駆け上がる。期待を背負い、プロ棋士を目指す彼等に、出生時に取り違えられていたかも知れないという疑惑が持ち上がる。
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両親、そして両親の祖父達が将棋の世界に身を置いている(置いていた)という、“将棋界のサラブレッド”の長瀬京介。9歳と1ヶ月、史上最年少で奨励会への編入を果たす等、周りの期待に応える活躍を見せたが、軈て頭打ち状態”になってしまう。一方、「女流棋士では在ったが、思う様な結果を残せず、引退した後に結婚。でも、僅か1年で離婚し、シングル・マザーとして厳しい生活を送る朝比奈睦美。」を母に持つ千明。京介と千明は同い年乍らも、置かれた環境は天と地程の差が在る。そんな彼等が将棋の世界で出逢い、そして、自分達が出生時に取り違えられた可能性に気付く。「京介の本当の母は睦美で、千明の本当の両親は厚仁と梨穂子。」なのかも知れないと。

赤ん坊の取り違えと言えば、大好きだったTVドラマ赤いシリーズ」の「赤い運命」【動画】の設定でも在った。昭和40年代の病院環境では、赤ん坊の取り違えの可能性が、少なからず在り得と言う。親にとっても子供にとっても、不幸な環境が存在していたのだ。

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女流棋士と棋士では対局料に雲泥の差がある。私たち(=女流棋士達)には定期的な給料がない。棋戦運営することも叶わないし、一昔前までは連盟の意思決定に参画することもできなかった。

・将棋と囲碁並列に語られることが多いが、勝敗のつき方に大きな違いがある。囲碁は陣地を奪い合う
遊戯なため、負けでも奪った陣地の分だけ達成感が残る。しかし、将棋の場合は勝ちか負けしかない。ゼロか百かだ。だから、敗北とりわけ悔しい。

・百人を越える若者が棋士を目指す奨励会にあって、退会パターンは基本的に二つしかない。年齢制限による強制退会と、自分の可能性に見切りをつけての自主退会である。二段以下の奨励会員であれば、若くして退会することも珍しくない。
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プロの世界というのは何れも厳しい物だが、将棋の世界も例外では無い。プロ棋士になる事を目指し、アルバイトをし乍らカスカスの生活を送って頑張るも、年齢制限で夢を断念せざるをない人も少なく無い様だ。幼い頃から将棋一筋の生活を送るも、将棋で食べていけない現実を突き付けられ、“将棋以外の事は何も知らない様な状態”で社会に放り出されるというのは、自らが望んだ道とはいえ、「厳しいなあ。」と思ってしまう。仮にプロ棋士になれても、脚光を浴び続け、大枚を稼げる存在というのも、そんなに多くは無さそう。

「ぼくらに嘘がひとつだけ」では、或る人物の言動に対し、ずっと不快な思いが在った。だから、其の人物の“犯行”が明らかとなった際、「ああいう言動をし続けた奴だから、然もありなんだな。」とも。でも、どんでん返しの後に更なる大どんでん返しが待っており、“真実”が明らかとなった時、其の人物の気持ちを思うと、堪らない感覚に。「そんなにも、自分を犠牲に出来るとは・・・。大事な人から誤解され続けて生きて行くって、本当に辛いだろうな。」と、ウルウルしてしまった。

綾崎隼氏の作品を読むのは、今回が初めて。Wikipediaでは其の作風が、優しく美しい物語。と記されている。他の作品を読んでいないが、少なくとも「ぼくらに嘘がひとつだけ」は、其の通りの作品だ。

総合評価は、星4つとする。


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