宮部みゆきさんの小説「杉村三郎シリーズ」に付いては、最初に読んだのが第3弾「ペテロの葬列」(総合評価:星4つ)。後は第1弾「誰か Somebody」(総合評価:星2つ)、第4弾「希望荘」(総合評価:星4つ)、そして先日の第5弾「昨日がなければ明日もない」(総合評価:星4つ)という変則的な順番で読了。今回、残る第2弾「名もなき毒」を読む事に。(他作品の中に収録された、杉村三郎が登場する物も読了。)
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今多コンツェルン広報室に雇われたアルバイトの原田いずみ(げんだ いずみ)は、質の悪いトラブルメーカーだった。解雇された彼女の連絡窓口となった杉村三郎(すぎむら さぶろう)は、経歴詐称とクレーマー振りに振り回される。折しも街では、無差別と思しき連続毒殺事件が注目を集めていた。
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「宮部作品は概して、自分と“肌合い”が良く無い。」という自分だが、「杉村三郎シリーズ」に関しては高く評価している。宮部作品に在り勝ちな“くどくどしい記述”が薄く、又、「淡々とした記述が貫かれている中、“人間の非常に醜悪な面”をさらっと入れ込んでいる所がとても印象的。」なのが好き。
第4弾「希望荘」では探偵として働く杉村三郎だが、今回読了した「名もなき毒」では会社員。巨大な今多コンツェルン・グループの1人娘(非嫡出子)・菜穂子(なほこ)の入り婿として、気苦労の多い日々を送っている。人が良い彼は、結果として様々な事件に関わる事になってしまうのだけれど、今回は「モンスター・クレーマー」と「毒殺事件」にだ。
常軌を逸したレヴェルのモンスター・クレーマー、最近ではニュース等で良く見聞するが、「名もなき毒」に登場する原田いずみのモンスター・クレーマー振りは、小説の中の話とはいえ、読んでいて吐き気がする程の不快さ。こんな輩に目を付けられたら、“災難”の一言では済まされないだろう。
“犯人当て”等、ミステリーの根幹に関わる部分に関しては、少々弱さを感じる。犯人を当てられたし、“或る問い合わせ”に触れられた部分では、“先の展開”が読めたので。
とは言え、人間の持つ様々な面が深く描かれているし、良くも悪くもどっぷりと感情移入出来てしまう。
総合評価は、星4つとする。