東京新聞に「東京トリビア」なる連載コラムが在るのだけれど、4月10日付け(朝刊)のタイトルは「プロ野球は東京にも・・・ドラゴンズが在った」だった。
東京六大学で同期の長嶋茂雄氏(立教大学→ジャイアンツ)と共に、早稲田大学からドラゴンズ入りした森徹氏(77歳)。入団2年目の1959年には本塁打王及び打点王の二冠に輝き、強打の外野手として名を馳せたが、首脳陣との確執も在り、移籍を繰り返した後、1968年に引退する事となった。
33歳の若さで引退した森氏に、或るオファーが舞い込む。「アメリカで不動産業等を営んでいた人物が、メジャー・リーグに匹敵する第3のリーグ戦『グローバル・リーグ』を立ち上げる。世界規模のリーグ戦で在り、其の日本チームを任せたい。」と言うのだ。
「自分の様にチーム内の人間関係を悪くし、プロを去る選手が多かった時代。再挑戦する受け皿になれば。」という思いから、森氏は選手兼任という条件で監督職を受諾。1969年に設立された其のチームの“通称名”が「東京ドラゴンズ」で、メンバーは25人。古賀英彦投手(元ジャイアンツ)や関根勇選手(元アトムズ)、矢ノ浦国満(元ジャイアンツ)等のプロ選手に、テストで選んだアマチュア選手を加えた陣容。ユニフォームは白地に赤文字で「TOKYO」と記されていたのだとか。
フロリダでキャンプを張り、同年4月24日、ベネズエラの首都カラカスで開幕戦を迎える。現地でのチーム名はスペイン語で「日本の東京」を意味する「ハポン・デ・トキオ」。ナインはベネズエラ、アメリカ、プエルトリコの各都市をバスで転戦し、5月16日迄の11試合を「7勝3敗1引き分け」と勝ち越した。実力的にはメジャーと3Aの間位だったと言うが、体格やパワー、身体能力で勝る連中を相手に、盗塁やヒットエンドランで掻き回し、狙い球を絞ってメジャー級の投手に食らい付いた結果、勝ち越しという結果を生み出す事に。
リーグから「日本や台湾での試合の準備」を要請された森氏は、チームを離れて5月中旬に一時帰国するのだが、彼が不在の間、状況は急変する。リーグが資金難に陥り、選手達への給料は支払われず、滞在費も滞る。「『宿泊難民』と化した選手達は、ベネズエラの日本大使館に保護される事態となった。」というのだから、笑えない話だ。因みに、リーグ経営が悪化した大きな要因は、ヴェトナム戦争下の不景気だったとか。
其の後、森氏はチームに合流し、アメリカで練習試合を数回行うが、9月12日には帰国。グローバル・リーグは僅か半年で消滅し、東京ドラゴンズも解散する事に。アメリカで用具一式を売り払ってしまう等、当時を振り返る物品は残っていないそうだ。
「名前は言えないが、一時帰国した際に、日本球団のエース級や、主軸打者から、「連れてって。』と頼まれた。(リーグが存続していれば、格好の腕試しの場となり)日本人がメジャーでもっと早く活躍していたのでは。」と推測した上で、森氏は「東京ドラゴンズが存在した意義」に付いて、次の様に語っている。
「日本のプロ野球が、世界と闘う思想が、彼の時芽生えた。失敗したが、何等かの形で、今のWBCの成功に繋がっていると思う。」。
グローバル・リーグでは、選手はチームとでは無く、リーグと契約する形で、1ドルが360円だった当時、最低月給は600ドル。「民間企業の部長クラスの2倍」に当たる金額というから、結構な対価だったに違い無い。
当初は「アメリカ(2チーム)、プエルトリコ、ベネズエラ、ドミニカ共和国、そして日本の5つの国と地域から6チームが、各チームを転戦して試合をする計画。」で、将来的には「日本からは2チームにし、韓国や台湾、欧州勢の参加。」も期待していたと言う。資金難でリーグが消滅していなかったら・・・プロ野球を取り巻く環境は、今と大分異なっていたかもしれない。
森と言ったら力道山が頭に浮かびます
森の母親と力道山は仲が良く力道山と森は義兄弟の間柄だったそうですね
飛躍した空想ですがプロレスで世界を相手にする力道山に影響されて東京ドラゴンズとして世界と戦いたいと思ったのかもしれませんね(絶対そんな事は無いと思うけど)
世界と戦いたいと言うロマンはいつの時代にも有ると言う事ですね
森氏と力道山氏の関係、初めて知りました。置かれた環境に影響を受ける事は良く在りますが、力道山氏の様な凄い存在が身近だと、少なからずの影響は受けたでしょうね。
ドラゴンズ、今季の順位予想(http://blog.goo.ne.jp/giants-55/e/6bcb490e289ac6449f4e6d9023f052c8)では「3位」としました。例年、自分の予想よりも最終順位が上回るドラゴンズ。今季も苦戦を予想しつつ、「最終的には、優勝争いに絡むんだろうなあ。」と思っていたのですが、よもや(一時的にせよ)最下位になるとは全くの予想外。外国人選手の流出が、思っていた以上に響いている感じですね。
でも、此のチームは“地力”が在りますので、何れは上昇して来ると思います。