ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「歓喜の仔」

2013年04月26日 | 書籍関連

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17歳の吉岡誠(よしおか・まこと)、12歳の正二(しょうじ)、そして5歳の香(かおり)。彼等は、東京北部の3つの区が重なり合った地域に住む3人兄弟妹。

 

1年前、父・信道(のぶみち)は多額の借金を抱え、突然姿を消してしまった。其の直後、母・愛子(あいこ)はアパートの窓から発作的に飛び出して大怪我を負い意識不明の寝た切りになってしまう。以来、兄弟妹の日々は一変した。

 

ロックが好きだった長男の誠は、音が聞こえなくなった。父の借金を返済し乍ら、家族を養うに高校を中退し、早朝は野菜市場、昼から晩に掛けては中華料理屋、深夜は覚醒剤の“アジツケ”の内職をしている。暴力団組織の斉木(さいき)には引っ越しの手伝いをさせられ、高平(たかひら)には密入国者を海から引き揚げる作業に駆り出され、更に内職のノルマを増やされ、疲れ果てる誠。

 

絵を描くのが得意で甘えん坊だった、小学校6年生の次男・正二。事件後、風景から一切の色が消えてしまった。寝た切りの母の御襁褓や体位を変えるのは、正二の役目だ。だが自分の洗濯や入浴は儘ならず、通っている小学校でも「臭い!」と言われ、クラス全員から無視されている。

 

見えない物が見える長女の香は、朝8時、兄の正二に連れられて幼稚園に通園するが、女子学生専用アパート前の電信柱で必ず足を止める。理由は、正二にも判らない。物の臭いを感じられなくなってしまった香だが、
自宅の押し入れの前では「臭い。」と呟く

 

背負い切れない程の現実が伸し掛かっ等は、怒りや哀しみを押し殺し生き延びる為、心を閉ざして来た。

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直木賞作家の天童荒太氏が、25歳の時に初めて書いた短編小説が、今回読了した「歓喜の仔」の元になっているのだそうだ。希望も夢も無く、社会の底辺で生きなければならない3人の仔達。児童虐待等の家庭的な問題から児童養護施設で育った3人の主人公の姿を描いた小説「永遠の仔」は天童氏が著しベスト・セラーを記録した名作だが、其れと似た雰囲気は在る。

 

、「永遠の仔」がストーリー的には読み易かったのに対し、「歓喜の仔」は読み進めるのにしんどさ覚えた。現実から逃避すべく、3人は心の中に空想世界を作り上げて行くのだが、現実世界と互い違いに入り込ん来るのには、正直煩わしさを感じたので。彼等の「深層心理」を描かんが為の描写なのだろうが、もっと違う形は無かったか?

 

バラバラに生きている感じの在った3人が、最後に見せた姿にはグッと来る物が在ったけれど、彼等の今後を考えると、物語の世界とはいえ、心が重くなる。程度の差は在るだろうが、現実にこういった日々を送らざるを得ない仔達は、世界に多く居るのだ。

 

此の小説に、どういう評価を下すか?」は、人によって大きく分かれる様な気がする。深層心理を奥深く描いた作品が好きな人なら、高い評価を下すのだろうが、個人的には「うーん・・・。」という感じで、総合評価は星3つとする。


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