先日、台風26号の直撃により、甚大な被害を受けた伊豆大島。19日迄に27人の死亡が確認され、依然として21人が行方不明。亡くなられた方々の御冥福を祈ると共に、行方不明となっている方々が1日も早く救出される事を願う許りだ。
「伊豆大島」から想像される事物は人其れ其れだろうが、自分の場合は或る航空事故を真っ先に思い浮かべてしまう。「当時としては、大規模な航空事故だったんだよ。著名人も何人か亡くなったし。」という話を、伊豆大島に関する報道がされる度に、両親から聞かされて来たからだ。
其の航空事故は「もく星号墜落事故」と呼ばれ、今から61年前の1952年4月9日に発生した。日本航空(「サンフランシスコ平和条約」発効前故、“日本人による自主的航空運営”は認められておらず、日本航空は営業面のみを担当し、航空機の整備&運用はノースウエスト航空に委託していたとか。)の機体番号「N93043」、愛称「もく星号」が伊豆大島に墜落。
当時、航空機運賃は格段に高価だった事から、乗客は社会的地位が高い人間が多く、八幡製鐵の社長・三鬼隆氏や日立製作所の取締役、石川島重工(現在のIHI)の役員等が犠牲となった。
もく星号が消息を絶ってから其の残骸が発見される迄、関係当局は情報を殆ど得る事が出来ず、多くの未確認情報が錯綜。結果として「海上に不時着した。」、「アメリカ軍機が、生存者を発見した。」、「乗客は全員無事。」等の誤報が、次々にメディアから流されたと言う。
犠牲者となった1人に、漫談家として一世を風靡した大辻司郎氏が居た。此の人に関しては全く存じ上げないのだが、彼の長男は知っている。同じ「おおつじ しろう」という読みの芸名で俳優として活躍した大辻伺郎氏がそうで、彼が「吉永百合夫:通称ヒゲゴジラ」という役で出演していたTVドラマ「ハレンチ学園」【動画】を、夏休みの再放送で良く見ていたから。父・司郎氏は航空事故により65歳で、そして息子の伺郎氏は自殺にて38歳で亡くなるという、親子2代の不幸さも在り、「おおつじ しろう」という名前は脳裏に深く刻まれている。
【大辻伺郎氏】
で、話を戻すが、「もく星号墜落事故」の際、数多く流された誤報の中でも「大誤報」と言えるのが、大辻司郎氏に関する物だろう。事故発生の翌日、長崎県の地方紙「長崎民友新聞」の紙面に「危うく助かった大辻司郎氏氏」という写真付きの記事が掲載されたのだ。其れだけでは無く、「漫談の材料が増えたよ。-却って張り切る大辻司郎氏」という見出しで、大辻氏自身の談話迄載っていたのだとか。
既に亡くなっていた人物の談話、「新聞社による捏造記事だな。」と思ってしまう所だが、真相は違う様だ。未確認情報が錯綜する中、「乗客は全員無事。」という報道を知った大辻氏の秘書が、同新聞に連絡する際に気を利かせ過ぎて捏造した談話だったとか。
其れをマス・メディアが報じるか否かは別にして、「大災害や大事故が発生した際、飛び交うデマ。」という構図は今も変わらないし、そういったデマに容易く扇動されてしまう人が少なく無いというのは、困った物だ。