1945年8月15日、玉音放送により日本は第二次世界大戦に於ける降伏が明らかにされた。其れから65年。「終戦の日」という事で今日は、戦争の悲惨さを伝える歌を紹介したい。歌人・与謝野晶子の代表作と言っても良い「君死にたまふことなかれ」だ。
此の歌に最初に触れたのは、中学時代の国語の授業だったと思う。第二次世界大戦開戦(1939年)の35年前に勃発した日露戦争で、最大の激戦とも言われる「旅順攻囲戦」。此の戦いに軍人として加わっていた2歳年下の弟・籌三郎(ちゅうざぶろう)を思い、詠んだ歌とされている。初めて此の歌に触れた際は、心に鉛の如き重さが残った。今でも忘れられない歌の一つだ。
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「君死にたまふことなかれ」[弟よ死なないで下さい]【朗読】
あゝおとうとよ、君を泣く
君死にたまふことなかれ
末に生まれし君なれば
親のなさけはまさりしも
親は刃をにぎらせて
人を殺せとをしへしや
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや
[嗚呼弟よ、貴方の為に泣いています。弟よ、死なないで下さい。末っ子に生まれた貴方だから、親の愛情は(他の兄弟よりも)沢山受けただろうけど、親は刃物を握らせて「人を殺せ。」と貴方に教えましたか?「人を殺して自分も死ね。」と言って、貴方を24歳迄育てたのでしょうか?]
堺の街のあきびとの
旧家をほこるあるじにて
親の名を継ぐ君なれば
君死にたまふことなかれ
旅順の城はほろぶとも
ほろびずとても何事ぞ
君は知らじな、あきびとの
家のおきてに無かりけり
[堺の街の商人の、歴史を誇る家の主人で、親の名前を受け継ぐ貴方なら、どうか死なないで下さい。旅順の城が陥落するかどうかなんて、私にはどうでも良い事なのです。貴方は知らないでしょうが、商人の家の掟に「人を殺して、自分も死ね。」なんていう項目等は無いのですよ。
君死にたまふことなかれ
すめらみことは戦ひに
おほみずから出でまさね
かたみに人の血を流し
獣の道で死ねよとは
死ぬるを人のほまれとは
おほみこころのふかければ
もとよりいかで思されむ
[弟よ、死なないで下さい。天皇陛下は戦争に、御自身は出撃なさらずに、「互いに人の血を流し、『獣の道』に死ね。」とか「其れが人の名誉だ。」等と、御心の深いお方だからそんな事を御思いになるでしょうか?]
あゝおとうとよ戦ひに
君死にたまふことなかれ
すぎにし秋を父ぎみに
おくれたまへる母ぎみは
なげきの中にいたましく
わが子を召され、家を守り
安しときける大御代も
母のしら髪はまさりぬる
[嗚呼弟よ、戦争なんかで死なないで下さい。此の間の秋に御父様に先立たれた御母様は、悲しみの中、痛々しくも我が子を戦争に召集され、家を守り、安泰と聞いていた天皇陛下の治める時代なのに、重なる苦労で御母様の白髪は増えています。]
暖簾のかげに伏して泣く
あえかにわかき新妻を
君わするるや、思へるや
十月も添はで 別れたる
少女ごころを思ひみよ
この世ひとりの君ならで
ああまた誰をたのむべき
君死にたまふことなかれ
[暖簾の陰に伏して泣いている、か弱くて若い新妻を、貴方は忘れたのですか?それとも思っていますか?10ヶ月も一緒に住まないで別れた、若い女性の心を考えて御覧なさい。此の世で貴方は、1人っきりでは無いのですよ。嗚呼、又、誰を頼ったら良いのでしょう?弟よ、どうか死なないで下さい。]
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此の歌に最初に触れたのは、中学時代の国語の授業だったと思う。第二次世界大戦開戦(1939年)の35年前に勃発した日露戦争で、最大の激戦とも言われる「旅順攻囲戦」。此の戦いに軍人として加わっていた2歳年下の弟・籌三郎(ちゅうざぶろう)を思い、詠んだ歌とされている。初めて此の歌に触れた際は、心に鉛の如き重さが残った。今でも忘れられない歌の一つだ。
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「君死にたまふことなかれ」[弟よ死なないで下さい]【朗読】
あゝおとうとよ、君を泣く
君死にたまふことなかれ
末に生まれし君なれば
親のなさけはまさりしも
親は刃をにぎらせて
人を殺せとをしへしや
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや
[嗚呼弟よ、貴方の為に泣いています。弟よ、死なないで下さい。末っ子に生まれた貴方だから、親の愛情は(他の兄弟よりも)沢山受けただろうけど、親は刃物を握らせて「人を殺せ。」と貴方に教えましたか?「人を殺して自分も死ね。」と言って、貴方を24歳迄育てたのでしょうか?]
堺の街のあきびとの
旧家をほこるあるじにて
親の名を継ぐ君なれば
君死にたまふことなかれ
旅順の城はほろぶとも
ほろびずとても何事ぞ
君は知らじな、あきびとの
家のおきてに無かりけり
[堺の街の商人の、歴史を誇る家の主人で、親の名前を受け継ぐ貴方なら、どうか死なないで下さい。旅順の城が陥落するかどうかなんて、私にはどうでも良い事なのです。貴方は知らないでしょうが、商人の家の掟に「人を殺して、自分も死ね。」なんていう項目等は無いのですよ。
君死にたまふことなかれ
すめらみことは戦ひに
おほみずから出でまさね
かたみに人の血を流し
獣の道で死ねよとは
死ぬるを人のほまれとは
おほみこころのふかければ
もとよりいかで思されむ
[弟よ、死なないで下さい。天皇陛下は戦争に、御自身は出撃なさらずに、「互いに人の血を流し、『獣の道』に死ね。」とか「其れが人の名誉だ。」等と、御心の深いお方だからそんな事を御思いになるでしょうか?]
あゝおとうとよ戦ひに
君死にたまふことなかれ
すぎにし秋を父ぎみに
おくれたまへる母ぎみは
なげきの中にいたましく
わが子を召され、家を守り
安しときける大御代も
母のしら髪はまさりぬる
[嗚呼弟よ、戦争なんかで死なないで下さい。此の間の秋に御父様に先立たれた御母様は、悲しみの中、痛々しくも我が子を戦争に召集され、家を守り、安泰と聞いていた天皇陛下の治める時代なのに、重なる苦労で御母様の白髪は増えています。]
暖簾のかげに伏して泣く
あえかにわかき新妻を
君わするるや、思へるや
十月も添はで 別れたる
少女ごころを思ひみよ
この世ひとりの君ならで
ああまた誰をたのむべき
君死にたまふことなかれ
[暖簾の陰に伏して泣いている、か弱くて若い新妻を、貴方は忘れたのですか?それとも思っていますか?10ヶ月も一緒に住まないで別れた、若い女性の心を考えて御覧なさい。此の世で貴方は、1人っきりでは無いのですよ。嗚呼、又、誰を頼ったら良いのでしょう?弟よ、どうか死なないで下さい。]
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