しばしば覗かせて貰っているブログ「特撮ヒーロー作戦!」に「大決戦!超ウルトラ8兄弟/基本ストーリー公開!」という記事が。9月に公開予定の映画「大決戦!超ウルトラ8兄弟」に付いては当ブログでも何度か取り上げて来たが、その基本ストーリーが発表されたという。詳細は元記事を読んで戴けたらと思うが、パラレル・ワールドならではの人物設定に注目。一昨年に公開された映画「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」と同様、今回の作品にも“昭和ウルトラマン”達及びその人間体が登場するが、その設定はかなり変化している。
****************************
ハヤタ(黒部進氏): 前作(「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」を指す。以下同じ。)では神戸空港の空港長だったが、今回はサイクルショップの経営者。
モロボシ・ダン(森次晃嗣氏): 前作では神戸市郊外の牧場主(?)だったが、今回はハワイアンレストランの経営者。
郷秀樹(団時朗氏): 前作では神戸市内のサーキット場で少年達を指導していたが、今回は自動車整備工場の経営者。
北斗星司(高峰圭二氏): 前作では神戸市内のホテルでオーナーシェフとして働いていたが、今回はパン屋の経営者。
****************************
これ等の設定変更はストーリー展開の上で何等かの意味を持っているのかもしれないが、一番驚いたのは彼等4人が全て妻帯者という事。ハヤタには「アキコ」、ダンには「アンヌ」、郷には「アキ」、そして北斗には「夕子」という名前の奥さんが居る事になっている。昭和ウルトラマンを見て育った世代なら直ぐに判るだろうが、各ウルトラ・シリーズでのヒロイン達と同じ名前、即ち「ウルトラマン」でのフジ・アキコ(桜井浩子さん)、「ウルトラセブン」での友里アンヌ(ひし美ゆり子さん)、「帰ってきたウルトラマン」での坂田アキ(榊原るみさん)、そして「ウルトラマンA」での南夕子(星[堤]光子さん)と同じ名前なのだ。と言う事は、桜井さんを始めとするヒロイン達も総登場するのだろうか?坂田アキは“暗殺宇宙人”ナックル星人に暗殺されてしまったし、月星人の南夕子は月に帰ってしまったので、現実的に同じ人間という設定は無理が在るのだが、パラレル・ワールドという事で在ればその辺はクリア出来るのかもしれない。彼女達には是非出演して貰いたいもの。
閑話休題。
石田衣良氏の作品「親指の恋人」。これが「右手が恋人」乃至は「左手が恋人」だとAVのタイトルっぽいが、ストーリーを読み進めて行く過程で「親指の恋人」の意味が見えて来る。毎度の事では在るが、石田氏の“言葉の魔術師”振りには舌を巻くばかり。
****************************
大学3年生の夏を夢も希望も目標も無いまま迎えた江崎澄雄は、退屈凌ぎに携帯の出会い系サイトにアクセスした。そこでジュリアと名乗る発信者と遣り取りを重ね、今迄親友にさえ話した事の無い母親の死に付いて告白。そしてメールで送られて来たジュリアの写真が、母親そっくりだった事に衝撃を受ける。
横浜で初めて会って、恋に落ちてしまう二人。しかし、御互いの環境や境遇は極端な迄に違っていた。澄雄が外資系投資銀行の社長をしている父、義母と六本木ヒルズに住む一方、父子家庭のジュリアは家が借金塗れで、昼も夜も無く働かなくてはいけない。両家から反対され乍らも、愛情を育んで行く二人だったが、或る日ジュリアの父親が脳出血で倒れてしまう・・・。
****************************
夏のボーナスが7億円という外資系投資銀行社長の父を持ち、周りからは何不自由の無い暮らしを送っていると見られている江崎澄雄。一方、自堕落な生活を続ける父親と暮らし、月給13万円の工場働きの他に出会い系サイトの“サクラ”のバイトをしているジュリアこと三田樹里亜。同じ20歳で在り乍ら、その環境や境遇が天地程の差の在る二人。「将来に全く夢を描けない」という共通点を有する彼等が、或る日偶然に出遭う。会う度に、乾いた心に潤いを取り戻して行く二人。しかし、幸せの一端が見えて来た彼等を不幸が遅い、出遭いから約一ヵ月後に彼等は悲劇的な最期を迎える。
「現代版ロミオとジュリエット」というのが、この作品の惹句。「ロミオとジュリエット」・・・と言うよりも、赤いシリーズの世界観に「格差社会」というエッセンスを加えた作品と言えようか。「現実的には在り得ないストーリー。」と思いつつも、澄雄とジュリアの不器用な生き方についつい感情移入してしまう。
****************************
・ 「ラッキー。でも、御金を持っている人は皆同じ事を言うよね。勿体無いのは御金では無く時間だって。だけど貧乏人には御金が無くて、時間だけは無限に在るんだよ。」
・ 澄雄とジュリアの世代は、誰かとコミュニケーションを取る時、携帯電話のメールを使用する事が多い。直接、生身の人間と向き合う時間よりも、小さな液晶画面を眺めている時間の方がずっと長いのだ。恋人や友人との関係を繋ぐのは、毎日数十通となく送られるメッセージの欠片だった。空を飛んで一人一人の端末に届く百文字足らずのメール。それは瞬間の気分に染められた言葉が乱れ飛んでいるだけだった。溢れる感情や分割出来ない思いは、小さく千切られたパケットでは運ぶ事が出来ない。
・ 「何か頭の良い男の子の髪の毛をしてるね。さらさらだもん。スミオは社会の一番上の方に居るでしょう。でも、私はどん底に居る。上に居る人は一寸エレベーターで下の方を見学に来るのは簡単なんだ。降りるだけだから。でも、下の人間はそうはいかない。一歩ずつ重力に逆らって、昇らなくちゃいけない。」
・ 「相手の幸福が自分にとって不可欠な状態を、恋愛と言うそうだ。御前は自分の事よりも、樹里亜さんの幸福を第一に考えて上げられるかな。」
****************************
心に染み入る表現の数々。社会の暗部をしばしば描く石田作品だが、何故か読み終えると心のざらつきが少し取れた様な感じがする。それもこれも、豊潤な表現力故の事なのだろうか。
雑居ビルの屋上で心中を図る澄雄と樹里亜。樹里亜が最後に送ろうとした(送った?)メールは、一体誰に宛てた物だったのだろうか?自分を幸せにしてくれた澄雄へのラスト・メールだったと信じたい。
総合評価は星3つ。
****************************
ハヤタ(黒部進氏): 前作(「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」を指す。以下同じ。)では神戸空港の空港長だったが、今回はサイクルショップの経営者。
モロボシ・ダン(森次晃嗣氏): 前作では神戸市郊外の牧場主(?)だったが、今回はハワイアンレストランの経営者。
郷秀樹(団時朗氏): 前作では神戸市内のサーキット場で少年達を指導していたが、今回は自動車整備工場の経営者。
北斗星司(高峰圭二氏): 前作では神戸市内のホテルでオーナーシェフとして働いていたが、今回はパン屋の経営者。
****************************
これ等の設定変更はストーリー展開の上で何等かの意味を持っているのかもしれないが、一番驚いたのは彼等4人が全て妻帯者という事。ハヤタには「アキコ」、ダンには「アンヌ」、郷には「アキ」、そして北斗には「夕子」という名前の奥さんが居る事になっている。昭和ウルトラマンを見て育った世代なら直ぐに判るだろうが、各ウルトラ・シリーズでのヒロイン達と同じ名前、即ち「ウルトラマン」でのフジ・アキコ(桜井浩子さん)、「ウルトラセブン」での友里アンヌ(ひし美ゆり子さん)、「帰ってきたウルトラマン」での坂田アキ(榊原るみさん)、そして「ウルトラマンA」での南夕子(星[堤]光子さん)と同じ名前なのだ。と言う事は、桜井さんを始めとするヒロイン達も総登場するのだろうか?坂田アキは“暗殺宇宙人”ナックル星人に暗殺されてしまったし、月星人の南夕子は月に帰ってしまったので、現実的に同じ人間という設定は無理が在るのだが、パラレル・ワールドという事で在ればその辺はクリア出来るのかもしれない。彼女達には是非出演して貰いたいもの。
閑話休題。
石田衣良氏の作品「親指の恋人」。これが「右手が恋人」乃至は「左手が恋人」だとAVのタイトルっぽいが、ストーリーを読み進めて行く過程で「親指の恋人」の意味が見えて来る。毎度の事では在るが、石田氏の“言葉の魔術師”振りには舌を巻くばかり。
****************************
大学3年生の夏を夢も希望も目標も無いまま迎えた江崎澄雄は、退屈凌ぎに携帯の出会い系サイトにアクセスした。そこでジュリアと名乗る発信者と遣り取りを重ね、今迄親友にさえ話した事の無い母親の死に付いて告白。そしてメールで送られて来たジュリアの写真が、母親そっくりだった事に衝撃を受ける。
横浜で初めて会って、恋に落ちてしまう二人。しかし、御互いの環境や境遇は極端な迄に違っていた。澄雄が外資系投資銀行の社長をしている父、義母と六本木ヒルズに住む一方、父子家庭のジュリアは家が借金塗れで、昼も夜も無く働かなくてはいけない。両家から反対され乍らも、愛情を育んで行く二人だったが、或る日ジュリアの父親が脳出血で倒れてしまう・・・。
****************************
夏のボーナスが7億円という外資系投資銀行社長の父を持ち、周りからは何不自由の無い暮らしを送っていると見られている江崎澄雄。一方、自堕落な生活を続ける父親と暮らし、月給13万円の工場働きの他に出会い系サイトの“サクラ”のバイトをしているジュリアこと三田樹里亜。同じ20歳で在り乍ら、その環境や境遇が天地程の差の在る二人。「将来に全く夢を描けない」という共通点を有する彼等が、或る日偶然に出遭う。会う度に、乾いた心に潤いを取り戻して行く二人。しかし、幸せの一端が見えて来た彼等を不幸が遅い、出遭いから約一ヵ月後に彼等は悲劇的な最期を迎える。
「現代版ロミオとジュリエット」というのが、この作品の惹句。「ロミオとジュリエット」・・・と言うよりも、赤いシリーズの世界観に「格差社会」というエッセンスを加えた作品と言えようか。「現実的には在り得ないストーリー。」と思いつつも、澄雄とジュリアの不器用な生き方についつい感情移入してしまう。
****************************
・ 「ラッキー。でも、御金を持っている人は皆同じ事を言うよね。勿体無いのは御金では無く時間だって。だけど貧乏人には御金が無くて、時間だけは無限に在るんだよ。」
・ 澄雄とジュリアの世代は、誰かとコミュニケーションを取る時、携帯電話のメールを使用する事が多い。直接、生身の人間と向き合う時間よりも、小さな液晶画面を眺めている時間の方がずっと長いのだ。恋人や友人との関係を繋ぐのは、毎日数十通となく送られるメッセージの欠片だった。空を飛んで一人一人の端末に届く百文字足らずのメール。それは瞬間の気分に染められた言葉が乱れ飛んでいるだけだった。溢れる感情や分割出来ない思いは、小さく千切られたパケットでは運ぶ事が出来ない。
・ 「何か頭の良い男の子の髪の毛をしてるね。さらさらだもん。スミオは社会の一番上の方に居るでしょう。でも、私はどん底に居る。上に居る人は一寸エレベーターで下の方を見学に来るのは簡単なんだ。降りるだけだから。でも、下の人間はそうはいかない。一歩ずつ重力に逆らって、昇らなくちゃいけない。」
・ 「相手の幸福が自分にとって不可欠な状態を、恋愛と言うそうだ。御前は自分の事よりも、樹里亜さんの幸福を第一に考えて上げられるかな。」
****************************
心に染み入る表現の数々。社会の暗部をしばしば描く石田作品だが、何故か読み終えると心のざらつきが少し取れた様な感じがする。それもこれも、豊潤な表現力故の事なのだろうか。
雑居ビルの屋上で心中を図る澄雄と樹里亜。樹里亜が最後に送ろうとした(送った?)メールは、一体誰に宛てた物だったのだろうか?自分を幸せにしてくれた澄雄へのラスト・メールだったと信じたい。
総合評価は星3つ。
石田作品、良いですよねえ。比較的「当たり外れ」が少ない作家の一人だと思っていますが、それでもその作品を良いと思うか否かは個人の感性によっても異なって来る訳で、あくまでも自分が良かったと思う作品を挙げたいと思います。
定番ですが「池袋ウエストゲートパーク・シリーズ」は外せないですね。石田氏の比喩力の豊かさが、これでもかという位に感じられるシリーズかと。
後は「5年3組リョウタ組」(http://blog.goo.ne.jp/giants-55/e/b1c93b76b909078af4b23a23e65b444d)や「美丘」(http://blog.goo.ne.jp/giants-55/e/fb4430d05e38de6bc30664e237f78606)、「4TEEN」(http://blog.goo.ne.jp/giants-55/e/92ed1a7d30c1a300e6c8b35028d138f2)等が御薦めです。
今後とも何卒宜しく御願い致します。
何かイイ作品無いですか