「週刊現代(12月9日号)」に「20代男女に急増 『キス病』の恐怖」という記事が載っていた。実際に急増しているのかどうかは別にしても、知識として多くの人が知っていた方が良いのではと思い、今回取り上げる事とした。医学情報に関しては全くのど素人故、万が一誤記や補足事項が在れば、是非とも書き込みを御願い申し上げたい。
“キス病”とは勿論俗称で、正式名称は伝染性単核症と言い、ヘルペスウイルス*1の仲間に属するエプスタイン・バール・ウイルス(EBウイルス)によって引き起こされるもの。EBウイルスは人の唾液を介して感染し、一度感染すると体内一生留まるという。“キス病”の症状は風邪に似ているそうで、40度前後の高熱、頭痛、食欲不振、リンパ節の腫れ、首から胸にかけての発疹、喉の痛みといったもので、市販の風邪薬や風邪という事で出された病院の薬も効かず、なかなか治らない事“も”在るとか。
大阪府母子保健総合医療センターの河敬世院長によると、「EBウイルスは地球上で最も蔓延しているウイルスの一つ。殆どの人が、母親と接触の多い乳幼児期に感染。しかし乳幼児期に感染すると、全く症状が出中、軽い風邪の症状が出る程度で済んでしまう為、大半の人は感染に気付かないまま現在に到っている。一度感染すれば免疫が出来るので、それ以降は“キス病”を発症する事は“ほぼ”無い。」との事。これ迄日本では、1歳で40%、2歳で80%、20歳迄にほぼ100%の人がEBウイルスに感染済みとされて来た。だからこそ“キス病”は滅多に見られない病気だったという。
では何故、最近20代の間で“キス病”が増加しているのだろうか?それは、幼少期にEBウイルスに感染する子供の割合が減っている為だという。「子供を取り囲む環境が綺麗になって来た事が原因の一つでしょう。涎を垂らしていたり、友達と噛み合って遊んだりする子供も昔程見なくなりました。」と河院長は述べている。更に「市販の離乳食が豊富になり、親が口で柔らかくして食べさせる事が無くなった。」、「食生活の欧米化で、皆で同じ皿をつついて食べる食事が減った。」、「仕事を持つ母親が増え、子供と触れ合う機会が少なくなった。」等の日本人の生活習慣の変化が、乳幼児期にEBウイルスに感染する子供の数を減じさせている。
未感染のまま成長した子供の多くは、思春期に異性とキスをして初めてEBウイルスに感染する事になるが(キスを繰り返せば、このウイルスは容易に広がって行く。)、思春期以降の感染だと“キス病”が発症する割合は50%以上に高まるという。それ故に、近年“キス病”が急増していると考えられている。
「未感染者の口腔咽頭内のBリンパ球にEBウイルスが感染し、4~6週間の潜伏期間を経て発症する。」というのが、一般的な“キス病”発症のプロセス。その症状は上記した様に風邪と似たもので、例え成人が罹患したとしても健康体で在れば、殆どは数週間で治ってしまうのだが、身体の免疫力が落ちていると様々な合併症を誘発する可能性が在るという。「“キス病”感染者の約1~2割が肝臓の腫れを、3割が扁桃炎を、半数が脾臓の腫れを合併すると言われ、鼻の細胞が壊死する鼻リンパ腫になるケースも在る。」(河院長)とも。又、EBウイルスの感染によって癌になる可能性も在り、アフリカでは「バーキットリンパ腫」というリンパ球の癌、中国南部と台湾では「上咽頭癌」の原因となっている事が明らかにされているそうだ。
そして最近では、EBウイルスが引き起こす新たな病気が発見された。Bリンパ球にしか感染しないと思われていたこのウイルスが、Tリンパ球やNK細胞といった人体を病気から守ってくれる免疫細胞にも感染&増殖する事が判明したのだ。この結果引き起こされるのが「慢性活動性EBウイルス感染症」で、これに罹患すると繰り返し高熱が出た挙句、突然にして血球貧食症候群といった症状に転化し、“何も治療しなければ”100%近くの患者が死んでしまうと。
“キス病”の原因となるEBウイルスは、感染症から癌に到る迄多彩な病気を引き起こす実に厄介な存在で、それ故に“百面相ウイルス”とも呼ばれている。しかもワクチンや特効薬が現状は無いので、感染したら早めの対症療法を心掛けるしかないそうだ。
「EBウイルスに感染しても、症状が風邪に似ている為になかなか気付かないケースが多い。その間に合併症が進行してしまう。風邪の症状が何時迄経っても治らない時は、EBウイルスを念頭に置いて、病院の総合診療科(感染症科が在れば尚良いが。)等でウイルスの詳しい検査を受けた方が良い。」(河院長)との事。
記事ではその他にも、キスで移る性感染症が若者の間で増えていると記している。オーラル・セックスが増えて来た事によるものだが、不特定多数とチュッチュチュッチュしないというのが、我が身を守る為の“最低限の規範”だろう。
*1 以前、「20歳代で60~70%、60歳以上だとほぼ100%の人がヘルペスウイルスに感染している。」という記事を目にしてビックリした事が在る。それ迄ヘルペスという病気は全く他人事と思っていた為だったが、そうでは無く実に身近な存在なのだ。
唯、ヘルペスウイルスに感染しているからといって、皆がヘルペスを発症する訳では無い。風邪を引いたり、ストレスが溜まったり、はたまた強い紫外線に当たったりして身体の免疫力が低下した際に発症する可能性が高いそうだ。病院にて治療して貰えば症状は消えるが、ヘルペスウイルス自体は消滅する事は無く体内に留まり続け、免疫力が低下すると再発する可能性を秘めている。
キスもできないね。
とにかく、いつでも清潔にいることが大切ですね。
それに関して・・・今年の頭に書いている記事
『EBウイルス』(http://kotanuki.exblog.jp/4073299/)もあわせてどうぞ。
同年代での濃密な接触をせずに「清潔な環境」で育つのがどうやらよくないようです。働く両親をもつ子どもは保育所でさまざまな感染症にサラされて成長するので,ラッキーといえるかもしれません。
なおヘルペスウイルスといえば性病と早合点する人が多いのですが、高熱が出た時に出てくる痛い口内炎(熱の華やなどともいう)は、体力が落ちているんで表面化するヒトヘルペスの症状です。水疱瘡ウイルスもヘルペスウイルスの1つです。
これは以前にも書かせて貰ったかもしれませんが、我が国で花粉症の患者が急激に増えた理由として、「国民全体が清潔好きになり過ぎた。」という説が挙げられています。具体的に言えば、体内に寄生虫を宿している人の減少数と、花粉症患者の増加数が奇しくも反比例している事から出て来た説の様です。
昔は青っ洟を垂らしたガキんちょが結構居ましたが、今はそんな子に先ず御目にかからないですよね。野菜の例では在りませんが、極度に”人工的な環境”で育成されてしまうと、どうしても虚弱度は高まってしまうものなのでしょうか。
80年代初頭にアメリカで大流行したんですか!?いやあ恥ずかしながら、今回の記事を目にする迄全く知りませんでした。
エイズなる病気を初めて知ったのは、確か「週刊少年マガジン」の「MMR(マガジンミステリー調査班-Magazine Mistery Reportage)シリーズ」の中ででした。アメリカでこういった怖い病気が流行っているというレポートだったのですが、正直この頃は対岸の火事といった思いでした。それが今や、全世界的に蔓延している病気になってしまいましたね。アメリカが咳をすれば、暫くして日本も風邪を引くといわれて来ましたが、”キス病”も同じ事が言えるのでしょう。
尚、余談ですが、MMRの名称が思い出せなかった為に検索して見付けたのですが、その中で意外な事実を発見してしまいました。MMRのリーダーのキバヤシの正体は当時のマガジン編集者で、その後に退社され漫画の原作者をされているとの事。そのペンネームは”青樹佑夜”(「Get Backers-奪還屋-」)と、そして何と”天樹征丸”(「金田一少年の事件簿」、「探偵学園Q」。)なのだとか。有名な話なのかもしれませんが、初めて知りビックリです。
今日、退院したんだけど・・・・
自分の家で、熱出してる・・・・
すごく、心配なんです
彼女がキス病に罹患されたとの事、嘸や御心配の事と御察し申し上げます。医学的な知識の無い自分なんぞがどうこう言う事は出来ないのですが、先ずは熱が下がる事を御祈りしています。
あとプールとかでも唾吐いたりくしゃみしたりそんな飛沫が漂ってるわけで未経験者だから関係無しでもないらしい
接触感染では無い類いの病というのも、確かに在りますね。接触感染の場合で在れば、或る程度予防は可能だけれど、飛沫感染となると防ぐのは非常に困難。
唯、正確な情報を得た上での予防で無いと、二次災害(病に対する偏見等。)の誘発も懸念されますので、其の辺は留意しないといけないでしょうね。
今後とも、何卒宜しく御願い致します。