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“兜(かぶと)”は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない恐妻家。一人息子の克巳(かつみ)も呆れる程だ。兜が「此の仕事を辞めたい。」と考え始めたのは、克巳が生まれた頃だった。引退に必要な金を稼ぐ為、仕方無く仕事を続けていた或る日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。こんな物騒な仕事をしている事は、家族は勿論、知らない。
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伊坂幸太郎氏の小説「AX」は、第1弾の「グラスホッパー」、第2弾「マリアビートル」に次ぐ、所謂“殺し屋シリーズ”の第3弾。普段は文房具メーカーの営業マンとして働き、家庭では恐妻家の彼だが、実は超一流の殺し屋で、過去に多くの人間を殺害して来ている。“表の顔”と“裏の顔”が余りに異なる彼が、殺し屋稼業に嫌気が差し、引退を考え始めた所から話はスタートする。
格言の多用は伊坂作品の特徴の1つだが、今回の「AX」は余り多用されていない。「全く関係性が無いと思われた人物や組織が、後になって意外な関係性を見せる。」という特徴は相変わらずで、思わずニヤッとしてしまった。
一番心に残ったのは「Crayon」という章。友達らしい友達が出来なかった兜に、初めて友達と呼べる相手と出会うのだが、最後に待っているのは“悲しい別れ”。哀愁を感じさせるこういう結末、個人的には結構好きだったりする。
兜が下した最後の決断にはショックを受けたが、最後に描かれた彼と妻との出会いには、ホッとさせられる物が。概して伊坂作品とは余り肌合いが良く無かったのだけれど、「AX」は良い!
総合評価は、星4つとする。