「もののけ本所深川事件帖 オサキ江戸へ」

小学校２年の時だったか、社会科の授業の一環としてフジパンの工場を見学した。機械によって次々にパンが製造されるのが凄く面白かったし、御土産に貰った菓子パンの詰め合わせ（菓子パンを家庭で食べる機会は当時、今程普通じゃ無かった様に思う。）が嬉しくて堪らなかったのを覚えている。小学校高学年の時にはコカ・コーラへ工場見学に行ったけれど、矢張り強く印象に残っている。

「知的好奇心を満たし、おまけに御土産も貰える。」という事で、今「大人の工場見学」がブームなのだとか。そんな訳で先日、味の素の工場見学に参加して来たのだが、此れが想像していた以上に楽しかった。ベルト・コンベアー上を次々に商品が流れて行くのは大人でも見入ってしまうし、うま味調味料「味の素」に対する長年の誤解を認識する等、参加して良かったと思っている。様々な業種で「個人向けの工場見学」が実施されているので、興味を持たれた方は参加されては如何か？

閑話休題。

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オサキ（御先）：　日本に伝わる狐の姿をした憑き物。オサキに憑かれた人間をオサキモチと言う。飼い馴らされたオサキはオサキモチの命を奉じて、神変不思議な事柄を行うとされる。
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第８回（２００９年）「このミステリーがすごい！」大賞で「隠し玉」に選ばれた高橋由太氏の作品「鬼とオサキとムカデ女と」。此の作品を大幅改稿＆タイトル変更した上で刊行されたのが、「もののけ本所深川事件帖　オサキ江戸へ」だ。

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江戸・本所深川で、献上品の売買を行う、献残屋の手代として働く周吉。彼はオサキという妖狐に憑かれたオサキモチで在り、何時も懐に居るオサキに、恋に仕事にと、遣る事為す事からかわれている。或る夜、辻斬りに襲われ、殺人も起きる中、店の一人娘・お琴が居なくなった。周吉はオサキモチの不思議な力を使い、お琴を捜しに夜の町へ出て行くが・・・。
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粗筋だけ見るとホラー的なイメージを持つかもしれないが、実際にはコメディー風味の作品で在る。オサキの口調にうざったさを感じなくも無いが、全体的には読み易い文章だと思う。

唯、「ミステリーでは『最も犯人らしく無い人間』が、実は真犯人。」というのが定番とは言え、此の作品では「必要以上に犯人らしく無いという記述が過ぎて、逆に真犯人の目星が早い段階で付いてしまった。」というのがマイナス点。又、最後の締め括りも良くなかった。

総合評価は星２つ。