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甲府市内で、幼い姉妹2人の殺害事件が発生。盗みの形跡は無く、母親は消息不明。マスコミは「虐待の末の殺人では?」と報道を過熱させて行く。日本新報甲府支局の“サツ回り”担当の南康祐(みなみ こうすけ)は、此の事件を本社栄転のチャンスにしようと、取材を続けていた。
だが、殺害された姉妹の祖父が、度重なるマスコミの取材攻勢によって追い詰められて行く。世間のムードは、母親叩きからマスコミ叩きへと一変。粘り強く取材を続けていた南は、警察内部からのリークで、犯人に繋がる重要な情報を掴む。だが、其処には、大きな罠が待ち受けていた。
軈て日本新報本社では、甲府2女児殺害事件の報道に関する調査委員会が立ち上げられる。元新聞記者でメディア論研究者の高石要(たかいし かなめ)が、調査委員会委員長に抜擢。事件報道の背景を、徹底調査し始めるが・・・。
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事件が起こった際、具体的な証拠は無いのだけれど、状況や見た感じから「此奴が犯人じゃないのかなあ。」と思ったりする事が、正直在る。そういった思いが、冤罪を生み出してしまうので、「いけないなあ。」と自戒したりする訳だが・・・。
堂場瞬一氏の小説「警察回りの夏」は、幼い姉妹2人が殺害され、男狂いの母親が姿を消した事で、「彼女が犯人に違い無い!」とか「鬼母だ!」とメディアやネットで決め付けられ(又は匂わされ)、大騒ぎとなるというストーリー。所謂“メディア・スクラム”を取り上げていて、無責任な報道や書き込みによる“暴力”の怖さを感じる。
又、ネタバレになってしまうが、メディアやネットを悪用し、世論誘導しようとする展開には、そういう事をするのが大好きな人間が国のトップなだけに、絵空事とは到底思えなかった。
堂場氏は元新聞記者という事で、新聞社内部の描写や情報元との遣り取り等にはリアルさを感じるも、肝心なストーリーが尻窄みな感じで残念。最初に風呂敷を広げ過ぎたが故に、書き進めて行く過程で収拾が付かなくなり、無理に結末迄持って行ってしまったという気が。
総合評価は、星3つとする。