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東久留米市の公園。荒川の河川敷。そして、東京湾の沿岸。3つの場所で相次いで見付かった遺体。被害者は何れも首筋に2つの傷跡が在り、略全ての血液が抜き取られていた。丸で“吸血鬼”が起こしたかの様な連続殺人。
捜査1課の桜井公康(さくらい きみやす)から内々に相談を受けた天才医師・天久鷹央(あめく たかお)は、事件解明に動き出す。
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現役の医師でも在る小説家・知念実希人氏には「天久鷹央の推理カルテ・シリーズ」というのが在り、今回読んだ「吸血鬼の原罪 天久鷹央の事件カルテ」は、其の第14弾となる。「怜悧な頭脳と厖大な知識を持っているが、コミュニケーション能力が極めて低く、要らぬ軋轢を生み捲っている変人女医・天久鷹央。」がシャーロック・ホームズ役、そして内科医見習いの小鳥遊優(たかなし ゆう)がジョン・H・ワトソン役という設定。そして、小鳥遊の天敵で在り、彼が所属する統括診断部で臨床研修中の研修医・鴻ノ池舞(こうのいけ まい)というトリオが、どたばた喜劇を繰り広げつつ、不可解な謎を解いて行くという展開。
“ミステリアスな殺人”が題材となる事が多い「天久鷹央の推理カルテ・シリーズ」。今回は、吸血鬼と思われる殺人犯が登場する。現役医師が著す作品なので“何等かの病気”が関わっている事が予想され、「へー。」と思わされはする設定だったが、病気を予想していただけに驚きは無い。
或る物が隠されている場所の探り当てに関しても、“其れ”が登場した時点で「“彼の現象”が使われるのでは?」と予想していたら案の定で、此れも又驚きが無かった。
「硝子の塔の殺人」(総合評価:星4.5個)等、読み応えの在る小説の書き手で在る知念氏。其の文才は評価しているが、近年、此方にも在る様にネット右翼的言動が酷くなっている。昨年の記事「祈りのカルテ 再会のセラピー」の中でも記した様に、「デマの拡散や、明らかな間違いを指摘されると無視したり、見苦しい言い訳に終始する。」、「他者から誤りを指摘されると、却って向きになって、自身のスタンスを押し通そうとする。」という所が彼の言動からは感じられるのは本当に残念だし、人としてどうかと思う。幾ら「書き手の人格と、著した作品は別物。」とは言っても、今年に入っても“異常なレヴェルのネット右翼的言動”が続いている様だと、百田尚樹氏同様、其の作品を読む気が失せてしまう。
最近の彼の小説は残念に感じる物が少なく無く、「プライヴェートでの迷走が、作品の質に影響しているのかなあ。」と思ったりも。総合評価は星3つ。