今回の「第48回衆議院議員総選挙」は、自民党「284議席」、公明党「29議席」と、与党で合わせて「313議席」、即ち全衆院議員「465議席」の3分の2以上(約67.3%)を占める圧勝に終わった。選挙後、マス・メディアが今回の結果を色々な角度から分析しているが、従来から感じている「民意と選挙結果の解離」を更に強くさせる内容だ。民意と選挙結果の解離は、矢張り「選挙制度」の影響が大きいのだろう。
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「衆院選 比例復活、課題浮き彫り 12万票で落選⇔1.6万票で当選」(10月24日、産経新聞)
今回の衆院選でも、選挙区で12万近く得票した与党の前職候補が落選した一方、1万6千票余りだった野党の新人候補が当選する現象が起きた。選挙区で落選しても、重複立候補した比例代表で復活当選出来る「小選挙区比例代表並立制」の課題が改めて浮き彫りになったと言える。
北海道3区で立候補した自民党前職、高木宏寿氏は11万8,961票を得たが、立憲民主党前職の荒井聡氏に敗退。重複立候補した比例代表北海道ブロックでの復活当選も、党最下位で当選した元職と惜敗率「3.01」の差で叶わなかった。
一方、京都3区から立候補した日本維新の会新人の森夏枝氏は、1万6,511票しか獲得出来ず落選。然し、比例近畿ブロックで名簿1位に登載された事から初当選を果たした。
前回の衆院選で立候補者全員が当選した沖縄では、4区で自民党前職の西銘恒三郎氏が勝利し、無所属前職の仲里利信氏等は落選。無所属候補には比例復活の道は無い為、候補者全員の当選とはならなかった。
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「比例代表制」は、“比較的”「獲得票数と獲得議席数との乖離が少ない制度。」と捉えている。でも、「“小選挙区”比例代表“並立制”」の場合、元記事にも在る様に「選挙区で落選しても、重複立候補した比例代表で復活当選出来る。」という事から、今回の様に「12万票近く獲得した候補が落選し、約1万6千票しか獲得していない候補が当選する。」という納得出来ない結果を生み出してしまっているのだ。
安倍政権と近しい関係に在る産経新聞なので、今回の記事では「与党が割を食った。」事を取り上げているが、全体で見れば「与党が民意以上の議席数を得、野党が大きく割を食った。」事は確かだろう。
今日付けの東京新聞(朝刊)に、今回の選挙で各党(諸派及び無所属を含む。)の「小選挙区制」及び「比例代表制」に於ける「総得票数」、「得票率」、「獲得議席数」が紹介されていた。「得票率から得られる議席数」(以降、「本来得られた議席数」と記す。)と「実際の議席数」との乖離は、想像以上だった。総得票数を全て書くとややこしいので、自民党と立憲民主党、希望の党、そして公明党という与野党の上位各2政党に関し、「小選挙区制」での総得票数を参考に記すと、次の通り。
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「『第48回衆議院議員総選挙』の『小選挙区制』に於ける総得票数」
自民党:26,500,719票(得票率は47.81%)
立憲民主党:4,726,326票(得票率は8.52%)
希望の党:11,437,600票(得票率は20.63%)
公明党:832,453票(得票率は1.50%)
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「小選挙区制に立てる事が出来た候補者数の違い」が大きく影響しているのだろうけれど、希望の党が想像以上に票を多く獲得しているのが判る。
では、次に「小選挙区制」及び「比例代表制」での各党の「得票率」、「本来得られた議席数」、「実際の議席数」、そして「其の差(「本来得られた議席数」と「実際の議席数」との差を意味する。)」を記してみたい。小選挙区制での総議席数は「289議席」、比例代表制での総議席数は「176議席」で、「本来得られた議席数」は総議席数に各党の得票率を掛け合わせ、小数点1位を四捨五入した物なので、総議席数とは完全一致しない。
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「第48回衆議院議員総選挙」
自民党
≪小選挙区制≫
[得票率]47.81%
「本来得られた議席数]138議席
[実際の議席数]215議席
[其の差]+77議席
≪比例代表制≫
[得票率]33.27%
「本来得られた議席数]59議席
[実際の議席数]66議席
[其の差]+7議席
立憲民主党
≪小選挙区制≫
[得票率]8.52%
「本来得られた議席数]25議席
[実際の議席数]17議席
[其の差]-8議席
≪比例代表制≫
[得票率]19.88%
「本来得られた議席数]35議席
[実際の議席数]37議席
[其の差]+2議席
希望の党
≪小選挙区制≫
[得票率]20.63%
「本来得られた議席数]60議席
[実際の議席数]18議席
[其の差]-42議席
≪比例代表制≫
[得票率]17.35%
「本来得られた議席数]31議席
[実際の議席数]32議席
[其の差]+1議席
公明党
≪小選挙区制≫
[得票率]1.50%
「本来得られた議席数]4議席
[実際の議席数]8議席
[其の差]+4議席
≪比例代表制≫
[得票率]12.51%
「本来得られた議席数]22議席
[実際の議席数]21議席
[其の差]-1議席
共産党
≪小選挙区制≫
[得票率]9.01%
「本来得られた議席数]26議席
[実際の議席数]1議席
[其の差]-25議席
≪比例代表制≫
[得票率]7.89%
「本来得られた議席数]14議席
[実際の議席数]11議席
[其の差]-3議席
日本維新の会
≪小選挙区制≫
[得票率]3.18%
「本来得られた議席数]9議席
[実際の議席数]3議席
[其の差]-6議席
≪比例代表制≫
[得票率]6.07%
「本来得られた議席数]11議席
[実際の議席数]8議席
[其の差]-3議席
≪小選挙区制≫
[得票率]1.14%
「本来得られた議席数]3議席
[実際の議席数]1議席
[其の差]-2議席
≪比例代表制≫
[得票率]1.68%
「本来得られた議席数]3議席
[実際の議席数]1議席
[其の差]-2議席
≪小選挙区制≫
[得票率]0
「本来得られた議席数]0議席
[実際の議席数]0議席
[其の差]±0議席
≪比例代表制≫
[得票率]0.15%
「本来得られた議席数]0議席
[実際の議席数]0議席
[其の差]±0議席
諸派
≪小選挙区制≫
[得票率]0.38%
「本来得られた議席数]1議席
[実際の議席数]0議席
[其の差]-1議席
≪比例代表制≫
[得票率]1.15%
「本来得られた議席数]2議席
[実際の議席数]0議席
[其の差]-2議席
無所属
≪小選挙区制≫
[得票率]7.78%
「本来得られた議席数]22議席
[実際の議席数]26議席
[其の差]+4議席
≪比例代表制≫
[得票率]0
「本来得られた議席数]0議席
[実際の議席数]0議席
[其の差]±0
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単純計算では在るが、「本来得られた総議席数」となると与党は「223議席」となり、「実際の総議席数」で在る「313議席」よりも「90議席」少ない事となる。比例代表制(正確に言えば、今回は「小選挙区比例代表並立制」だが。)は民意と議席数がそんなに大きく解離していないけれど、「1票でも多く票を獲得した候補が議席を“総取り”してしまう小選挙区制は、“死に票”の多さが問題。」とされて来たが、今回の選挙でも其の問題点が浮き彫りとなった訳だ。
民意が議席数にきちんと反映されていたならば、自民党はこんなにも大勝ちしなかったし、大敗が指摘されている希望の党も「50議席」では無く、「91議席」獲得していた計算になる。
制度に完璧は無いけれど、“より良い制度”というのは在る筈だ。今の形での小選挙区制は「政権交代を起こり易くする。」というメリット(?)は在るものの、現在の様な“独裁的政権”(“独裁政権”では無く、独裁的政権”と記している事に留意。)を産み育ててしまうデメリットが在る。「派閥政治を助長する。」という理由から廃止された「中選挙区制」を含め、「民意が議席数に、より効果的に反映される制度。」を考え、変えて行かないといけないだろう。
何事も然りですが、ベターは在り得ても、ベストというのは先ず在り得ない。我が国の選挙制度も同様で、何がベストなのかは人によって考え方が多種多様だろうけれど、ベターという観点から言えば、現状よりは良い制度が在り得ると思う。
少なくとも我が国の「小選挙区制」に関して言えば、「利点」よりも「害」の方が多過ぎる。一党独裁に走り、与党内はイエスマン許り。安倍首相の主張に対し、結果的には盲目的に追随しているだけの自民党の政治家達。曲論を言えば、こんな連中ならば、国会には代わりに案山子でも立たせておけば良い。
死に票を極力減らすという観点からも、小選挙区よりは比例代表の方がベターでしょうね。まあ、比例代表を導入した所で、“思考を呈した国民”が増えれば、阿保な政党が立てた“客寄せパンダ候補”が多く当選する現状は、そんなに変わらない気もしますが。
今年1年、大変御世話になりました。来年も引き続き、何卒宜しく御願い致します。良い年の瀬を御過ごし下さい。
アメリカは、その地域によって住民の支持政党がはっきりと分かれていて、「ここは民主党、そこは共和党」となっているそうで、小選挙区でも、それぞれの地域の得票は、その党がほとんど取るのだそうです。
日本では、そのように明確に地域の支持政党が分かれているというのはほとんどありません。各政党の支持者が混在しているのが普通でしょう。
もし、小選挙区にするなら全部比例にすべきで、それを都道府県別に集計してという風にすべきだと私は思いますね。
昔は大平正芳元首相に代表される「“表面的には”、ハッキリとした言動をしない政治家。」よりも、「ハッキリ明言する政治家。」に魅力を感じた時期が在りましたが、小泉純一郎元首相や橋下徹元市長、小池百合子都知事、小泉進次郎議員等、一般受けをする事を声高に叫ぶけれど、中身が全く無い“トリックスター”達が幅を利かして来た(いる)事を思うと、「口下手だったけれど、確りとした信念や主張を持っていた大平元首相は、非常に真面だったのだなあ。」と痛感します。
共産党も然る事乍ら、個人的には公明党の今後のスタンスに興味が在ります。結果として自民党は大勝ちしたけれど、公明党に限って言えば、“同党の此れ迄の常識”から考えられない程、議席数を減らしたので。「大阪では維新と、東京では都民ファーストと、そして国では自民党とと、力の在る存在にくっ付くのが大好きな公明党。」ですが、今回の結果からは「政権を委ねるのは、“消去法”で自民党にせざるを得ないけれど、でも、安倍政権はもうウンザリ。そんな安倍政権に媚び諂っている公明党って、どうなのかなあ?」と不信感を持つ公明党支持者が少なく無かったというのが見えて来るので。此れ迄の様に「当初は反対のスタンスを見せるけれど、結局は自民党の言い成りになる。」という形では、今後、公明党の支持基盤が揺らいで行くのは目に見えている。特に改憲に関して、自民党は希望の党や日本維新の会等に秋波を送るのは確実で、そうなると公明党の存在意義は少しづつ薄れて行く。公明党の今後の立ち位置、非常に興味深いです。
小泉進次郎然り、有権者受けの良い政治家が人気を博すようになり、それは、官僚との対話や調整などの実務的な人材に陰りをもたらすと思います。戦前の政治家は地域や有権者とのコミュニケーションは上手でしたが、官僚機構との調整は不得手だったといいます。それが、官僚機構、軍部の独走を許した面もあるでしょう。
政治家も、得意分野で分担すればいいと思いますし、政治に掌返しは悪だと思うので、議席を減らし敗北した事によって、多数派の有権者の方を向いていないし官僚との共闘も出来ない、共産党がどう動くかが見物ですね。権力闘争が苦手だという事は、共産党の大きな特徴でしょう。