ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「アリアドネの声」

2023年12月26日 | 書籍関連

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救えるの事故で兄を亡くした青年・高木春生(たかぎ はるお)は、贖罪の気持ちから救助災害ドローン製作するヴェンチャー企業に就職する。業務一環で訪れた、障害者支援都市「WANOKUNI」で、巨大地震遭遇殆どの人間が避難する中、1人の女性が地下の危険地帯に取り残されてしまう。其れは「見えない、聞こえない、話せない」という3つの障害を抱え、街のアイドル(象徴)して活動する中川博美(なかがわ ひろみ)だった。

崩落浸水で、救助隊の侵入は不可能。凡そ6時間後には、安全地帯への経路も断たれてしまう。春生は1台のドローンを使って、目も耳も利かない中川をシェルター誘導するという前代未聞ミッションに挑む。
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「このミステリーがすごい!2024年版【内編】」の5位、そして「2023週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」でも5位に選ばれた小説アリアドネの声」(著者井上真偽さん)は「ジオフロント」、即ち「地下に作られた都市」で在る「WANOKUNI」が舞台。

地下5層の此の都市が大規模な活断層地震に見舞われた事で、地下の構造物は剪断されてしまう。其の結果、地下5層に在る「WANOKUNI駅」の地下鉄ホームに1人の女性が取り残されてしまうが、彼女は「見えない、聞こえない、話せない」という“三重苦”を抱えた障害者。「光も音も届かない絶対的迷宮内の彼女を、救助災害ドローンを使って地下3層に在る緊急避難シェルターに誘導する。」というミッションがテーマとなっている。

「人が入り込めない。」、「光も音も届かない。」、「大地震によって内部が破壊されている。」という過な巨大地下都市。救助する相手は三重苦の障害者で、地下5層に取り残されている“らしい”事は判っていても、具体的な状況は全く判らない。そんな悪状況で、飛行距離や充電の問題を抱えた救助災害ドローンにて、凡そ6時間以内に彼女を“救出”しなければいけない。救出相手が健常者で在ったとしても大変なのに、意思疎通が困難な三重苦の障害者を如何に救うか?其れが、此の作品の大きなポイントとなっている。

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前略)私のように視聴覚両方に障害を持つことを<盲ろう>と呼びますが、この<盲ろう>者は全国で二万人以上いらっしゃるそうです。ちなみに視聴覚障害を含め、体のどこかしらに障害を持つ<身体障がい者>の方は、全で四百万人以上―え?と思いますよね。日本の人口が一億二千万人くらいなので、実にその三パーセント以上が、何かしら体にを抱える計算です。

百人いたら、三、四人は身体障がい者だということです。けれど普通に街を歩いても、そんな人はほとんど見かけないですよね?

障がい者人口のパラドックスです。理由はもちろん、それだけ障がい者の活動の場が限られているから。体の不自由を抱える者にとって、家の外はまさに<障害>だらけです。階段や段差、激しい車の往来、届かないエレベーターのボタン、聞こえない電車のアナウンス。そして何より、厳しい人の目や差別意識―。」。
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“読ませる内容”なので、一気に読み終えてしまった。相次ぐピンチを、どうやって克服して行くか?」は興味を惹かれたし、最後に待ち構えていた“意外な結末”も悪く無い。唯一残念だったのは、「凡そ6時間」という限定された“救出時間”が設けられているのに、今一つ緊迫感が文面から伝わって来なかった事。

井上作品を読むのは、「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」(総合評価:星3つ)に次いで2作品目。総合評価は、星3.5個とする。


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