人体の緻密さや複雑さには驚愕させられる事が多いけれど、昨日の報道もそんな1つだった。
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「アレルギー起こし癌抑制も 肺の細胞、富山大グループ発見」(1月30日、中國新聞)
肺に多く存在する細胞が、アレルギー発症の原因となる蛋白質の一種を恒常的に生産する一方、癌の転移を抑える働きをする事を富山大大学院医学薬学研究部等の研究グループがマウスによる実験で突き止め、30日迄に米免疫学会の医学誌に掲載された。
人体にとって「諸刃の剣」となる此の細胞のメカニズムを解明、調整出来れば「アレルギーだけで無く、癌治療に繋げる事が期待出来る。」(高津聖志・富山大客員教授)としている。
気管支喘息やアトピー等のアレルギーの原因の1つは、白血球の一種「好酸球」が体内で増えたり活性化したりする事だとされている。従来は、免疫に関わるリンパ球の一種「T細胞」が蛋白質の一種「インターロイキン5(IL5)」を生み、好酸球を活性化させると考えられて来た。
研究グループはマウスを使って調べた結果、T細胞とは別に、好酸球を活性化させるIL5をより多く生み出す「原始IL5産生細胞」が肺や腸に存在する事を確認。必要に応じて此の細胞の活動を抑える方法が見付かれば、アレルギー治療法の開発に繋がると言う。
IL5を体内で作れないマウスは、癌の転移が普通のマウスより急速に進む事も実験で判明した。IL5が生み出されて好酸球に作用し、癌の転移を抑制していると考えられると言う。
グループは今後、オーストラリアのニューカッスル大等と協力して研究を続ける。
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「虫垂は不要な物。」と昔は良く言われ、「虫垂炎を予防する為。」と異常所見が無いのに虫垂を切除する事が嘗ては多かった。しかし近年は「虫垂が胃腸の免疫機能に大きく関与している“可能性”が在るとの考えから、安直な切除が控えられる様になった。」という現実が在る。
又、幼稚園児だった頃、「様々な病気を誘発する恐れが在るので。」と医師から言われ、アデノイド(咽頭扁桃)を切除。麻酔を何本も打たれ、舌を思いっ切り引っ張り出された上での切除で、其の時の痛みは相当な物だった。「アデノイドを切除しても、何の問題も在りません。」との事だったが、因果関係は定かで無いものの、其れ以降は風邪を引き易くなった気が。
“私見に過ぎない”が、「人体の構成物に『全く無駄。』という物は無く、他の構成物に大なり小なりの影響を与えている。」と思っている。
話を元記事に戻すけれど、「アレルギーを引き起こす細胞が、同時に癌の転移を抑制する働きをしている。」というのは、同じ物がプラスとマイナス双方の働きをしているという意味で興味深い。「アレルギーを引き起こすから。」という観点“だけ”で、T細胞を安直に抑え込もうとした“ならば”、其の反動として癌の転移を進めてしまうという状況が生まれる“可能性”が在る訳だから。アレルギーに苦しむ人々、そして癌の転移に怯える人々を同時に救う為、更なる発見が待たれる所。