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“睨み”とは、刑事が公判を傍聴し、被告人が供述を翻したりしない様、無言で圧力を掛ける事。
事務所荒らしで捕まり、懲役5年の判決を受けた窃盗の常習犯・保原尚道(ほばら なおみち)は、仮釈放中に保護司・石橋マサ江(いしばし まさえ)を殺害し様とした容疑で逮捕された。取り調べを担当する片平成之(かたひら しげゆき)は、4年前の保原の裁判で“睨み”をしていて、面識が在った。保原は自首しており、目撃者による面通しも終えているのだが、片平は納得していない。保原は人を殺め様とする程の悪人なのか。
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近年の“ミステリー関連の年間ブック・ランキング”では、常連となりつつ在る作家・長岡弘樹氏。彼の短編小説7作品を纏めたのが、今回読了した「にらみ」だ。
カーヴという球種の原理やアフリカツメガエルの変わった特徴等、勉強になる記述が幾つか在る。又、全体的に面白いストーリーでは在る。
唯、「餞別」や「遺品の迷い」という作品は、偶然性に頼り過ぎた設定だし、「実況中継」と「白秋の道標」という作品は、早い段階で“落ち”が読めてしまった。
最初の「餞別」という作品は、文章の中で明確な“答え”はしるされていない。提示されている“図”を“塗り潰す”事で「成る程。」となる訳だが、人によっては「どういう事?」と意味が判らないかも。明確に答えを記した方が、一般的には親切かもしれない。個人的には、最後の「百万に一つの崖」という作品が良かった。
総合評価は、星3つといった所か。