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「『花燃ゆ』【動画】平均視聴率、大河ドラマ史上最低に並ぶ」(12月14日、朝日新聞)
13日に最終回を迎えたNHK大河ドラマ「花燃ゆ」の全50話の平均視聴率は、関東地区で史上最低に並ぶ12.0%、関西地区は13.0%、名古屋地区では13.6%、北部九州地区で11.6%だった。ビデオリサーチ社が14日、発表した。関東地区では、大河ドラマ史上過去最低だった2012年の「平清盛」【動画】と並んだ。
最終回の平均視聴率は、関東地区で12.4%、関西地区で12.8%、名古屋地区で12.9%、北部九州地区で9.5%だった。
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5年前の記事「大河ドラマ」にて、歴代の大河ドラマに関して「扱われた時代(メインとなった時代)」、「主人公が実在の人物か否か」、そして「主人公の性別」を分析した。調査対象は2012年に放送された「平清盛」迄だったが、今回は其れ以降の作品、再来年(2017年)放送予定の「おんな城主 直虎」迄を加えて分析してみた。全56作品となる。
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「大河ドラマで扱われた時代(メインとなった時代)」
1位:江戸時代(13回)/戦国時代(13回)
3位:幕末(10回)
4位:安土桃山時代(5回)
5位:平安時代(4回)/鎌倉時代(4回)
7位:明治・大正(3回)
8位:室町時代(2回)/昭和(2回)
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「大河ドラマの主人公が実在か否か」
実在の人物:59人
架空の人物:9人
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「大河ドラマの主人公の性別」
男性:52人
女性:16人
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で、話を本題に戻すが、今年の大河ドラマ「花燃ゆ」で扱われた時代(メインとなった時代)は「幕末」で、主人公は「実在の人物」の「楫取美和子(杉文)」で在る。
2年前の記事「『八重の桜』は何故、多くの共感を得られなかったのか?」でも記したが、大河ドラマで女性が主人公の場合、「歴史」を描くというよりも「一家庭」を描くという事に視点が置かれ勝ち(「外向き」では無く、「内向き」な傾向が強い。)で、個人的にはガッカリさせられる作品が目立つ。そして、「八重の桜」【動画】もそうだが、主人公の知名度が高く無い場合、感情移入がし難いというのが在る。
そういう意味で「花燃ゆ」には余り期待していなかったのだけれど、第1回を見終わった段階では「『必要以上に一家族を描く。』という感じは無かったし、そう悪くは無かった。関東地区の初回視聴率はワースト3だったが、第2回以降に期待したい。」と、「まあまあの出来。」という感じだったのだけれど・・・。
回を追う毎に、内向き感が強くなって行った。歴史を描く上で「一家庭」に光を当てるという手法は在りと思うけれど、当て過ぎると「歴史ドラマ」と言うよりも、“悪い意味”での「ホームドラマ」となってしまう。
設定にも「え!?」と思ってしまう部分が少なく無かった。例えば、ドラマ内では杉文と久坂玄瑞が相思相愛で夫婦になった様に描かれていたが、「久坂は文の容姿が気に入らず、夫婦になりたくなかった。」というのが“定説”の筈。
又、人間は誰しも「良い部分」と「悪い部分」を持っている物だが、杉文に関しては「こんなに良い人だった。」、「こんな凄い人だった。」という描かれ方許りで、「そういう描き方は、『連続テレビ小説』の主人公だけで充分!」という鼻白んだ思いも。ドラマで在る以上、或る程度の脚色は許され様が、何事も程度が肝心。
歴代の大河ドラマは、主人公の死で幕を閉じる事が多いけれど、今回はそうで無かった。こういう終わり方も悪くは無いが、個人的には楫取道明の死に触れて欲しかった。
彼は小田村伊之助(後の楫取素彦)と母・寿(杉文の実姉)との間に次男として生まれ、一旦は子供に恵まれなかった久坂玄瑞&文夫婦の養子に迎えられるも、久坂に隠し子が居る事が判明し、小田村家に復籍。後に、次男乍ら楫取家を継ぐ事になるという、実に複雑な人生を送っている。そんな彼は1895年、日本統治時代の台湾で発生した抗日事件で殺害された日本人教師6人(六氏先生)の1人。享年38。
兄・吉田松陰(享年29)、姉・楫取寿(享年43)、弟・杉敏三郎(享年32)、従兄弟・玉木彦助(享年23)、夫・久坂玄瑞(享年24)等、文の身内には夭逝した者が結構居り、楫取道明の若くして悲惨な最期を紹介する事で、文の波乱の人生がより際立った様に思うのだ。
色々書いたけれど、「花燃ゆ」を総合評価すると「今一つ。」という感じで、平均視聴率(関東地区)が大河ドラマ史上最低に並んだというのも頷ける。
その1
幕末を描くのであれば、どの立場から描くにしても盛り込むべき定番の出来事があると思うんです。井伊大老の暗殺・龍馬の暗殺・大政奉還・会津が籠城戦の末に落城したこと・五稜郭の戦いの5つは外せない。前2つは触れられていたもののあっさりしており、後3つはまったくのスルー。そういった定番の出来事を盛り込まずにやたら家庭的なシーンばかりが多かった。
その2
「ここにも主人公の影響が」「実は主人公の手柄」という描かれ方がやたらと多く、giants-55様と同じく私もその点に対して鼻白んでしまいました。出来事の経緯や因果関係とか当時の時代背景・社会風潮を曲げないと主人公を絡ませられない・見せ場が作れないなら、脚本の力不足か、そもそも登場人物の位置づけミス。無理に女性を主人公にしなくても「主要キャラのうちの1人」でいいと思います。もしくは、主演女優にナレーションを兼任させてストーリーテラー的主人公にすれば、むりくりに主人公を絡ませる必要はなくなるのではないかと。
ドラマ化する際に、視聴者を感情移入させたり教訓やメッセージをこめたりするために、モデルとなった人物の設定やストーリー展開を変えることは、多少はアリだと思います。しかし、やるからには改変後の設定や展開にもそれなりのリアリティとつじつまが必要だし、教訓やメッセージも「これを盛り込むための改変なのだな」と頷かせるだけの説得力のあるものにしなければならない。安直に笑いと涙を取ろうとすれば見破られる。緻密な世界観構築が必要。
また、許される改変のしかたや程度は番組枠によって異なります。たとえば時代物でも、先人の生きざまを描き、その気概や知恵に学ぶ的な一代記・重厚な歴史絵巻の枠、勧善懲悪やアクション、人情話で楽しませる枠、といろいろある。
歴史絵巻や一代記は「時代背景・社会風潮・制度・文化は人々の考え方や行動様式に大きな影響を及ぼす」ということを念頭に置いて制作することが求められますが、現代人にも役立つ知恵を盛り込むために敢えてキャラ設定や展開を改変するというのはアリ。ただし、あくまでその時代の枠組みの中で生きた人を描くという線から外れない範囲で。一方、人情話や痛快時代劇は、そこから大きくはみ出してもよいからエンターテインメントに徹することが求められます。大河には向かないが木曜時代劇になら合うという題材や描き方もあるし、その逆もある。番組枠によって異なる、適した題材や描き方、許される改変のしかたや程度を間違えるから酷評されるのだと思います。
「定番の出来事を盛り込まずに、矢鱈家庭的なシーン許りが多かった。」、此れは言えますね。「八重の桜」でも、そういう傾向が見られた。「何でも彼んでも盛り込めば良い。」という訳では無いし、時には定番での出来事で在っても、盛り込まないというのも在りとは思うけれど、そうする以上は、代替として納得出来るだけの物を扱わないと。其れが「一家庭の描写」なのかとなると、「うーん。」と思ってしまうんですよね。
以前、大河ドラマの設定に付いて、其れこそ重箱の隅を突っ突く様な指摘がされた時代が在りました。そういうのはどうかと思うし、ドラマで在る以上、“許される範囲”での脚色は在りと思う。SF的な作品ならば一層ですが、とは言え、余りに御都合主義的な脚色になってしまうと、少なくとも“歴史ファン”は見る気が失せてしまう事でしょう。
ですから、「番組枠によって異なる、適した題材や描き方、許される改変の仕方や程度を間違えるから、酷評されるのだと思います。」というぷりな様の御指摘、全く其の通りだと思います。
幼少期、NHKの連続TV人形劇「新八犬伝」や「真田十勇士」等を見て、歴史に魅力を感じる様になった自分ですので、来年の「真田丸」は非常に期待しています。
女主人公ならもっと面白いのあると思うけどね。
数年前CSで30年ぶりに見た「おんな太閤記」はホームドラマだったから秀吉と秀次の母親がやたら出てきたのが印象的だった。
放映当時は裏番組見てて見てなかった「草燃える」は意外と北条政子が受け身の設定だったな。
メジャー級でも意外とドラマになりそうなのが転がってるけど、「おんな太閤記」や「草燃える」の時代と違って、「チャンネル権」も死語だし、一家そろってテレビを見る時代でもなければ、視聴者に50週×45分も続けてみるような根気もない世の中だから、とうの昔に終わってもいい企画だと思うんだけど。
「メジャー級はネタ切れ。」、そういう面は確かに在りますね。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康という“ビッグ3”は散々使い回したし、そういう意味では、近年の「“一般的知名度が低い人物”を、主役に据える。」という冒険自体は評価しています。
「おんな太閤記」は悪く無かったですね。脚本も然る事乍ら、佐久間良子さんや西田敏行氏、赤木春恵さん等、芸達者な人物が配されていたのも大きい。大河ドラマに限らず、近年のドラマは“顔”をメインに選んでいる様な所が在り、そういう点で芝居が二の次にされている様な感じも。勿論、顔が良くて、尚且つ芝居も上手いという若手も居りますが・・・。
1年間続けなければいけないという事で、展開がスローモーになっている面も。脚本家の腕が問われる所では在りますが、無理に1年間引っ張る位なら、過去に在った様に、“前期”&“後期”で分け、全く違う作品で放送するというのも在りかも。
今後とも、何卒宜しく御願い致します。