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「『塵置き場迄行けない・・・。』高齢者に辛い塵出し 自治体支援は」(10月26日、毎日新聞)
塵置き場迄塵を持って行くのが辛い。高齢で体が不自由になり、自宅から塵袋を持ち出せない高齢者が各地で増えている。高齢化が今後ピークを迎える中、国や自治体も支援に乗り出すが、人手や財源は限られており、支援の在り方を巡って試行錯誤が続いている。
午前8時半前、北九州市小倉南区の女性(80歳)が塵袋を手に、一軒家の自宅から外に出た。地域で決められた塵置き場迄の距離は10m程度だが、2、3歩進んでは、重さに耐えられずに、塵袋を路上に置く動作を繰り返した。
女性は、生活の一部で手助けが必要な「要介護1」の夫(88歳)と2人暮らし。週2回の「家庭塵」等、塵出しは女性が担うが、足腰が弱っていて楽では無い。夫が使った御襁褓も塵袋を重くしている。
塵置き場迄は緩やかな下り坂になっていて、台車を使うのも危険だ。女性は「80歳を迎えて、年を感じる。塵置き場が近くに在るから未だ持って行けるけど、将来は判らない。」と不安を口にする。
65歳以上が人口の3割を超え、全国の政令市で高齢化率が最も高い北九州市。足腰が弱まるとされる75歳以上の人口は、2020年の約15万6,000人から、2030年には約18万7,000人と2割増えると見込まれる。エレヴェーターが無い団地で階段の上り下りが出来なかったり、塵置き場迄に坂道が在ったりして、塵出しが難しいと訴える人は増えている。
高齢者が不安を抱く背景に、塵出し特有の事情が在る。塵出しの時間は朝や夜が多く、日中にホーム・ヘルパー等の福祉サーヴィスでカヴァーする事が難しい。一方、核家族化や地域コミュニティーの希薄化で、周囲に助けを求められず、孤立する人も居る。
市内では、社会福祉協議会やシルヴァー人材センターが高齢者等の塵出し支援をする。だが、ヴォランティアは減少し、近くに支援会員が居ない事も在る。
市は2014年から週1回の指定日に、市民が玄関前に塵袋を出せば、市職員が回収する事業を開始。自力で日常生活を送るのが困難な「要介護2」以上や障害福祉サーヴィスを受給する単身世帯が対象だったが、2021年からは、一定の要件を満たし、市環境局長が認める人も対象に加え、2022年度は594世帯が利用する。
担当者は「『施設に入らず、自宅に居たい。』という要望の増加等、社会の変化も在る。利用者数に応じた収集体制を作って行く必要が在る。」と課題を口にする。
国の人口推計によると、全国の75歳以上の人口は、2020年の1,860万人から2030年には2,261万人とピークを迎え、其の後も全人口に占める割合は増え続ける。
総務省は2019年から、自治体の塵出し支援の経費の半分を手当てする。環境省も2021年に、自治体向けに支援の手引を作成した。支援を導入する自治体は、2018年度の23.5%から2020年度は34.8%に拡大している。
横浜市や大阪市は、塵出しが困難で親族や近隣住民の協力が得られなければ、65歳以上世帯は、玄関前収集をする。利用世帯は2023年3月で横浜市が約9,400世帯、大阪市が約1万1,000世帯と多い。両市共、収集業務が直営で財政規模も大きい為、手厚い支援が可能となっている。
横浜市の澤田亮仁業務課長は、「塵収集を担う職員は1,000人以上居て、回収ルートの工夫等もしている。希望者には、塵が出ていなければ安否確認もしている。」と話す。
最も、塵収集に割ける人的余裕が無い自治体の方が多数だ。
仙台市は、塵出し困難者の塵回収を、町内会等地域コミュニティーに担って貰い、家庭塵の場合、1世帯当たり1度の回収に140円を交付する。担当者は「塵出し業務を外部に委託しており、個別収集にすれば、経費が膨大になる。行政に出来る事には限界が在る。」と吐露する。
東京都日野市は、塵出し困難者向けに、指定回収日より前の塵出しを認めるシールや箱を配布。ヘルパーによる塵出しを可能にする。唯、塵が外に長時間放置される事に不快感を抱く人も居り、理解をどう得るかが課題となる。
北九州市立大の松本亨教授(環境システム)は、「塵出し支援は、高齢者が怪我をしたり、塵屋敷になったりするのを未然に防ぐ等、結果的に自治体としてのコスト減に繋がる側面も在る。」と強調。「各自治体で抱えている状況は違い、先行事例から学び取り入れる事が大事だ。ⅠT(情報技術)を活用し、高齢者の塵回収のコスト削減を試みた自治体も在り、工夫が求められる。」と指摘する。
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実家は、50年近く前に住宅地として一斉開発された地域に在る。だから、開発当初に引っ越して来た人達は、其の多くが80歳近くという感じ。幸いにも母は足が丈夫なので、塵捨ての苦労はそう無いけれど、其れでも重たい塵を捨てに行くのは「しんどい。」と言っている。足腰が弱った高齢者ならば、尚更の事だろう。
半年前の記事「“可愛げの在る老人”になりたい」で触れたけれど、知人の近隣では「確り者の高齢夫婦が、共に認知症に罹患し、決められた曜日以外に塵出しをする事が多く、トラブルになっている。」そうだ。高齢者の塵出し問題には、こういうケースも含まれるだろう。「余り強く注意してしまうと、塵出し自体に“恐れ”を感じてしまい、自宅内に塵を溜め込んでしまって、結果的に“塵屋敷”となってしまう危険性も在る。」と知人は悩んでいたが、確かにそういう面は在ろう。
「ⅠT(情報技術)を活用し、高齢者の塵回収のコスト削減を試みた自治体も在る。」という事なので、「自治体の垣根を取っ払い、素晴らしいアイデアは真摯に取り入れる。」というスタンスは重要。
又、何でも彼んでも国や自治体に頼るというのも費用面で難しいので、近隣住民間で“無理の無い範囲での助け合い”というのを、もっと考えて行く必要も在るだろう。