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彼の女、曾木美禰子(そぎ みねこ)が、私の眼前で死んだ。32年前、父が犯した殺人に関わり、行方不明だった彼女が、今になって何故?
真相を求めて信州の寒村を訪ねた私を、次々に襲う異様な出来事。果たして、誰が誰を殺したのか?
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人の夢を食って生きるとされる、伝説上の生物「貘」。悪夢を見た際には、「(此の夢を)貘に上げます。」と唱えると、其の悪夢を二度と見なくて済むとか。そんな貘をタイトルにした小説「貘の檻」を書き下ろしで上梓したのは、直木賞作家の道尾秀介氏。
道尾氏は比較的“外れ”の作品が少ない作家の1人と捉えているのだが、今回読了した「貘の檻」は、外れ中の外れといった感じ。4年前に読了した「月の恋人 ~Moon Lovers~」も可成りがっかりな内容だったが、「貘の檻」を前にすると未だ増しに思えてしまう程。
「無差別大量殺人(「貘の檻」の場合は未遂だが。)」や「地下の暗闇」等、横溝正史氏の名作「八つ墓村」を思わせる設定が。「八つ墓村」では洞窟内の「竜の顎門」という場所が登場したが、「貘の檻」には「龍の胃袋」というのが登場するし、道尾氏が「八つ墓村」の“設定”を意識したのは間違い無いだろう。
しかし、作品の完成度で言えば、「八つ墓村」には遠く及ばない。主人公の大槇辰男(おおまき たつお)が見る悪夢が再三描かれるのだが、現実世界との関係性を表しているとはいえ、非常に婉曲的で、御負けにくどくどしい。“真犯人”も「恐らくは此奴だろうなあ。」という察しは早い段階で付いたし、“ネタばらし”の説明も、此れ又くどくどしい。様々な面でくどくどしさが感じられ、読み進めるのが億劫になってしまう。
厳し過ぎるかもしれないが、総合評価は星1.5個とする。