ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「夢幻花」

2013年04月23日 | 書籍関連

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独り暮らしをしていた老人・秋山周治(あきやま・しゅうじ)が、何者かに殺された。遺体の第一発見者は孫娘の梨乃(りの)。梨乃は祖父の死後、庭から消えた黄色い花の事が気に掛かりブログアップする。

 

ブログを見て近付いて来たのが、警察庁に勤務する蒲生要介(がもう・ようすけ)。其の弟・蒼太(そうた)と知り合った梨乃は、蒼太と共に、事件の真相と黄色い花の謎解明に向けて動き出す。西荻窪署の刑事・早瀬(はやせ)等も、事件の謎を追うが、其処には別の思いも在った。

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東野圭吾氏の新刊夢幻花」を読了。其のには「『こんなに時間を掛け、考えた作品は他に無い。』と著者自らが語る会心作!」と惹句が記されていたが、「元々は2002年~2004年に掛けて月刊誌に連載した内容を元に、“書き下ろし”た作品。」というのだから、確かに相当な時間を要している。

 

朝顔に、黄色い花は無い。しかし、江戸時代には存在した。」のだそうだ。「では、何故今は存在しないのだろうか?人工的に蘇らせる事は、不可能なのだろうか?」と考えた東野氏は、「黄色い朝顔」という物に“ミステリーの香り”を感じ、其れを題材にした小説を連載する事になったと言う。

 

「連載を終え、改めて読み直してみると、余りにも難点が多過ぎて、とても単行本に出来る代物では無い。」と判断した東野氏。ずるずると出版を引き延ばしている内に、小説中の科学情報も古くなってしまい、ストーリー的にも成立しなくなってしまった事で、担当編集者には「何年掛かっても、必ず仕上げます。」と約束。結局は「黄色い朝顔」というキーワード“だけ”残し、全面的に内容を書き直した事で、連載終了から9年経って漸と、出版に漕ぎ着けたそうだ。

 

冒頭、1962年に発生した悲惨な事件が描かれている。僅かの記述で、読み進めて行く内に、此の事件の事はすっかり頭から抜け落ちていた。其れだけに、終盤で「此の事件の関係者だった意外な人物」が明らかになった際には、「其の伏線の張り方の絶妙さ」には息を呑んだ。

 

又、或る人物との出会いに関しては、やや御都合主義的な感じもしたが、「人と人との意外な繋がり」や「予想もしなかった意外な真犯人」等、“良い意味で”意外性に溢れた作品。

 

「夢幻花」というタイトル、そして表紙絵から、申し訳無いけれど「地味で、余り面白くなさそう。」という先入観が在った。しかし、実際に読み始めると、ぐいぐいストーリーに引き込まれてしまった。佐々木譲氏の「警官の血」を読んだ時と似た高揚感が在り、「今後は東野作品の中でも、上位にランキングされるで在ろう名作。」確信

 

総合評価は、星4つ


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