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其れ其れは、社会面の在り触れた記事だった。1人目は、マンションの屋上から飛び降りた。2人目は、地下鉄に飛び込んだ。そして3人目は、タクシーの前に飛び出した。何人たりとも、相互の関連等想像し得べくも無く、仕組まれた3つの死。更に魔の手は、4人目に伸びていた。
だが、逮捕されたタクシー運転手の甥・日下守(くさか まもる)は、知らず知らずの内に、事件の真相に迫って行き・・・。
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「文章が冗長で、読み進めるのが辛い。」という理由から、ずっと敬遠していた宮部みゆきさんの小説。しかし、先月読了した彼女の作品「ペテロの葬列」が思い掛けず良かった事から、「他の作品も読んでみようかな。」という気持ちになった。今回読了した「魔術はささやく」は、第2回「日本推理サスペンス大賞」を受賞した作品。受賞年度は1989年だから、丁度四半世紀前という事になる。
25年も前の作品だから仕方無いのだけれど、扱っている内容に古さを感じさせる面が結構在る。又、デビューから2年という極めて初期の作品故、文章が(今よりも)稚拙だったり、設定に御都合主義な面が見受けられるのも、目を瞑らなければいけないだろう。
トリック自体は凡庸で、早い段階で見破ってしまう人も多そう。でも、「或る人物の正体」、正確に言えば「或る人物と或る人物との関係性」だが、此れは見抜けなかった。
「こういう結末かあ・・・。」と落胆はしたが、ストーリーの展開は悪く無いし、“読ませる内容”だと思う。総合評価は、星3つとする。