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東京都藍出市で、幼稚園児の遺体が発見された。被害者は死後に、性的暴行を加えられていた。事件のニュースを見た主婦・保奈美(ほなみ)は、大切な一人娘・薫(かおる)は無事だろうか、と不安に陥る。警察は懸命に捜査を続けるが、犯人は一向に捕まらない。
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秋吉理香子さんの小説「聖母」は、叙述トリックを用いた作品。「人物や時間等の記述を意図的に暈す事で、読み手をミスリードさせる。」のが叙述トリックの醍醐味で、例えば“現在に関する記述”と思わせて、実は“過去に関する記述”だったり、記述から“女性”と思い込んでいた人物が、実は“男性”だったりという具合。
「聖母」の場合、大別すると“3つの叙述トリック”が仕掛けられている。“名前”でミスリードさせるというのは良く在るパターンで、1つの叙述トリックは見破られた。
然し、真犯人を“手助けしている人物”を見誤り(真犯人に恋心を持つ人物だと思っていた。)、又、或る人物と或る人物との関係性は意表を突かれる物だった。
現実的には無理が在る設定とも言えるけれど、小説としては意外性が在って面白い。ミステリーを読み込んでいる人程、此の作品の評価は大きく分かれそうだが、個人的には悪く無い内容だと思う。
総合評価は、星3.5個。