「2018週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」では7位、「このミステリーがすごい!2019年版【国内編】」では5位に選ばれ、そして第160回(2018年下半期)直木賞を受賞した小説「宝島 ~HERO’s ISLAND~」(著者:真藤順丈氏)を読了。
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英雄を失った島に、新たな魂が立ち上がる。固い絆で結ばれた3人の幼馴染み、グスク、レイ、ヤマコ。生きるとは走る事、抗う事、そして想い続ける事だった。少年少女は警官になり、教師になり、テロリストになり、同じ夢に向かった。
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アメリカによる沖縄統治時代、即ち「日本の敗戦から、1972年に沖縄本土復帰する迄。」を描いた作品。“兄・弟・妹の3人”及び“兄・妹”の2人”という血の繋がらない“兄弟妹”、そして或る“父子”と“母子”が登場し、彼等を通す事で、「今も尾を引いている“沖縄問題”」に付いて問題提起している。特に“共に悲惨な死を迎える或る父子と母子”は、“沖縄県民の悲惨な歴史の象徴”の様に感じた。
沖縄問題に関して“無条件”に、そして“上から目線”で沖縄県民を叩く人が居る。そういう人達に共通するのは「『日本にとって少しでも不都合な事柄は、証拠が在ったとしても、全て捏造で在り、逆に好都合な事柄は、仮に事実で無くても、全て正しい。』といった“捻じれた愛国意識の持ち主”。」か、(自分の親戚にも居るのだが)「沖縄県民を“格下”に見ていて、『そんな沖縄県民が、ああだこうだ主張するのは生意気!不平不満を口にする事で、国から金を毟り取りたいだけじゃないか。』といった“差別意識の強い人”。」の様に感じる。
又、彼等は「相手の立場に身を置き替える事が出来ない。」という“想像力の弱さ”も共通しているだろう。沖縄県の歴史、特にアメリカによる沖縄統治時代に起こった出来事を我が身の事と置き換えれば、沖縄問題を面白おかしく叩くなんて事は出来ない筈だ。
「沖縄問題とは、一体何なのか?」を知る意味でも興味深い内容だし、又、敗戦直後の沖縄の意外な事実も知る事が出来た。
人によっては「読み難い。」と感じるかも知れない。(読了はしたが、家人はそう言っていた。)「単語横の“沖縄方言”の付記や、口語による補足説明が過剰。」なのが原因と思われる。自分もこういう部分には煩わしさを感じなかった訳でも無く、途中から「単語横の沖縄方言の付記は、基本的に無視する。」事で対応した。沖縄方言の付記が“良い意味で”リズム感を作っている面も在るので、自分の様な対応をしない方が良いかも知れないけれど・・・。
大好きな映画「スタンド・バイ・ミー」と同質の“何とも言えない物悲しさ”を、此の作品を読み終えた時に感じた。
総合評価は、星4.5個とする。