シリーズ物の小説を途中から読み、面白かったので遡って、第1弾から読み進める。そんなケースが自分の場合、結構在ったりする。今回読了した小説「ビブリア古書堂の事件手帖~栞子さんと奇妙な客人たち~」(著者:三上延氏)も、先月読了した第2弾「ビブリア古書堂の事件手帖2 ~栞子さんと謎めく日常~」が非常に面白かったので、そういう経緯を辿る事に。
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鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。其処の店主・篠川栞子(しのかわ・しおりこ)は、古本屋のイメージに合わない若くて綺麗な女性だ。残念なのは、初対面の人間とは口も利けない程の人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。
だが、古書の知識は並大低では無い。人に対してと正反対に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女の下には、曰く付きの古書が持ち込まれる事も。そして彼女は、古書に纏わる謎と秘密を、丸で見て来たかの様に解き明かして行くのだった。
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1冊の本に秘められた謎や秘密を、其の本を見ただけで解き明かしてしまう栞子は、昔風で言えば「安楽椅子探偵」の1人と言えよう。「何故、そんな事迄判ってしまうのか?」と驚いてしまうも、彼女が口にする其の理由を目にすると、「成る程。」と腑に落ちてしまうのだから、シャーロック・ホームズ顔負けの鋭い洞察力で在る。
「ビブリア古書堂の事件手帖2 ~栞子さんと謎めく日常~」でも感じたが、著者の三上延氏は可成りの本好きと思われる。今回の「ビブリア古書堂の事件手帖~栞子さんと奇妙な客人たち~」でメインに取り上げられる本は4冊で、其の内「漱石全集・新書版」と「晩年」は未だしも、「落穂拾ひ・聖アンデルセン」なんていうのは相当の本好きじゃないとピックアップしないだろう。況してや「論理学入門」なんて、一寸やそっとの本好きレヴェルでは出て来ない。「サンリオSF文庫」等、今は無き文庫も幾つか取り上げられており、「古本屋巡りが好き。」という著者の話は事実と思われる。
ビブリア古書堂の女店主・篠川栞子と、同店でアルバイトとして働く事になった五浦大輔(ごうら・だいすけ)のキャラクター設定が良い。シリーズ物として人気を得る作品には「ストーリーの面白さ」も然る事乍ら、「魅力的なキャラクターの存在」は必要不可欠。「ビブリア古書堂の事件手帖シリーズ」は、其の何方も満たしている。
「ビブリア古書堂の事件手帖~栞子さんと奇妙な客人たち~」で不満が在るとすれば、御都合主義的な点が見受けられた所。“大輔と或る人物との関係”なんぞは余りに意外過ぎて、「御都合主義だなあ。」と思ってしまったから。
とは言え、ストーリーは本当に面白い。総合評価は、星4つとする。