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相変わらず学校内に住んでいる裏染天馬(うらぞめ てんま)の下に、持ち込まれる様々な謎。学食の食品を巡る不可思議な出来事、吹奏楽部内でのトラブル、御祭の屋台の御釣りに纏わる謎の他に、裏染の妹・鏡華(きょうか)の華麗な謎解きを加えた、全6編。
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“平成のエラリー・クイーン”と呼ばれる青崎有吾氏。彼が著す「裏染天馬シリーズ」の第3弾が、今回読了した「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」で、6つの短編小説から成り立っている。
父親との折り合いが悪く、校内の“部室”に勝手に住み着いている裏染天馬。イケメンだけれどオタクで、“超”が付く程の変人なれど、抜群の推理力を有している。一寸した物から、次々に推理を展開して行く様は、名探偵シャーロック・ホームズを彷彿させる。
第1弾の「体育館の殺人」、そして第2弾の「水族館の殺人」と、天馬が解決したのは殺人事件だったが、今回の「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」では、全てが“普段の生活の中で起こった他愛無い謎”で在り、殺人事件は登場しない。最初の作品「もう一色選べる丼」なんぞは、“学食”の外、雑草だらけの地面の上に放置された儘の丼、其れも中身が奇妙な形で残された物が見付かり、其の犯人を捜すといった具合なのだから、「何だ其れ?」という感じは、正直在った。
6作の内、「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」と「天使たちの残暑見舞い」は面白かったが、後者に関しては「偶然に偶然が重なった上での不思議な出来事」という事で、其の辺は人によって評価が分かれるかも。残りの4作、個人的にはピンと来なかった。全体的に、パワーに乏しい気も。
総合評価は、星3つが良い所か。