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羽原円華(うはら まどか)という若い女性のボディーガードを依頼された元警官の武尾徹(たけお とおる)は、行動を共にするに連れ、彼女には不思議な“力”が備わっているのではと、疑い始める。
同じ頃、遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きていた。検証に赴いた地球化学の研究者・青江修介(あおえ しゅうすけ)は、双方の現場で謎の娘・円華を目撃する。
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東野圭吾氏の小説「ラプラスの魔女」を読了。東野作品の大ファンなので、一昨年5月、刊行された日に購入していたのだが、他にも読みたい作品が一杯在り、ずっと未読の儘だった。(実は、同様の理由から、未読の東野作品が他に2つ在る。)
「ラプラスの魔女」は、不思議な力を有する人間を題材にした作品。典型的な文系人間の自分にとって、理系の東野氏が紡ぐ作品は、記述面でも魅力を感じている。此の作品も又、医学や地球化学等の“理系エッセンス”が溢れていて、其れは其れで読み応えが在った。
然し、肝心なストーリーという点では、今一つという感が否めない。登場人物達の内面が深く描かれていないし、「〇〇という体験をしたから、XXという決断をした。」という設定が余りに短絡的に感じるから。一部ネタバレになってしまうけれど、「相模原障害者施設殺傷事件」の犯人を思い浮かばせるキャラクターが登場するのも、作品自体に後味の悪さが残る。
近年の東野作品には、「魔球」や「手紙」等で受けた“凄い衝撃”を超える物が無く、非常に残念に思っている。大好きな作家なので、今後を期待したい。
総合評価は、星3つとする。