1970年代後半、人気が出始めていたタモリ氏が名古屋を揶揄するネタを展開し始めた事で、名古屋は嘲笑の対象となった。幼少期を名古屋で過ごした自分なので“排他的”等、名古屋の好ましく無い部分は認識していたけれど、幾らネタと判ってはいても、“自分の故郷”が面白おかしく、其れも執拗にディスられるのは、決して気分が良い物では無かった。
其れから時が流れた1981年、同じタモリ氏が自身のラジオ番組「タモリのオールナイトニッポン」内で1つの歌を紹介し、爆発的にヒットする事になる。さいたまんぞう氏の歌う「なぜか埼玉」【歌】だ。直接的に埼玉県を揶揄する歌詞では無いのだけれど、“揶揄している雰囲気”が無かったとは言えない。以降、“ダ埼玉”等、埼玉県は様々な形で揶揄される様になる。
*********************************
嘗て東京都民から酷い迫害を受けた埼玉県民は、身を潜めて暮らしていた。或る日、東京でトップの高校・白鵬堂学院の生徒会長で東京都知事の息子・壇ノ浦百美(二階堂ふみさん)は、アメリカ帰りの謎の転校生・麻実麗(GACKT氏)と出会い、互いに惹かれ合う。然し、麗が実は埼玉出身だった事が判り、2人は東京と埼玉の県境で引き裂かれてしまう。
*********************************
1980年代、爆発的人気を博したギャグ漫画「パタリロ!」。自分は一部分しか読んだ事が無いけれど、「基本はどたばたギャグだが、不条理感が在ったり、今で言う所の“ボーイズラヴ的要素”が在ったりと、不思議且つインパクトの在る作品。」だった。其の作者・魔夜峰央氏によって1982年に発表された作品が、埼玉県を徹底的にディスった「翔んで埼玉」で、今回、「翔んで埼玉」のタイトルで実写映画化。
男装姿の二階堂ふみさん、GACKT氏、伊勢谷友介氏、京本政樹氏等、見目麗しく、少女漫画の世界から抜け出して来た様な男達が登場し、時にはボーイズラヴの世界を繰り広げる。「“魔夜ワールド”全開!」といった感じだ。
「白鵬堂学院は、出身地によって階層分けされている。」という設定なのだが、其の最下層に位置するのが“Z組”。Z組の生徒達は小汚い服装で、ぼろぼろの掘っ建て小屋に“隔離”され、学園生活を送っている。上層の生徒達のセレブ感溢れる学園生活とのギャップが余りに在り、思わず吹き出してしまった。
埼玉県が、徹底的にディスられている。同様にディスられている千葉県人と、埼玉県人が対決する場面が在るのだが、双方出身の有名人が次々に紹介され、イメージとのギャップが結構在ったりで、場内では爆笑に次ぐ爆笑だった。
・・・と書くと、差別意識丸出しの作品の様に感じられるかも知れないが、千葉県人や埼玉県人の「自分の住む地域がディスられるのは慣れているし、ディスられるのが何でも無い様に表面上見せてはいるけれど、実は自分の住む地域が大好き!」という強い思いが根底に溢れた内容。非常に捻じれてはいるが、千葉県や埼玉県に対する深い愛情を感じる。
馬鹿馬鹿しいけど面白い。又、最初と最後に流れる「なぜか埼玉」が、何とも懐かしい。
総合評価は、星3.5個とする。