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「米ユナイテッド便で過剰予約、乗客を引き摺り出す強制措置に非難殺到」(4月11日、CNN.co.jp)
米ユナイテッド航空の旅客機で、過剰予約により座席数が足りなくなるオーヴァー・ブッキングが発生し、既に搭乗していた男性乗客が警官に両手足を掴まれて、無理矢理機外に引き摺り出される騒ぎが在った。
乗り合わせた複数の乗客が、此の様子を撮影したヴィデオ【動画】をソーシャル・メディアに投稿し、ユナイテッド航空には、非難が殺到。対応した警官1人が休職扱いとなり、米運輸省も調査に乗り出すと表明した。
騒ぎは、9日の米シカゴ発ケンタッキー州ルイヴィル行きの便で起きた。ユナイテッド航空の広報によると、座席数が足りなくなった為、一部の乗客に降りて貰う必要が生じ、複数の乗客に対して補償と引き換えに、座席を譲って貰う様頼んだ。同便には、ルイヴィで別の便に乗務する乗員4人を搭乗させる必要が在ったと言う。
然し、自発的に降りてくれる乗客が居なかった事から対応を余儀無くされ、乗り換え便への接続等、複数の要因を判定するシステムを使って、降りて貰う乗客を決定した。
対象となった男性乗客に対しては、何度も状況を説明したが、聞き入れて貰えなかった為、運輸省が定める手順に従って、シカゴ航空局の係員が同機から排除したとしている。
別の乗客が撮影したヴィデオには、警官3人が座席に座っていた男性乗客を引き摺り出し、両手足を掴んで仰向けの状態で、通路を引き摺り乍ら運んで行く様子が映っている。周囲の乗客からは、抗議の声が上がっていた。
此の場面を目撃した乗客によると、先ず警官2人が穏やかな口調で「座席を譲って欲しい。」と頼んでいたが、もう1人の警官が乱暴な態度で降りる様指示、拒まれると男性の体を掴んで、無理矢理座席から引き離した。
男性はアームレストに頭をぶつけて叫び声を上げ、「自分は医師だ。」と名乗って、「中国人だから、こんな対応をされるのか。」と抗議していたと言う。機内は騒然となり、泣き出す子供も居た。
乗客の1人は、「無理矢理降ろされた男性が、後に顔から血を流し乍ら、又、同便に搭乗して来て、其の後再び、今度は抵抗する事無く降ろされた。」と話している。此の証言に付いて、ユナイテッド航空は確認していない。
米運輸省によると、殆どの航空会社は乗客が現れなかった場合を想定して、座席数を超す予約を受け付けている。自発的に降りて貰えなければ、航空会社が乗客を選んで降ろす事も認められていると言う。
然し、動画が投稿された事を受けて、ユナイテッド航空の対応を非難する声が殺到した。
同航空のオスカー・ムニョス 最高経営責任者(CEO)は謝罪の声明を発表し、「緊急事態と受け止めて、当局と連携し、事実関係に付いて詳しく調査する。今回の状況に対応する為、此の乗客とも接触して、直接話し合う。」とコメントした。
シカゴ航空局は警官の対応に付いて、「定められた手順に従っておらず、其の行為は容認出来ない。」との判断を示し、処分が決まる迄、問題の警官を休職扱いとした事を明らかにした。
同便には騒ぎの末に、ユナイテッド航空の乗員4人が搭乗したが、周りの乗客の非難の的になったと言う。
一部始終を目撃した乗客のタイラー・ブリッジェズさんは、「既に座席に就いた乗客を排除する様な事が、在ってはならない筈。オーヴァー・ブッキングが在ったのなら、搭乗出来る人のみを機内に案内すべきだった。」と話している。
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日本でも、オーヴァー・ブッキングは結構在る様だ。国土交通省によると、「2015年度に日本の航空会社で生じたオーヴァー・ブッキングは、合計で1万1,550席。」との事。詰まり、1日に約32席のオーヴァー・ブッキングが発生している訳だ。大半は会社のキャンセル依頼に応じる客によって解決する一方で、解決せずに搭乗出来なかった客は1,858人も居たそうで、1日当たり約5人存在した事になる。
オーヴァー・ブッキングが発生した際、航空会社は先ずカウンターや搭乗口で別便への振り替えやキャンセル、ビジネス・クラス等へのアップグレードを呼び掛け、応じた客には現金やマイルを支払う。「フレックストラベラー制度」と呼ばれる物で、我が国では2001年に導入されたそうだ。日本航空及び全日空の場合、「当日の便への変更:1万円、又は7500マイル。、翌日の便への変更:2万円、又は1万5,000マイル(宿泊費や交通費は航空会社負担)。」という規定。
実は自分も、オーヴァー・ブッキングの被害に遭った事が在る。海外出張の為、成田空港で日本航空便に乗ったのだが、本来乗る便がオーヴァー・ブッキングだったとの事で、カウンターにて「後の便に変更して貰えないだろうか?」と言われたのだ。当日は日曜日で、仕事は翌日からだった事から、「構いませんよ。」と了解したのだが、本来のエコノミー・クラスから良い席(「ビジネス・クラスとファースト・クラスの間の位置付けの席。」と説明された記憶が。)に交換してくれた。もう20年以上前だったと思うので、「フレックストラベラー制度」は無かった筈だが、提供される機内食は豪華だし、周りは金持ちそうな人許りだったので、居心地の悪さを感じたりもした。
で、話を今回の事件に戻すが、とんでもない暴挙だと思う。日本の航空会社の場合は「一旦搭乗した客を無理矢理降ろすなんて事は在り得ず、仮令遅延が発生しても、協力を求め続ける。」と言う。「搭乗前に、オーヴァー・ブッキングの対応を済ませなかった。」というのが、ユナイテッド航空の第1の問題点。
第2の問題点は「オーヴァー・ブッキングに加え、ユナイテッド航空の別便の乗員4人を乗せる為、乗客4人を降ろさせた。」という事。完全に同社内の問題で在り、乗客には何等責任が無い訳で、なのに乗客1人を暴力的に引き摺り出すというのはおかしい。報道によると、件の中国人男性は医者で、翌朝に患者を診なければならなかったとの事。「席を譲りたくても、譲れない状況だった。」となると、今回の対応は問題だ。
そして、第3の問題、此れが一番の問題かもしれないけれど、報道によると「『降ろす乗客は、コンピューターで無作為に選んだ。(乗り換え便への接続等、複数の要因を判定するシステムとは言うが。)』とされているのに、選ばれた4人は全てアジア圏の乗客だった。」という事。路線を考えると、アジア圏の乗客が多数とは考えられず、「無作為で選んだら、偶然全てアジア圏の乗客だった。」というのは無理が在る。どうしても、人種差別的な匂いを感じてしまう。
トランプ政権のアメリカ第一主義、排他的体質がこういう事態を引き寄せてしまう、とどうしても結び付けて考えてしまいます。
「選ばれた4人は、全てアジア圏の人間だった。」というのは一部メディアが報じていたのですが、若し事実としたら、本当に酷い話。世界的に自国至上主義&排他主義が強まっており、アメリカも其の例外では無い。そういう風潮が、今回の事件に影響している可能性は否定出来ないでしょうね。