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弁護士・村瀬快彦(むらせ よしひこ)は、傷害致死事件を起こした従兄弟の蓮見亮介(はすみ りょうすけ)の身元引受人となり、釈放後に2人は暮らし始める。小学6年生の時に母親が自殺し、其れ以来、他人と深く関わるのを避けて来た快彦だったが、明るい亮介と交流する事で、人として成長して行く。
だが、或る日、母が結婚する前に父親の安彦(やすひこ)に送った手紙を見付け、自身の出生に関わる衝撃の秘密を知る。2人は全ての過去と罪を受け容れ、本当の友達になれるのか?
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薬丸岳氏の小説「籠の中のふたり」は、父を病気で失い、付き合っていた彼女から別れを告げられた事で、"独りぼっち"になってしまった村瀬快彦が、矢張り"独りぼっち"の従兄弟・蓮見亮介と2人暮らしを始める事から話が始まる。快彦は弁護士、片や亮介は人を殺めた過去を持つ人間という、余りに異なった環境に在る。「埼玉」と「奄美大島」と離れて暮らしていたし、何よりも最後に会ったのは20年以上も前。なのに、出所した亮介が、身元引受人として快彦を指定して来たのは何故なのか?
ネタバレになってしまうが、最後の方で"亮介の過去"を暴露する手紙が何人かに送り付けられるのだけれど、"犯人"の正体や目的に付いては、直ぐに見当が付いた。"読み物"としては、珍しく無い設定だったから。だから、此の点では意外性が全く無いのだけれど、全体としては「次の展開が気に成って、どんどん読み進めてしまった。」という内容。
読む人によって、好き嫌いがハッキリ分かれるタイプの作品だと思う。御都合主義に感じる設定と感じられる部分が在るし、「ハートウォーミングな結末在りきの展開で、鼻白んでしまう。」という人も居るだろうから。
でも、個人的にはこういう作風が嫌いでは無いし、読後は素直に「良かったなあ。」という思いが溢れた。共に複雑な過去を有し、"籠"の中に入った儘の2人が、本当の意味で"籠の外"に出られたのだから。
総合評価は、星3.5個とする。