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貴方を、助けたい。
学校での居場所を無くし、閉じ籠もっていた安西こころ(あんざい こころ)の目の前で、或る日突然、部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡を潜り抜けた先に在ったのは、城の様な不思議な建物。其処には丁度、こころと似た境遇の7人が集められていた。
何故、此の7人が?何故、此の場所に?全ての謎が明らかになる時、驚きと共に大きな感動に包まれる。
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辻村深月さんの小説「かがみの孤城」を最初に手に取ったのは、半年程前だったろうか。読み始めたものの、「光る鏡に手を触れたら、中に引き込まれ、そして城の様な建物に居た。」とか「城には狼の面を被り、ドレスを着た少女が居て、皆から“オオカミさま”と呼ばれている。彼女は姿を急に消す等、不思議な力を持っている。」といった非現実的な設定がぴんと来ず、大して読まない内に読むのを止めてしまった。でも、此の小説を高く評価する声が余りに多いので、改めて手に取ったという経緯が在る。
正直言って、再び読み始めた際も、暫くは違和感が在った。上記した様に、“悪い意味でのメルヘンチックさ”が自分の中で拭えなかったので。でも、ストーリーが進んで行くと、どんどん引き込まれて行った。メルヘンチックさを装い乍ら、描かれているのは“心に大きな傷を持つ少年&少女達の苦しみ”だったから。
自分には、“長期間の不登校”という経験は無い。でも、“数日単位の不登校”なら経験は在る。当時の“心のもやもや感”は、ウン十年経った今でも覚えている。長期間の不登校を経験したり、今実際に経験している子達の辛さは、自分なんぞよりも遥かに強い事だろう。
伏線の張り方が実に見事。後になって「そういう事だったのか!」と何度も驚かされたし、狼の面を被った少女の正体や“時代設定”等、意外さに溢れている。結末にはぐっと来る物が在り、心が清められた感じが。
「何の為に、自分は生きているのだろう?」、「自分なんて、生きている価値が在るのか?」、「生きて行くのが辛い。」等々と悩み続けている子供達、否、そういう大人達にも読んで貰いたい作品。第15回(2018年)本屋大賞を受賞した作品でも在るので、もう既に多くの人達が読んでいるとは思うが・・・。
総合評価は、星4.5個とする。