一昨日、投・開票が行われた「衆議院議員総選挙」及び「東京都知事選挙」に関して、様々な突っ込み所が在った。今日の記事は、其れ等を取り上げてみたい。
① 不思議な夫婦
自分は期日前投票制度を利用したのだが、投票所の出入り口脇には、大きな犬を連れた50代と思しき夫婦が立っていた。出入り口を入ろうとした際、唐突に奥さんの方が旦那に向かって「こんな状況で民主党に投票する人って、本当に馬鹿よね。自民党か公明党しか在り得ないわ!」と大声で言っていた。「国民の期待を大きく裏切ったのだから、民主党に幻滅する人が居るのは当然だろうな。」と思い乍ら、中に入って投票を済ませ、出入り口に向かうと、さっきの夫婦が未だ居た。
近所で買い物をし、2時間後位に投票所の前を通り掛かると、未ださっきの夫婦が出入り口に居たので、「何してるんだろう?」と気になり、然りげ無く彼等の様子を見ていたら・・・。
人が入る度に「こんな状況で民主党に投票する人って、本当に馬鹿よね。自民党か公明党しか在り得ないわ!」という“台詞”を奥さんが口にしているではないか。丸で「そう口にする様にプログラミングされたロボット」の如く。
桜の開花は未だ未だ先だと言うのに、“サクラ”は咲き誇っていたという訳か。
② “転向”生
都知事選では、猪瀬直樹氏が勝利を収めた。此れ迄の都知事選に於ける「最多得票数」は、1971年の美濃部亮吉氏が獲得した「361万5,299票」で、今回猪瀬氏が獲得したのは「433万8,936票」というのだから、大圧勝と言って良いだろう。
猪瀬氏と言えば、大学時代に学生運動の指導者を務める等、抑は「左」の極に居た人。赤尾敏大先生【動画】(思想的には全く相容れなかったけれど、此の人の演説には“ハート”が在った。)や“ナベツネ”、西部邁氏等々、「左」から「右」の極に転向した著名人は少なからず居るけれど、“転向”生の猪瀬氏が、「右」の象徴と言っても良い石原慎太郎氏とタッグを組み続けて来たというのは面白い。
・・・と思っていたら、此方の情報によると、石原氏も学生時代には「左」に憧れていた時代が在ったらしい。そうなると、“転向”生同士のタッグという事になるが。
③ 死票率
12もの政党が乱立した事で、「選挙に於いて、其の票を投じた有権者を代表する当選者が居ない票。」を意味する「死票」が、今回の衆議院議員総選挙では増えるだろうとは思っていた。投票日前には、「史上最高の死票が出る選挙」という記事も在ったし。
で、蓋を開けてみると、「今回の“小選挙区”候補の全得票に占める死票率」は56.0%にもなったとか。前回の衆議院議員総選挙では46.3%だったので、9.7%も上昇した事になる。
圧勝した自民党の死票率は12.9%(前回の大敗時には74.0%)、一方、大敗した民主党は82.5%(前回の圧勝時には13.2%)。「『小選挙区制』は、極端な結果が出易い選挙制度。」というのは理解していたけれど、結果として「44.0%」が“国民の総意”となり、「56.0%」が切り捨てられてしまうというのは、おかしい気がする。
④ 投票率
今回の衆議院議員総選挙の確定投票率は、小選挙区が59.32%、比例代表が59.31%で、共に戦後最低を記録したそうだ。「投票は、権利で在ると同時に義務。」と考えている自分は、選挙権を得て以降一度も棄権した事が無いので、此の投票率の低さは不思議でならない。結局の所、「棄権は損。」という意識が、棄権常習者には希薄なのだろう。
残念な話では在るけれど、こういう状況下でも棄権してしまうという人は、概して「此の候補者はイケメン(又は美人)だから、投票しちゃおう!」とか「面白そうだから、こいつに投票しちゃえ!」みたいな乗りで投票しそうな気もするので、「其れならば、棄権した方が良いのかもなあ。」と思ったりも。自分が「首相公選制」に反対するのも、そういった点に懸念を感じているからだし。
⑤ 「此れから決めますから。」って・・・
一昨日の選挙特番、何の局も「当選した~さんの喜びの声を、現場から御伝えします!」とか、「~さんが落選しました!」等とヴァラエティー番組の様な乗りで報じていたが、そんな中でも「池上彰の総選挙ライブ」は異彩を放っていた。司会を務める池上氏は「公明党と創価学会の密接な関係」に触れたり、「日本維新の会内での大きなブレ」を突っ込んだりと、あらゆる政党に対してシヴィアな指摘をしていた。「国民が知りたいと思っている事は、タブー視せずに聞く。」、ジャーナリストとはこう在るべきではなかろうか?*1
一心不乱に視聴してしまったのが「池上彰の総選挙ライブ」ならば、真夜中に放送された「朝まで生テレビ!」は見ていて苦笑の連続だった。何の政党も主張に大なり小なり矛盾が在り、其処を突っ込まれると詭弁を弄したり、話を逸らしたりと、実に見苦しかったから。
特に酷かったのは日本維新の会。スポークスマンとして出演していた東国原英夫氏に対して、「代表の石原慎太郎と代表代行の橋下徹氏の主張が余りに食い違っている。」点が何度か指摘されたが、其の度に「マスメディアはそういう報道をしていますが、内部では確りと意思統一がされている。全く心配無い。」と言い張っていた東国原氏。しかし「原発をずっと稼働し続けるのか、其れとも停止の方向なのか?」という質問では、「此れから、党内で纏めます。」と発言。「選挙が終わってから取り決めるって、おかしいじゃないか!」とあらゆる政党から突っ込みを入れられていたが、そりゃそうだろう。
日本維新の会に関しては「遠からずには分裂し、多くの議員が自民党に移るだろう。」と思っていたけれど、此の発言で其の思いは強くなった。民主党の“ごちゃ混ぜ感”も相当な物だったが、日本維新の会は其れ以上かもしれない。
大笑いしてしまったのは、自民党の山本一太氏の発言。「自民党は、何も変わっていないのでは?」という問い掛けに対し、「そんな事は無い。」と反論。「今回は候補者を決める上で、選考を厳しくしたので、優秀な人材許りだ。若い新人が大勢当選したし。」というのが理由だそうだが、「『今回は』という事は、『其れ迄は』甘い選考だったのを認めたって事だよね?」と突っ込みたくなった。*2
又、若い新人が大勢当選したというけれど、「親族に国会議員が居て、地盤を継承している。」、「地盤を継承していなくても、父母や祖父母が国会議員。」という何れかを満たしているのが「世襲議員」と定義するならば、今回の選挙で当選した新人で世襲議員となるのは114人で、其の殆どが自民党という現実。世襲議員が全て駄目とは言わないけれど、3年前の記事「世襲議員」で詳細を書いた様に、世襲議員には問題が多いと思っている。「世襲候補の擁立、先ず在りき。」で形式だけの選考を行い、其の結果として彼等の多くが当選し、その結果「若い新人」が増えたというのが、果たして「自民党は変わった。」という事になるのだろうか?
*1 自身にとって不都合な質問をされると、馬鹿だ何だと個人攻撃し出す石原慎太郎氏。全く以て女々しい御仁だが、個人攻撃されるや否や黙り込んでしまう質問者というのも情けない。一昨日の選挙特番でも出演していた御笑いタレントが速攻で「済みませんでした。」と謝罪していたが、怯む事無く的を射た質問を繰り出していた池上氏は立派!根は小心者の石原氏なのだから、自らに「正当性」が在るのならば、質問者は怯んではいけない。
*2 所謂“小泉チルドレン”の1人として当選し、妙な掛け声と濃い見た目だけが印象的だった人物が、どさくさに紛れて(?)、今回の衆議院議員総選挙に立候補していた。議員時代には金銭に関するゴタゴタしか記憶が無い此の人物、「自民党から出馬しさえすれば、誰でも当選する。」といった感じの今回の選挙でも、当選出来なかった。選挙民にも「最低の倫理観」は在ったという事か。
私もテレ東系見てました。
中村喜四郎が出てきたのに驚いたのと、自民元職に「3年半どうやって暮らしてたのか?」に「ピザや経営の妻に食わせてもらっていた」というつましい発言を引き出したことや、多数決要員の見るからにおぼっちゃんだが気弱な若い文教族議員をその彼の分野に今現実的に困ってる坂下チリコがやりこめたのが痛快だったです。
内容はチリコは金には困ってないと思うがそんな人でも保育所問題で困ってるのにあんたまだそんなこと言ってるのか!という感じだった。私立幼稚園団体は自民文教族のショバだったが今は地域によっては旧田中派系の民主党支持だったり(うちの選挙区はそう)色々。一方私立保育所は共産党系、社民党系が強いようです。
こういう裏側が見られたので面白かったです。
雰囲気的には、“彼の会”の人達という感じでした。“彼の会”に限らず、新興宗教に入って勧誘活動している人達って、勧誘文句が決まって「御辛い事は在りませんか?」みたいな事を口にするのですが、そういっている本人達が辛そうだったり、不幸そうだったりするのは気のせいでしょうか。
spade様も池上氏の番組を見ておられたのですが。NHKは別にしても、ヴァラエティー仕様で面白おかしく選挙を取り上げている番組が多い中、テレビ東京の特番は“良い意味で”個性的でした。厳しく突っ込む所は突っ込み、と言って堅いだけの内容じゃない。国民が知りたいと思っている事、突っ込んで聞いて欲しい事、恐らく多くが知らないで在ろう事を、池上氏が冗長になる事無く、簡潔に説明していたのが凄かった。
他の番組でも芸能人がゲストで出ていたけれど、概して雛壇芸人と変わらない状況。くりーむしちゅーの上田氏なんか、もっと厳しい突っ込みを入れるかと思いきや、石原氏の女々しい罵倒に対し、あっさり謝罪をする等、非常にガッカリさせられた。其の一方、今回に関して言えば、坂下千里子さんは鋭かった!
同じ匂いをかぎ分けるって感じですかね(笑
実は実家で親と見てたのですが、別の局でツイッターなどと連携でやっている局をつけたときに、インターネットなど触ったことがない親にいろいろ素朴な質問を受けました。
「この投稿者の方の言っているこの言葉は一体どういう意味なのか?」「なんでローマ字のダブルがあんなに一杯書いてあるのか?」
そんなことですね。
うちの親は実はある今度野党になった党の有力議員(当選)の後援会に入ってて、良く動員されたり、まだもうちょっと若いころは後援会の人と仲良くバス旅行にも行ってたのでむしろ中村喜四郎や文教族やピザ屋のダンナの後援会の人たちの側に立場も思考・嗜好も近いのですが、テロップで出てくるネットで発言するタイプの「若い人」の言うことはよくわからないみたい。おそらく用語の使い方のせいと思うんですが。チリコや峰竜太(うちの親より15は若いので…)の言うことは「若いのにずばり良いこと言う」と言ってましたが。
池上さんの番組をツイッター連携番組とあわせて見て、しかも老人と一緒に見てると議員の周囲の『後援会』と一般人(特に50代前半より下)のギャップが感じられて面白かったです。
そういや「後援会の高齢化」と言えば加藤紘一の落選があまり話題にならないのは時代の流れですかね。
猪瀬さんについては万年外野の評論家の頃はガンガン行っていたのが、道路公団で「権力」に絡め取られてからは大人しくなったという印象があります。
石原氏は60年安保は「反対派」だったのですよね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8B%A5%E3%81%84%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E4%BC%9A
うちの親はそう思ってないようですが、同年輩の方だと「石原=若い前衛、過激(左翼の過激派に近い意味で)、冒険主義」というイメージが根強いらしいです。
カメラ付きインターホンを取り付けて以降は、宗教勧誘を避けられる様になりました(見た感じで、「此れは宗教勧誘だな。」と大体判りますから。)が、以前は本当に面倒でした。訪問意図が良く判らないので、取り敢えず門の所迄行ってみたら、実は宗教勧誘だったという事がしばしば在りましたし。
「御辛い事は在りませんか?」と言っている本人が辛そうなのだから、心の中で「信じている宗教を止める事こそが、辛さから脱却する一番の手立てではないの?金銭も相当巻き上げられているだろうし。」と良く毒づいていたもの。
ツイッターが普及した事で、TV画面上に視聴者からの書き込みが表示される番組が増えましたね。今回の選挙特番でも目に付きましたが、“概して”「普通の文章」で書き込んでいる人の物には「説得力」が在るけれど、「顔文字」やら「w」を使っている物には「感情面剥き出し」の物が多かった様に思います。
嘗ては「新世代の政治家」として、マスメディアで大きく取り上げられていた“YKK”。小泉純一郎元首相は政界から引退し、山崎拓氏は落選中。そして今回、政界に1人残っていた加藤紘一氏が落選というのは、時代の流れを感じますね。
“組織”内に色々な考え方が在ってこそ面白いし、潤いも生じ得る。しかし今の政界は一方向、其れも可成り極端に寄った方向の人達許りで占められていて、強い不安を覚えます。