*********************************
「首相、チェック機関設置に前向き 秘密保護法案」(11月16日、朝日新聞)
安倍晋三首相は16日午前、特定秘密保護法案を巡る与野党の修正協議に付いて、「一部の(野党)提案に在る様に、第三者的な仕組みによって適切な運用を確保する事も重要な課題だ。」と述べ、日本維新の会が求める秘密指定の基準等の妥当性をチェックする機関設置に前向きに対応する意向を示した。カンボジア、ラオス訪問を前に羽田空港で記者団に語った。
法案では秘密指定の基準作りに有識者の意見を聴く事になっているが、野党側は秘密指定のチェック機能強化を要求する。日本維新の会も「独立した行政の組織・部局」(山田宏衆院議員)を設置して、秘密指定の基準等の妥当性を検証すべきだと主張。森まさこ・同法案担当相は15日の衆院国家安全保障特別委員会で「行政機関の内部に第三者的な機関を設けたらどうかという指摘は、謙虚に受け止めて検討する。」と答弁した。
首相は16日、記者団に「重層的な仕組みによって、恣意的な指定が為され無い様になっている。」と強調した上で、「国会で様々な議論が為されている。」と法案修正に柔軟に対応する考えを示した。野党の一部の主張を受け容れて、懸念の強い法案成立を目指す政権への批判を躱す狙いが在る物と見られる。
法案の今国会成立を目指す安倍政権は、与野党で週明けに法案修正で合意し、今月下旬に衆院を通過させたい考え。唯、国民の「知る権利」の制限や報道・取材の自由の阻害に繋がる等の懸念は払拭されていない。
*********************************
“スパイ天国”と呼ばれて久しい我が国。国家の安寧を維持すべく、スパイを取り締まる法律は必要と思うが、「特定秘密保護法案」の成立に前のめりになっている政治家達からは、「『国家の安寧を維持する為』というのを錦の御旗に掲げるも、実際には『特定秘密保護法案』を“悪用”し、自分達に不都合な情報を闇に葬り去ろう。」という思惑を強く感じてしまう。以前の記事「“都合の良い解釈”により、悪用出来てしまう事が大問題 Part1&Part2」でも記した様に、「時の権力者の都合によって、如何様にも解釈出来てしまう。」というのは大問題だし、第2、第3の「宮沢・レーン事件」を作り出してはいけない。
此の件に関して、森まさこ同法案担当相の答弁が揺れているのも、弁護士で在る彼女には「此の法案が抱える危うさ」を認識しているからだろう。野党のみならず、与党の中からも疑問が出ていると言われる同法案。しかし、安倍内閣の高い支持率を前に、口を噤んでいるのだとしたら、本当に情けない話だ。
国民の間から同法案を懸念する声が高まっている中、“第三者的なチェック機関の設立”に付いて言及した安倍首相。昨年、衆議院解散の大前提として「次期通常国会で、議員定数の削減実現。」を3党合意で取り決めたというのに、其の“国民との約束”を一向に果たさないどころか、「そんな約束なんか在ったっけ?」と許りに、しらばっくれている与党。今回の「第三者的なチェック機関の設立」に関しても「確約」では無く、飽く迄も「可能性」を口にしただけの話。議員定数の削減と同様に、「法案さえ成立させてしまえば、後は知ったこっちゃ無い。」という事だって在り得る。
又、第三者的なチェック機関を実際に設立したとしても、「NHK経営委員や(濫造している)有識者会議のメンバーに、自身の“御友達”許りを送り込み、自らに都合の良い方向へと世論誘導する事に血道を上げている安倍首相。」だけに、「第三者的なチェック機関=“御友達”だけで構成されたまやかしの機関」になる懸念が。
イエスマンだけで周りを固めた“裸の王様”だけに、「物言えぬ国民で構成された国家こそ、『美しい国』なのだ。」と思っていそうなのが、心底怖かったりする。
「ブレジネフ書記長政権下のソ連で、『ブレジネフは馬鹿だ!』と言った市民が秘密警察に逮捕された。独裁者に対する不敬罪という事での逮捕と思いきや、罪状は『国家機密を漏らした罪』だった。」というのは、ソ連時代の有名過ぎる小噺。「最高指導者が、余りに馬鹿過ぎる。」というのが、「安全保障上で最も秘匿しなければいけない機密事項。」という落ちですが、日本の政治家達のレヴェルの低さを思うと、満更在り得ない事では無さそうな気が・・・。
「前政権は、マスメディアの報道によって潰された。」という、全く方向違いな恨みを持っていると言われる安倍首相。
暴走する軍部や利益の追求を最優先する企業家達に阿り、戦争へと向かってしまった嘗ての日本。アメリカを中心とした他国の“挑発行為”(石油の供給ストップ等)が在ったのは事実だけれど、軍部や企業家、政治家達の暴走を、後押ししたのはマスメディアだった。其の反省から、厳しく政府を監視しなければいけない筈のマスメディアが、安倍首相による接待攻撃等、“鼻薬”を嗅がされて、黙りを続けている現実。真剣に此の法案の危うさを訴えているのは、自分が知る限りでは一握りな気も。
政府のする事に対して、何でも彼んでも反対というのはどうかと思うけれど、強大な権力を有している政府には、或る程度厳しい視線を向け続けなければ、気付いた時には「物言えぬ国家」になっている可能性が高い。