********************************
「東城大学病院とケルベロスの塔を破壊する。」、東城大学病院に送られて来た脅迫状。高階権太(たかしな・ごんた)病院長は、院内の厄介事を一手に引き受ける“愚痴外来”の田口公平(たぐち・こうへい)医師に、犯人を突き止める事を依頼。
厚生労働省の“ロジカル・モンスター”こと白鳥圭輔(しらとり・けいすけ)の部下、姫宮香織(ひめみや・かおり)からのアドヴァイスによって、調査を開始する田口。警察、医療事故被害者の会、内科学会、法医学会等、様々な人間の思惑が交錯する中、Aiセンター設立の日に・・・。
********************************
現役医師でも在る作家・海堂尊氏のデビュー作「チーム・バチスタの栄光」は大ベスト・セラーとなり、映画化及びTVドラマ化されるに到った。以降、同作品で中心キャラクターだった田口公平と白鳥圭輔が登場する「田口・白鳥シリーズ」は「ナイチンゲールの沈黙」、「ジェネラル・ルージュの凱旋」、「イノセント・ゲリラの祝祭」、「アリアドネの弾丸」、「玉村警部補の災難」と上梓されて来たが、今回読了した「ケルベロスの肖像」は、作者によると「田口・白鳥シリーズの完結編」という事らしい。6年間続いた人気シリーズの完結編、どういう終わり方をするのか興味津々なファンも多かった事だろう。
田口・白鳥シリーズでは御馴染みのキャラクターが、次から次へと登場。過去の作品で彼等がどう関わって来たかを、思い出し乍ら読み進む。
初期の作品では精彩を放っていた「仰々しい形容のオンパレード」も、近年の作品では漸鼻に付き出していた。そういう意味では、此のシリーズも終わる潮時だったのかもしれない。
或る人物の正体が明らかとなり、其の人物が“過去”を明らかにする経緯は、正直良い心持ちにはなれない。其の怨念の深さには、ゾッとする許りだ。
エンディングは、想定内な形。田口の“人間的成長”を感じる一方、「“発展的な形”で、新シリーズが作られるのではないか。」という気も。「此の儘で終わらせて欲しい。」という思いと、「新シリーズを読んでみたい。」という思いの鬩ぎ合い。
総合評価は、星3つ。