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図書隊の中でも最も危険な任務を負う防衛隊員として、日々訓練に励む笠原郁(かさはら いく)は、中澤毬江(なかざわ まりえ)という耳の不自由な女の子と出会う。毬江は小さい頃から面倒を見て貰っていた図書隊の教官・小牧幹久(こまき みきひさ)に、密かな思いを寄せていた。
そんな時、検閲機関で在るメディア良化隊が、郁が勤務する図書館を襲撃。謂われ無い罪で、小牧を連行してしまう。斯くして、郁と図書隊の小牧奪還作戦が発動した!?
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今回読了した小説「図書館内乱」は、有川浩さんの「図書館戦争シリーズ」の第2弾に当該する。図書館戦争シリーズの世界観に付いては、第1弾「図書館戦争」のレヴューを読んで戴ければと思うが、「青少年に悪影響を与える有害情報や、人権を侵害したり公序良俗を乱す表現を取り締まる為の法律『メディア良化法』が施行された日本。」が舞台となっている。
「興味本位の行き過ぎた報道により、様々な報道被害が問題となった事で、『メディア良化法』は施行された。」という設定になっているのだが、言論封殺的行為を好む首相の下、全体主義へ回帰している様な我が国では、「特定秘密保全法案」なる物の提出&可決が目指されている。「時の権力者にとって“不都合な事実”を、“違法な事柄”として闇に葬り去る事も可能。」という意味では、「メディア良化法」と「特定秘密保全法案」は非常に似ており、とても絵空事とは思えなかった。
「図書館戦争」では脇役的な人物達が、此の「図書館内乱」では、其れ其れのキャラクターに“肉付け”がされており、「図書館シリーズ」の世界に深みを持たせた感が在る。郁と上司の堂上篤(どうじょう あつし)とのもどかしい関係に、自分の若かりし頃を重ね合わせ、ついつい微笑ましく感じてしまうのは「図書館戦争」と同様だが、「温厚で冷静な小牧の意外な一面」や「郁と同期の手塚光(てづか ひかる)及び柴崎麻子(しばさき あさこ)の秘められた過去。」が明らかになる等、興味をそそられる内容だった。
総合評価は、星3.5個とする。