ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「襲名犯」

2013年11月30日 | 書籍関連

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14年前、関東の地方都市で起きた連続猟奇殺人事件。ルイス・キャロルスナーク狩り」を下敷きにしたかの様な犯行から「ブージャム」と呼ばれた犯人は、6人を殺害した後、逮捕される。容姿端麗で、取り調べにも多くを語らない其の男・新田秀哉(にった しゅうや)を英雄し、熱狂的に信奉する者達も現れるが、新田は死刑処される。

 

そして今、第2の事件が発生。小指を切り取られた女性の惨殺体。「ブージャム」を名乗る血塗られた落書き。14年前の最後の被害者、当時中学2年生だった南條信(なんじょう しん)の双子の弟、南條仁(なんじょう じん)のへ、「襲名犯」からのメッセージが届けられる。

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第59回(2013年)江戸川乱歩賞を受賞した小説「襲名犯」を読了著者の竹吉優輔(たけよし ゆうすけ)氏は1980年生まれという事なので、今年で33歳。大学卒業後、図書館で司書として働く傍ら、小説の執筆を続けているそうだ。「襲名犯」の主人公・南條仁が図書館の司書として働いているという設定も、「勝手知ったる仕事」というのが在るのだろう。7年前の記事阿呆な図書館利用者が増えている事を記したけれど、此の小説の中にもそういったが登場している。注意され当たり前の事をしておき乍ら、注意されて逆切れするというのだから、全くおかしな話だ。

 

巻頭に、「受賞の言葉」が載っている。幼少期より著者が、何れ程迄に「作家」という職業に憧れ抱き続けて来たか、そして夢を叶えた今、何れだけ強い意志を持って、著作を続けて行こうとしているのかが、緊々と伝わる文章で、本好きの人間としては応援したい気持ちになった。

 

肝心な中身は、余り戴けなかった。猟奇的な犯行は印象に残るも、ストーリー自体にはのめり込めなかったので。「犯人は、此の2人の内の何方かだろうな。」という読みが当たった事や、登場人物達のキャラクター今一つ独り立ち”していない事等も在るが、のめり込めなかった一番の理由は、「『ブージャム』に対して、何でそんなにも信奉してしまう人が居るんだろう?」という思いが強かったからだ。

 

地下鉄サリン事件」等に関与したオウム真理教の信者達。彼等の犯行は絶対に許せないし、彼等が教祖麻原彰晃盲信した理由も全く理解出来ない。でも、自分には理解出来ないけれど、彼等がオウム真理教という組織や麻原という人物に惹かれて行った部分には、思い当たるが在る。其れは、神秘的な事柄やカリスマ性に対する憧憬ではないかと。

 

で、「ブージャム」というキャラクターを考えた時、そういう魅了される様な面が、“第三者的な目”で見ても全く見出だせなかった。其れなのに、少なからずの人間がブージャムを信奉しているという“設定”には無理が感じられ、故に登場人物の1人が吐く言葉じゃないけれど、「リアリティーが感じられなかった。」のだ。

 

竹吉氏の次作に期待したいが、今回の作品に関して言えば、総合評価は星2.5個とする。


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