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大和俊介(やまと しゅんすけ)が勤める小規模子供服メーカー「エンジェル・メーカー」は、経営不振の為、12月25日で“クリスマス倒産”する事となった。
エンジェル・メーカーは学童保育もしており、殆どの子供は別の所へと移っていったが、唯1人、小学校6年生の田所航平(たどころ こうへい)だけは、最後の日迄世話になる事になっていた。航平の両親は別居しており、航平はキャリア・ウーマンで在る母親の圭子(けいこ)と共に、年明けには海外に行く事が決まっていたのだ。両親に離婚して欲しくない航平は、何とかして両親を仲直りさせるべく、大和の同僚の折原柊子(おりはら とうこ)と共に、父親の祐二(ゆうじ)の居る横浜へと向かう。
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有川浩さんの小説「キャロリング」。主人公の俊介は幼少期、両親から“酷い仕打ち”を受けて来た過去が在り、其れが故に“親”という存在に対して不信感を持ち、「子供で在る自分が居たから、いけなかったのだ。」という思いから、“子供”という存在に嫌悪感を持つ様になってしまった。
そんな彼が、「両親に離婚して欲しくない。」と願う少年・航平の為、奔走する事になる。嘗て付き合い、結婚を考えていた同僚・柊子が、航平の為に動き回っていたからだ。
幸せな家庭で育ったで在ろう柊子は、家族という物にマイナス・イメージを持っておらず、だからこそ“両親”を“無存在”として扱う俊介に戸惑い、結果として其の事が2人を別れさせる原因となってしまった。
題材としては決して悪く無いし、何よりも著者は「作品に“外れ”が無い。」と思っている有川浩さん。当然、読む前から期待は大きい。しかし・・・。
ハッキリ言って、此の作品は大外れ。駄作と言って良いだろう。登場人物達のキャラクターに深みが全く無いし、肝心のストーリーも現実味が無く、実に陳腐。
「有川作品だから、間違い無く面白い筈。」という期待感が無かったら、最後迄読む事はなかったろう。何で彼女は、こんな作品を著してしまったのだろうか?全体的に、“雑”な感じで、遣っ付け仕事の様にも思えてしまう。有川さんの新作を楽しみにしている人間としては、実に残念だ。
総合評価は、星1.5個。
「ドラマの製作の都合の為に、関係各所との折り合いに妥協して、こんなストーリーになってしまったのではないか。」、そういった面は在るかもしれませんね。外れが少ない道尾秀介氏も、矢張り「ドラマの原作」という大前提の下で書かれた小説「月の恋人 ~Moon Lovers~」(http://blog.goo.ne.jp/giants-55/e/df9f62cb43e77a34d3aab2446b7486ff)は、信じられない程の駄作だったし。
「遣っ付け仕事」とは思いたく無いけれど、人気の在る作家だけに、読者を失望させる様な作品は書かないで欲しい。全く「らしくない」作品でした。