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日本で一番天国に近い島といわれる「志手島」は、本土からは船で19時間、海豚や鯨の泳ぐコーラル・ブルーの海に囲まれ、亜熱帯の緑深い森に包まれている。
そんな楽園で、ギネス級かも知れない17cmの巨大蟷螂が発見された。「びっくりな動物図鑑」を執筆中だったフリーライターの藤間達海(とうま たつみ)は、取材の為現地を訪れるが、 志手島には楽園とは別の姿が在った。2年間で12人が、自殺と思しき水死体で発見されており、ネットでは「自殺の新名所」と話題になって「死出島」と呼ばれていたのだ。
嘗て妻を自殺で失った藤間は、何故人間は自ら命を絶とうとするのかを考え続けており、志手島には其の取材も兼ねて赴いていた。軈て島で取材を続ける藤間の身の回りでも不審死が・・・。
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直木賞作家・荻原浩氏の小説「楽園の真下」は、「“日本で一番天国に近い島”と言われる志手島で、超巨大な蟷螂が次々に人を襲う。」というストーリー。其の巨大さは尋常で無く、中には1mを越える物も存在するというのだから、虫が苦手な自分からするとぞっとする設定だ。
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・古代の虫の体が巨大だったのは、酸素濃度がいまの地球上より高かったからだそうだ。人間や他の脊椎動物の呼吸器が肺であるのに対し、昆虫は気管と呼ばれるチューブ状の器官で呼吸している。このシステムは肺に比べると酸素を取り込む効率が悪く、器官が体に占める割合も大きい。だから酸素濃度の高い時代には機能しても、いまの酸素濃度では活動できない‐。
・「これがカワシンジュガイの幼生、グロキジウム。グロキジウムはサケやマスの鰓の中に寄生して暮らす。なぜか寄生された魚は寿命が延びるんだ。病気に対する抵抗力が強まり、傷の治り方も早くなる。」。
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巨大蟷螂が人間を襲うシーンは、アルフレッド・ヒッチコック監督の名作「鳥」を思い起こさせる。又、最も興味深かったのは「寄生生物」に関する記述。「寄生生物が、“宿主”に与える影響。」等、知らない事が多くて、非常に勉強になった。
「生物が関係するパニック作品では、良く在る形の結末。」だったのは少々がっかりしたが、ストーリーとしては面白い。総合評価は、星3.5個とする。