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些細な傷害事件で、惚けた見た目の中年男が野方署に連行された。高が酔っ払いと見縊る警察だが、“スズキ タゴサク”と名乗る其の男は、取調べの最中、彼が言う所の“霊感”で「10時に、秋葉原で爆発が在る。」と予言する。
直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、此の男は“本物”か?更に男は、あっけらかんと告げる。「此処から3度、次は1時間後に爆発します。」。
警察は、爆発を止める事が出来るのか?
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呉勝浩氏の小説「爆弾」を読了。酔っ払って傷害事件を起こした中年男“スズキ タゴサク”が野方署に連行されて来るのだが、「自分には霊感が在る。」と主張する彼の“予言”通り、次々と爆弾による爆発事件が起こる。彼の言葉から爆弾の在り処を推理する警察官達と、そんな彼等を弄ぶ“スズキ タゴサク”の姿が描かれた作品だ。
400頁を超える「爆弾」だが、半ば位迄は読み進めるのがしんどかった。と言うのも、“スズキ タゴサク”なる中年男の言動が兎に角不快で、読んでいてムカムカして来るからだ。自虐的で露悪的、「人の神経を逆撫でするのが大好き。」といった感じの彼の言動、特に長々と一方的に意味不明な話をするのは、本当に不快だった。そんな意味不明な話の中に、爆弾の在り処を暗示するのだから、こんな奴が実際に存在したら、取り調べる警察官の神経もおかしくなってしまう事だろう。
半ば以降から、ストーリーに引き込まれて行く。意外な人間関係が明らかとなって行き、又、「“彼の人”が、事件に関係していたの!?」という驚きが在るので。
唯、読み終えてすっきり感を味わえるタイプの作品では無い。後に残るのは不快感だけ。「真犯人を捕まえられた。」という点を考慮しても、警察としては「99.99%敗北。」と言って良い結果なので。現実社会でも、そういう事件は増えている様にも感じるが・・・。
総合評価は、星3つとする。