************************************** 翌年に東京オリンピックを控えた、1963年の横浜。古い物を壊し、どんどん新しい物を作って行こうとする気運の中で、横浜のと或る高校でも老朽化した文化部部室の建物「カルチェラタン」の取り壊し計画が持ち上がる。 そんな騒動の中、学生達を率い、部室棟を守ろうとする少年・風間俊(声:岡田准一氏)と、高校に通い乍ら下宿宿を切り盛りする働き者の少女・松崎海(声:長澤まさみさん)が出会う。2人は順調に距離を縮めて行くが、或る日を境に、急に俊が余所余所しくなってしまう。其の理由は・・・。 ************************************** 以前にも書いたが、スタジオジブリが手掛けた作品で自分が見た事が在るのは「となりのトトロ」、「火垂るの墓」、「おもひでぽろぽろ」、「ゲド戦記」、そして「崖の上のポニョ」の5作品のみ。多くの人が見ておられるで在ろう「天空の城ラピュタ」や「もののけ姫」、「千と千尋の神隠し」等は見たいという思いが全く起こらなかったし、実際に見た5作品の中では「火垂るの墓」及び「おもひでぽろぽろ」は良かったのだけれど、残りの3作品は「好きなテーストでは無かった。」というのだから、熱狂的なジブリ・ファンからすると「どんな感性をしているのだ?」と批判されそう。 そんな自分が今回、新作の「コクリコ坂から」(何度見聞しても、此のタイトルを「ココリコ坂から」と間違えてしまう。)を観に映画館に足を運んだ。ハッキリ言って、全く期待しないで観に行った。 1963年の横浜を舞台にした此の作品、自身の幼少時代を思い出してしまう程、懐かしい光景や曲が登場。黒電話や蝿取り紙、ガリ版、アンクルトリスの置物等々、子供の頃に「普通に存在していた物」が然りげ無く描かれていたのにはグッと来たし、坂本九氏の「上を向いて歩こう」(動画)や岡本敦郎氏の「白い花の咲く頃」(動画)という名曲が使われていたのは、懐メロのファンとしては堪らなく嬉しかった。 「蛮カラ」なんて言葉はもう死語になってしまったけれど、自分が幼かった頃には未だそういう雰囲気を持つ人は存在していた。そんな蛮カラな学生達が多く登場するのも、歴史の彼方に追い遣られ様としている「昭和」という時代を感じさせる。 一部ネタバレになってしまうが(前宣伝で、其れを匂わせる台詞が流されていたけれど。)、俊が海に対して余所余所しい態度を取る様になったのは、「2人が、実は兄妹だった。」という事を知った為。「愛し合う2人が、実は兄妹の関係だった。」というのは「赤いシリーズ」の定番で、此れ又「昭和の香り」を感じさせる設定とも言える。 単に自分が聞き逃していただけかもしれないが、「海」の事を「メル」と呼ぶ人が居る理由が判らず、少々戸惑った。もし理由説明がされていなかった“としたら”、不親切さを感じる。 俊と海を巡る意外な結末にはホロリと来た。無理無理に引き伸ばさない、やや呆気無さをも感じる終わり方も、逆に余韻を残して良かったのかも。 一般的な評価は知らないが、個人的には可成り魅力を感じる作品で、総合評価は星4.5個とする。
自分もどちらかと言えばジブリ作品が苦手な口で、此の作品も初めは観に行く予定が在りませんでした。しかしジブリ作品に対して肯定的でも否定的でも無い、即ち割合中立的な立場の知人が実際に観に行って「此れは良いよ。」と言っておりましたので、観に行った次第。
「奇を衒っていない。」というのが、何よりも好印象を与えました。宣伝しか見ていないケースも含め、此処最近のジブリ作品には「あざとさ」を感じていたのですが、良い意味で「ストレートさ」が良かった。
そして中年の自分には、「懐かしさ」というスパイスが何とも魅力。「ああ、こんな感じだったなあ。」と我が幼少期を思い出す事が何度か。
又、年を経る毎に長時間の作品を見るのがしんどくなって来ているのですが(集中力が続かない?)、2時間を切る上映時間というのも良かったかと。
1965年からジャイアンツのⅤ9が始まった訳ですが、確か此の作品中にジャイアンツ戦の実況が流れていましたね。
今後とも何卒宜しく御願い致します。
大当たりでした。(ジブリマニアとは意見が異なるところかもしれますが)原作漫画やサントラCDまで買ってしまいました。
舞台の1963年は優勝と優勝の間の年でしたね。
「界を知らない子供には親が全て」というのは、凄く分かります。子供の頃って「物理的な意味での視野」も狭いけれど、「感覚的な意味での視野」も狭いもの。勿論、当人はそんな事を感じてもいないのだけれど、大人になると其れを痛感しました。
俊と海の関係が「初恋」だったのかどうかは判らないけれど、甘酸っぱくも在り、ほろ苦くも在った自身の初恋を思い出す映画でした。