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交際相手に金品を貢がせ、練炭自殺に見せ掛けて殺害した牧村花音(まきむら かのん)。平凡な容姿の彼女に、何故男達は騙されたのか。友人を殺されたジャーナリスト・池尻淳之介(いけじり じゅんのすけ)は、真相を探るべく花音に近付くが・・・。
彼女の裁判は“花音劇場”と化し、傍聴に通う女性達は「毒っ子倶楽部」を結成。花音は果たして、毒婦か?聖女か?裁判が辿り着く驚きの結末とは・・・。
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「人物や時間等の記述を意図的に暈す事で、読み手をミスリードさせる手法。」を、ミステリーの世界では叙述トリックと呼ぶ。其の叙述トリックを十八番とする作家・折原一氏の「傍聴者」を読了。
「身寄りの無い(又は少ない)金持ちの男性に近付き、巧みな話術と肉体を武器に取り入り、最終的には自殺に見せ掛けて殺害。多額な保険金や財産を奪い取る。」、所謂“後妻業”と呼ばれる事件が過去に幾つか存在するが、そんな後妻業を題材にしたストーリー。
「人物や時間等の記述を意図的に暈す事で、読み手をミスリードさせる手法。」という性格上、仕方が無い事なのだけれど、叙述トリックを使った作品は、どうしても読み辛い面が在る。「〇〇だと思っていたが、実はXXだった。」という事が結構多いので、「どういう事だ?」と頭が混乱してしまうのだ。だから、もう一回其の文章を読み直さないと、「そういう事か。」と理解出来なかったりする。そういうのが苦手な人も多い事だろう。
1951年生まれの折原氏は、今年で70歳になる。そういう事も在るのか、「毒っ子倶楽部」等、古臭いネーミングや記述が結構気になった。過去の彼の作品では、そんな感じが無かったのだけれど・・・。
最後の落ちは予想通りだったが、「全員が〇〇者だったとは・・・。」という意外性に驚かされる等、全体的には悪く無い内容。総合評価は、星3.5個とする。