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PCマニアの高校生・永友久(ながとも ひさし)事“キュウ”は、「殺人ライセンス」なるサイトに遭遇。其れは、凶器や殺害方法等を選択し、ターゲットを葬り去る、危険なオンライン・ゲームだった。
キュウが其のゲームに突然アクセス出来なくなった後、ゲームのターゲットと同じ様な名前のストーカー・和田康治(わだ やすはる)が殺害された。ゲームと殺害事件の関係を知らない警察は、被害者の交友関係全てを当たるが、全員にアリバイが在り、被疑者は絞り切れない。
戦慄するキュウは、相沢麻理(あいざわ まり)等クラスメート達に、其のゲームに付いて話してしまう。麻理の父親・相沢優一(あいざわ ゆういち)は勤務先をリストラされていたが、素人探偵として、キュウと事件の解明に乗り出す。麻理とキュウがクラスメートという縁も在ったが、相沢自身、会社を追われて初めて、自らの人生を本気で考える事にしたのだ。だが麻理は、キュウや相沢の行動を、冷ややかに眺める許りで在った。
相沢の高校時代の同級生で、刑事の丸谷直也(まるたに なおや)は、和田の殺害事件の捜査本部に詰め乍ら、犯人の手掛かりが全く掴めない事態に焦っていた。そして、再びネット上に「殺人ライセンス」が出現し、同じパターンで第2の殺人事件が起こってしまう。
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今野敏氏の小説「殺人ライセンス」は、12年前の2002年に刊行された作品。其れから6年後の2008年、「時代に合わなくなった部分」を著者自身が書き直し、新書版として刊行されたのを、今年の2月に文庫として刊行したのが、今回読んだヴァージョン。
パソコンやインターネットをメインに扱っているのだが、部分的に書き直されたとはいえ、「12年前」と「今」とのパソコンやインターネットに関する状況の違いに、面喰ってしまう人も多い事だろう。「そんな事、誰でも知っている。態々、説明する事でも無い。」という事柄が、12年前は結構知られていなかったりする訳で、IT分野の進歩の速さを改めて感じてしまった。
謎解きの面で言えば、「『殺人ライセンス』なるサイトと、連続殺人の関係性。」、そして「キュウのクラスメートで在る高田祥子(たかだ しょうこ)達が、夜中の3時過ぎに放送が終了し、“砂嵐”状態のTVから耳にした“謎の声”の正体。」の2点が挙げられるが、前者に付いては予定調和的な物だった。でも、後者は、理系的センスに乏しい自分にとって、「そういう事が在るのか!?」という新鮮な驚きが。
総合評価は、星3つとする。