ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「風を彩る怪物」

2022年08月24日 | 書籍関連

************************************************
「私達、本当は何になりたいの?」。

音大受験に失敗した名波陽菜(ななみ はるな)は、自信を取り戻す、姉の住む自然豊かな奥瀬見に来ていた。フルートの練習中に出会ったのは、パイプ・オルガン制作者の芦原幹(あしはら みき)・朋子(ともこ)親子。陽奈は同い年の朋子と共に、パイプ・オルガンの音作りを手伝う事に。

だが、次第にパイプ・オルガンに惹かれた陽菜は、此の儘フルートを続けるべきか迷ってしまう。中途半端な姿に朋子は苛立ち募らせ、2人は衝突を繰り返す。

そんな中、朋子に思いも寄らぬ困難が押し寄せる。絶望に打ち拉がれ乍ら、パイプ・オルガン制作を続けるかかに葛藤し、朋子は“怪物”を捜しに、森の中に入って行くが・・・。

果たして、パイプ・オルガンを完成させる事は出来るのか?
************************************************

逸木裕氏の小説風を彩る怪物」は、「フルートの演奏に心血を注いで来た名波陽奈。」と「パイプ・オルガン制作に心血を注いで来た芦原朋子」という2人の少女が主人公。見た目も性格も全然異なる彼女達だが、共通するのは天才の存在によって、自身の進む道に揺らぎが出ている。という点。陽奈の場合は「フルートのコンテストで目の当たりにした3人の天才達の存在。」、そして朋子の場合は「パイプ・オルガン制作の天才で在る父・幹の存在。」が、結果的に彼女達を懊悩させる事に。

************************************************
オルガンはパイプがたくさんあるので複雑に見えますが、原理は単純です。オルガンは<ふいご>という“”を持ち、パイプに風を供給します。アコーディオンにあるような、蛇腹を使って空気をためる装置です。そして、パイプに送り込まれた風が歌口カルマン渦を作り、音が鳴る。フルートと同じく簡単な原理なので、古代から存在します。ただ、フルートが一本のパイプで様々な音を吹き分けられるのに対し、オルガンは一本のパイプでひとつの音しか出すことができません
************************************************

叔父は、音楽に関わる仕事をしている。作詞家作曲家等では無く、楽器の演奏を生業としており、オーケストラに参加したりもしていた。だが、自分はと言えば、真面に楽器の演奏をした事も無く。クラシック音楽素養も無い。だから、楽器やクラシック音楽に関する詳細記述を読むと、正直頭がクラクラして来る。「風を彩る怪物」も、そんな記述で溢れている。上記した様に、興味深い記述も在ったが、全体としては“流し読み”してしまう部分が多かった

陽奈は3人の天才達の存在により、「自分は器用なだけで、彼等の様な強烈な特徴を持ちていない。」事を思い知らされる。だからこそ彼女は、「一本のパイプで様々な音を吹き分けられるフルート。」よりも「一本のパイプで1つの音しか出す事が出来ないけれど、幾つものパイプによって強烈な特徴を生み出せるパイプ・オルガン。」に魅力を感じたのだ。

想定内過程”を経て、“想定内の結末”に到っているので、意外性は全く無い。流し読みしてしまう部分も多く、後に残る余韻も無い。

総合評価は、星3つとする。


コメント    この記事についてブログを書く
« “白河の関越え”成る | トップ | 可能性は10% »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。