1960年代から1970年代に掛けて、数多の特撮TV番組が製作&放送された。当時の子供達から絶大な人気を得た作品の代表格は「ウルトラ・シリーズ」【歌】と「仮面ライダー・シリーズ」【歌】だが、「人造人間キカイダー」【動画】及び「キカイダー01」【歌】の「キカイダー・シリーズ」も人気が高く、未だに熱心なファンが少なくないと聞く。ハワイにも多くのファンが存在するというのだから、本当に凄い。
斯く言う自分も当時、「キカイダー・シリーズ」は夢中になって見ていた。初期の「仮面ライダー・シリーズ」もそうだが、石ノ森章太郎氏の作品には「人間では無い事の哀しみや苦しみ」を描いた物が幾つか在る。「キカイダー・シリーズ」もそんな1つで、そういったテーマにグッと来る物が在った。そして何よりも、其れ迄の「特撮物のヒーローの造形」は“シンメトリック(左右対称)”が常だったのに、「キカイダー・シリーズ」の場合は“アシメトリック(左右非対称)”で、其れに対して子供心にエロチシズム的な物を感じた事も、強く惹かれた要因かもしれない。
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世界的ロボット工学の権威・光明寺信彦(長嶋一茂氏)を中心に、日本政府は「ARKプロジェクト」という、「社会問題解決の為、ロボットを積極利用するプロジェクト。」を推進していた。
しかし、実験中の事故によって光明寺が死んで以降、光明寺のライヴァル・ギルバート神崎(鶴見辰吾氏)と国防大臣・椿谷(中村育二氏)に掌握されたARKプロジェクトは、本来の目的を見失っていた。神崎は独自のプロジェクトに固執、一方の椿谷は光明寺のプロジェクトを遂行する為に必要な“鍵”を捜し求めていた。
其の鍵を持つ光明寺の子供・ミツコ(佐津川愛美さん)とマサル(池田優斗君)に魔の手が伸び様とした其の時、彼等の前に光明寺が開発した「良心回路」を持つ人造人間ジロー(入江甚儀氏)が現れ、2人の窮地を救う。
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【ジロー:入江甚儀氏(21歳)】
【光明寺信彦:長嶋一茂氏(48歳)】
【光明寺ミツ子:水の江じゅんさん(22歳)と光明寺マサル:神谷政浩氏(9歳)】
【光明寺ミツコ:佐津川愛美さん(25歳)】
【光明寺マサル:池田優斗君(9歳)】
【プロフェッサー・ギル:安藤三男氏(44歳)】
【ギルバート神崎(プロフェッサー・ギル):鶴見辰吾氏(49歳)】
1972年から1973年に掛けて放送された「人造人間キカイダー」、そして現在上映中のリメーク版「キカイダー REBOOT」【動画】に登場する主要なキャラクターを対比してみた。先に貼ったのが「人造人間キカイダー」で、後のは「キカイダー REBOOT」。演じた役者の年齢は全て、「人造人間キカイダー」の方は1972年末時点、「キカイダー REBOOT」の方は2014年5月28日時点の物。
5月8日の記事「年代のイメージ」で触れたが、同い年乃至は同年代でも、概して“昔の人”の方が“今の人”よりも老けて見える。同じ光明寺博士でも伊豆肇氏は当時55歳、長嶋一茂氏は48歳と7歳しか違わないのに、伊豆氏の方が遙かに老けて見える。個人的には「長嶋氏では“重み”が無く、伊豆氏の方がしっくり来る。」のだが、今、伊豆氏の様な雰囲気の俳優を起用したならば、ミツコ達との関係が“見た目的には”祖父と孫達という感じになってしまうのだろう。伊豆氏演じる光明寺博士は喋りが非常に棒読みだったので、其の点では長嶋氏の方が上手いかも。
光明寺ミツ子(ミツコ)や服部半平、プロフェッサー・ギルに付いても、「キカイダー REBOOT」の方が演じている俳優は遙かに若く見える。原田龍二氏の場合は43歳なのに、当時29歳だった植田峻氏とそんなに変わらない感じだし、当時44歳だった安藤三男氏の場合は、鶴見辰吾氏が5つ年上の49歳とはとても思えない。メークも在ろうが、どう見ても安藤氏は御爺ちゃんという感じだし。
リメーク物の場合、オリジナルと余りに違い過ぎているケースが少なく無い。作り手としては「自分の“色”を出したい。」という気持ちが在るだろうし、オリジナルに“変化”を付ける事は、決して悪くは無いと思っている。でも、人気が高かった作品の場合、オリジナルの“核”で在る部分を妙に弄ってしまうのは駄目。こういうのは、概して失敗作となってしまう。そういう意味で「キカイダー REBOOT」は、オリジナルの“核”を大事に残しているし、だからと言って“変化”を付けていない訳でも無く、非常にバランスが良い。
「人造人間キカイダー」ではジローが3本の指を突き出し、「チェインジ!スイッチオン!ワン、ツー、スリー!」という掛け声にて、パラパラ漫画風の映像でキカイダーへと変身した【動画】。一方「キカイダー REBOOT」では、「スイッチオン!」の掛け声のみ、又は無言で変身してしまう。“昭和キカイダー”は質感がビニール風なのに対して、“平成キカイダー”はメタリックだ。(ハカイダーには、ビニール風の質感が残っていたけれど。)
「『ダークに生まれし者は、ダークに帰れ!』というプロフェッサー・ギルの決め台詞。」、「『良心回路』や『電磁エンド』という用語。」、「ジローがギターで爪弾く曲『ギターの青年ジロー』【曲】や良心回路を掻き乱す音声【曲】(「人造人間キカイダー」ではプロフェッサー・ギルが笛を吹いて音声を出していたが、「キカイダー REBOOT」ではハカイダーが発する電磁パルスという設定に代わっていた。)。」等、“昭和キカイダー”を見て育った世代を喜ばしてくれる設定が盛り込まれている。エンド・ロールにも嬉しい御負けが付いているので、最後迄離席されない様に。
ジローにマサルが、好みを質問する場面が在る。「どんな曲が好き?」には「YMO。」。「どんな御笑いが好き?」には「ドリフ。」と答えた後、「志村~、後ろ!」、「だっふんだ!」と端正なマスクのジローが真顔で口にするのだから、思わず笑ってしまった。「人造人間キカイダー」でジロー役を演じていた伴大介氏が、光明寺博士の恩師で在る心理学者の前野究治郎役で出演しているのだが(以前、げっそりと痩せられていたので心配したが、元気そうな感じに戻られていたのでホッとした。)、此の役名を平仮名に変換すると「まえの きゅうじろう」、そう「前の旧ジロー」となる等、笑いのエッセンスも中々。
特撮のリメーク版を此れ迄に幾つか見て来たが、断トツに良い出来だった。でも、公開直後というのに、場内に観客の姿が疎らだったのが、とても残念。続編を期待させる終わり方だったが、他の映画館でもこんな感じだったら、続編は作られないだろう。
興行的には厳しそうだが、総合評価は星4つとする。