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理不尽な暴力を躱す為に、絵本作りを始めた中学生の男女。妹の誕生と祖母の病で不安に陥り、絵本に救いを求める少女。最愛の妻を亡くし、生き甲斐を見失った老境の元教師。其れ其れの切ない人生を「物語」が変えて行く。
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道尾秀介氏の小説「ノエル ~a story of stories~」は3つの物語、其れも最初は全く別個の話と思われた物語が、最後に全て繋がるという形を採っている。
3つの物語全てに「絵本」というのが軸となっているのだが、此れが「現実の世界」と「虚構の世界」との境界線を曖昧にしている。人間の持つ「邪悪さ」と「善良さ」等、相反する要素の何方が現実なのか戸惑ったりするのだが、事実が明らかになって行く過程の描き方は上手い。
唯、結末が腑に落ちない。自分の理解力の悪さも在るのだろうが、「老境の元教師は、結局どうなったのか?」等、ハッキリしない点が幾つか在ったので。
ネット上では、此の作品を大絶賛する声が多い様だ。「優しさに溢れている。」というのが主な理由だが、今一つピンと来ない。ストーリー的に、現実感が乏しく感じてしまったからかもしれないが・・・。
自分の総合評価は、星2つ。