ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「果てしなき渇き」

2009年03月03日 | 書籍関連
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元刑事・藤島秋弘の元に、「失踪した娘の加奈子を捜して欲しい。」と別れた妻・桐子から連絡が在った。家族と縒りを戻したいと願う藤島は単身で捜査に乗り出す。

一方、3年前。中学生で在る瀬岡尚人は手酷い苛めに遇っていた。自殺さえも考えていた所を藤島加奈子に救われる。彼は彼女に恋をした。そして以前に彼女が付き合っていて、自殺してしまった緒形の様になりたいと願う様に。

2つの物語が交錯し、探る程に深くなる加奈子の謎、次第に浮き彫りになる藤島の心の闇。用意された驚愕の結末とは?
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深町秋生氏の小説「果てしなき渇き」は、2004年に「『このミステリーがすごい!』大賞」の第3回大賞を受賞した作品の一つだ。(水原秀策氏の「サウスポー・キラー」と同時受賞。)巻末に選者達の選評が載っており、小説そのものを読む前に目を通した。個人的には好きなタイプの作品では無いにも拘わらず(こんな小説読みたくないと何度思った事か。)、これに最高得点を付けた。大森望氏・翻訳家&評論家)、ジェイムズ・エルロイ馳星周の影響下に在る鬼畜系暗黒活劇で、女子供を甚振る様な描写もてんこ盛り。内容に反感を抱く女性読者も多いでしょうが、(中略流石に万人向けと主張する勇気は無い香山二三郎コラムニスト)といった評価が並ぶ。個人的には極度なヴァイオレンス物というのが得意では無いので、一旦は読むのを躊躇するも、『好きなタイプの作品では無いという選者に、最高得点を付けさせた作品』というのに興味が在り、結局読む事に。

確かに悍ましい描写に溢れた小説では在る。過激な暴力シーンのみならず、背徳的な内容も含まれている。唯、自身の肉体に痛みを感じさせる様などぎつい暴力シーンというのは、「自分は間違い無く生きているのだ。」と再認識させる効果も有しているし、「池袋ウエストゲートパーク」シリーズを読んでいる自分にとっては、想像していた程の嫌悪感は無かった。

人間の心の中に潜む天使性と悪魔性。それを感じさせる小説だが、読破した後に強く残るのは悪魔性の方だろう。後味の悪い内容では在るが、一気に読ませる筆力は認める。

総合評価は星3つ

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2 コメント

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Unknown (マヌケ)
2009-03-03 12:30:32
読後に嫌な気分に陥ってしまった作品は貫井徳朗氏の「愚考録」が思い出されます。 まあ、読んでいるうちからラストがだいたい予想つきましたし、ハッピーエンドのはずないというのも始めから把握できました。 人の考えることや行いの愚かさは恋愛などを描くのと同じくらい小説の定番ですね。 桜庭一樹氏の「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」は親からの虐待による救いのない結末と同時にラストに立ち直る引きこもりの兄の存在が光となって、読後、さわやかな気持ちになりました。 決してこれもハッピーエンドではないのですが、これはこれでいい物語だったと、主人公もその他の登場人物も40代のおっさんが読むような小説としては年齢的に若くて離れた世代にもかかわらず、読者を区別なく引き込む力があふれていました。 読ませる力ですね。 最後に、あまりにすごい現実に驚いたのは山本譲二氏のノンフィクションでタイトルを度忘れしてしまいましたが、聾唖者だけの暴力団とか、障害者一家による障害者監禁事件とか、服役中に知ることになった事件をたどるノンフィクションはちょっと衝撃でした。 そして、後味の悪い読後感でした。
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>マヌケ様 (giants-55)
2009-03-03 16:40:21
書き込み有難う御座いました。

貫井氏の作品には読み応えの在る物が多いのですが、「愚行録」に関しては物足りなさを感じました。(http://blog.goo.ne.jp/giants-55/e/f885a71d7d01dae978e8f11454c064c3)マヌケ様が書かれておられる様に、比較的早い段階から結末が読めたというのも在りますが、一番大きいのは登場人物達に共感出来ないという点。正に「嫌な気分」しかなかったので。
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