6年前、「軍歌」という記事を書いた。其の中で記した「自分は軍歌が好き。『軍歌が好き。』と言うと、人によっては“好戦的な人”と誤解されそうだが、自分は争い事が大嫌いな人間だ。責められるべきは『軍歌を利用し、国民の戦意高揚を図り、不毛な戦争へと導いた為政者達。』で在り、作品としての軍歌が責められるのは筋違い。」という考えは、今も全く変わっていない。
8月14日付けの東京新聞のサンデー版は、「戦争と歌謡」という特集記事が組まれていた。此の記事で初めて知ったのは、「『軍歌』と『戦時歌謡』は異なる物。」という事。自分は全く同じ物と思い込んでいたが、「軍歌は『軍が依頼し、軍の組織の為に作られた歌。』で在るのに対し、戦時歌謡は『レコード会社等、民間から生まれた歌謡曲。』を意味する。」のだとか。戦意高揚的な色合いは在ったにせよ、戦時歌謡は「軍の主導で作られた歌では無かった。」という事になる。
紙面では、全部で55曲の戦時歌謡が紹介されていた。勿論、此れ等が戦時歌謡の全ては無いだろうが、興味深いのは一番最初に記されていた「お山の杉の子」【動画】。此の歌は「幼い頃、末弟の名前を捩って歌っていた。」と、亡き父が良く歌っていた。「童謡というイメージを持っていたが、戦時歌謡というイメージは無かったので意外だったのだ。
紹介されていた「戦友の唄(同期の桜)」【動画】や「勝利の日まで」【動画】、「ラバウル海軍航空隊」【動画】、「若鷲の歌」【動画】、「月月火水木金金」【動画】、「暁に祈る」【動画】、「出征兵士を送る歌」【動画】、「麦と兵隊」【動画】、「愛国の花」【歌】、「露営の歌」【動画】等は軍歌と認識していたけれど、厳密に言えば戦時歌謡なのだとか。
他に紹介されていた「煌めく星座」【動画】、「誰か故郷を想わざる」【動画】、「上海の花売り娘」【歌】、「九段の母」【動画】、「上海ブルース」【動画】、「支那の夜」【歌】、「旅の夜風」【動画】、「雨のブルース」【歌】、「別れのブルース」【動画】等、何れも名曲だ。
私個人は、「戦意高揚を目的とした勇ましい歌」あるいは「兵士たちの仲間意識、友情を歌った歌」…つまり“軍隊”が絡んだ歌が軍歌、「戦時中に歌われた流行歌」が戦時歌謡、と分類してます。
だから例えば戦時歌謡と分類されている「同期の桜」「ラバウル海軍航空隊」「若鷲の歌」「月月火水木金金」「麦と兵隊」「露営の歌」は私の分類では「軍歌」となります。
一方「暁に祈る」は、妻や子に見送られて出征し、“飲まず食わずの日も三日、捧げた命これまでと、月の光で走り書き”というような歌詞でも判る通り、家族を想う気持ちや、自決に際し遺書をしたためるような内容で、どう見ても戦意高揚も勇ましさもない歌なので戦時歌謡に分類しています。「愛国の花」も、内地に残る女性の心情を歌っている点で軍歌ではなく戦時歌謡でしょう。でも人によっては「軍歌」と分類されても構わないでしょう。考えればこの2曲、どちらも古関裕而氏作曲なのですね。
一方“ここは御国を何百里 離れて遠き満州の 赤い夕日に照らされて 戦友は野末の石の下”で始まる「戦友」は一般的に「軍歌」に分類されているようですが、アイ・ジョージさんの歌う曲を聴いていると、スローバラード風な歌い方に、戦争の悲惨さが強調されているように感じられて、私の基準では軍歌と思えないのですね。Wikipediaでもこの歌は“支那事変が起きた際に、哀愁に満ちた歌詞、郷愁をさそうメロディーなどから「この軍歌は厭戦的である」として人々が歌うことが禁じられ、陸軍も将兵がこの歌を歌う事を禁止した”とあります。
まあこんな具合に、とてもはっきりとこれが軍歌、これは戦時歌謡と決める事は不可能だと思います。人それぞれが自分なりの基準を持って判断すればいいのじゃないでしょうか。
「“軍の関与”が、軍歌と戦時歌謡とを分ける基準。」と元記事では書かれていたのですが、自分もKei様と同様、紹介されている歌の中に違和感を覚える物が在りました。
Kei様が取り上げておられる「同期の桜」は、「戦争で戦って死ぬ事を“美”としている。」様な点では、軍歌とする方がすんなり受け容れられるし。
又、「お山の杉の子」は戦時歌謡というよりも、童謡という感じしか在りません。
仰る様に、人其れ其れの判断基準によるんでしょうね。