受験生だった頃を振り返ると、楽しい思い出よりも苦しい思い出の方が断然多い。作家・林芙美子が色紙等に好んで書いていた有名な言葉に「花の命は短くて、苦しき事のみ多かりき。」というのが在るけれど、差し詰め自分の場合は「受験生活は長過ぎて、苦しき事のみ多かりき。」という感じだ。
苦しい思い出許りの受験生時代、「一般入試要項」、即ち「願書」を作成&提出するのは、唯々面倒な作業だった。決して安くは無い費用を払って願書を入手し、指定サイズに合わせてカットした顔写真を貼ったり、ちまちまと必要事項を手書きで記入して行く。「人相が悪いと、落とされる。」とか「合格ライン上に複数人が並んだ際、字が汚い人は落とされる。」といった“噂”が真しやかに流布されていて、ルックスが良くなく、字の汚い自分なんぞは、「少しでも写りの良い写真を撮って貰おう。」と写真館に足を運んだり、時間を掛けて記入したりと、大変な苦労をしたもの。
此れだけ苦労して複数校の願書を作成し、馬鹿高い受験料迄支払ったというのに、志願校から落とされてしまう。合格するレヴェルに無かったのが、最大にして唯一の理由なのだけれど、其れは判っていても遣る瀬無かった。「あんなにも苦労したのに・・・。」という思いが在ったから。
1月13日付け東京新聞(朝刊)に、「大学入試、エコ化でペーパーレス 『かみ頼み』卒業?ネット願書増加」という記事が載っていた。時代の変化と共に「昔とは変わって来ているんだなあ。」と思わせられる事柄は少なくないけれど、此の記事もそんな1つだ。
最近、インターネットで願書を受け付ける大学が増加している(全国で100校超え。)のだとか。中には近畿大学の様に、“紙の願書”全廃を目指す大学も。
近畿大学の受験者数は延べ約10万人と全国で3番目に多く、例年、願書セットを13万部用意。積み上げると、東京スカイツリー(高さ634m)の3倍の高さに匹敵するが、大体3万部程度が余り、其れ等は廃棄されていた。
「名称に『環境』の文字が入っている学部も多く、エコの効果を考えた。就活のエントリー・シートも、今やネットが主流になっている。」(近畿大学入試センター事務局長・世耕石弘氏)という“環境保護”の観点から、「紙の願書を減らそう。」と2009年度よりネット願書の受け付けを開始。しかし、初年度のネット出願率は6.52%。其の後も、僅か3%前後に留まった。
其処で今シーズンは、「70%のネット出願率を達成すれば、来シーズンは紙の願書を廃止。」という公約を掲げ、通常の受験料が3万5千円なのに対し、ネット出願者の場合は3千円値引く事にした。
「紙の願書は、実は誤記が多い。ネットでは誤記が在ると、自動的にエラーが出る仕組みになっているので防げる。」(世耕石弘氏)という利点も在り、受験料もネットを通じて入金する事が出来ると言う。
「最初は、紙の願書で出そうとしたけど、記入が難しかった。ネットで遣ってみたら楽だった。エコにもなるし、良いのでは。」(近畿大1年の女性)という声が在る一方、学生の側には「神頼み」ならぬ「紙頼み」の意識が結構強いのだそうだ。「紙の方が、間違わずに提出出来る感じがする。」(近畿大1年の男性)、「ネットでは個人情報流出の危険も在って怖い。願書を貰って、出して、試験を受ける迄が受験なのでは。」(近畿大1年の男性)というのが、紙頼み派の声。
「ネット願書のメリット」としては「大学側はペーパーレスにより経費(紙の費用、チェックする為の人件費等)削減が図れ、其の分を受験生に還元(受験料の値引き等。)出来る。又、環境保護にもなる。」、「誤記が減る。」等が挙げられる一方、「問題点」としては「メールで時々見受けられる様に、ネットで送った願書が“ミッシング”になってしまう危険性。」や「個人情報の流出。」、「受験に必要な高校の調査票が紙の儘(電子化されていない。)なので、別途郵送しなければいけない。」等が在る。
ネット出願に付いて、受験者数が全国トップの約11万3千人で在る明治大学は「検討していない。」と、又、2番目の約10万9千人で在る早稲田大学は「調査票の問題等を含め、今後、検討して行く。」との回答を寄せたそうだ。
大学側、そして受験生側双方にメリットが在り、且つ考えられ得る問題点がクリアになれば、ネット願書は悪くないシステムだと思う。何よりも、汚い字を気にしなくて良くなるだろうし。
と思います。
昔のような銀行振り込みのみだと、田舎には都市銀行そのものがないことが多いのでかなり面倒
コンビニ入金OKにしている大学もありますが、コンビニに行くのがちょっと、という場所すらも田舎にはありますし…。
なお、学校が発行する調査票といっても、
一般入試の場合には、高校での成績などはほとんど勘案されるわけじゃないので
そもそも同封不要なのでは?と私は思っております。
入学手続き時に卒業(あるいは同等資格の)証明書を提出する様にすれば
無駄な紙の利用も省けます。
受験する大学すべてに入学するわけではありませんから。
周りに受験期の子が居ない為、受験に関する情報は自分が受験生だったウン十年前の物で止まっている状態です。ですので、今回の(まめ)たぬき様の書き込みは、凄く参考になりました。
昔は調査票(「内申書」と言う方が通りが良いですね。)が受験時に可成り重きを置かれていたと思うのですが、今はそうでも無いんですね。一寸カルチャー・ショックでした。
「入学手続き時に卒業証明書を提出する様にする。」、此れは確かに理に適っていますね。入学出来るかどうかも判らない時点で、全てに提出すると言うのは色んな意味で無駄だし。
受験料の入金にしても、地方では支店を減らしている銀行も少なくない事等から、もっと手軽に支払える方法を取り入れるのも、生き残りを図る大学にとっては大事な事かも。