「三菱UFJ銀行の元行員(40代女性)が、2020年4月から約4年半に亘り、練馬支店(旧江古田支店を含む)と玉川支店で、貸金庫を無断で解錠し、少なくとも顧客約60人分の資産十数億円を盗んでいた。」というニュースには、色んな意味で驚かされた。
貸金庫の開閉には、銀行側が保管している"正鍵"のコピーである"副鍵"(マスター・キーでは無い。)が必要だが、元行員は貸金庫の管理責任者という立場を悪用していた。だが、幾ら貸金庫の管理責任者とはいえ、貸金庫の管理には厳重なチェック体制が講じられていると聞き及んでいたので、「こんな事が起こるんだ。」という驚きが。(約4年半もバレなかったという事も含め。)
此の事件に付いて、19日付けの東京新聞[朝刊]が特集記事を組んでいた。貸金庫ビジネスは、銀行内の金庫を有料で貸してくれるサーヴィスで、戦前から続いているとの事。昔は富裕層や限られた得意先の為だけのサーヴィスだったが、今では「一定額を口座に預けている。」等の条件を満たした顧客に対し、少額で利用出来る様に成っている。
実は我が家も、15年前から貸金庫を利用している。記事「チェ・ホンマンみたいな大男!?」の中で詳しく書いた、空き巣被害が切っ掛けだ。幾つかの部屋が荒らしに荒らされていたのも然る事乍ら、そこそこ重量の在る頑丈な家庭用金庫が"バール状の物"で抉じ開けられ、"残骸"が床に転がっているのを目にした時には、心底ぞっとした。
こんな貧乏な家からも、盗人は金銭等を奪って行った。「現金は、必要最低限しか家に置かない。」という主義なので、現金の被害は大した事が無かったのだけれど、母が祖父母や父から貰った宝石等が被害に。金庫内には"土地の権利書"等の重要な書類も入れておいたのだが、其れ等は持って行かれる事は無かったものの、床に散乱している状態。
恐ろしくなって、直ちに"講じるべき防犯対策"を徹底的に調べ、実際に講じた。其の過程で貸金庫の利用も決めたのだけれど、幾つかの銀行に当たった所、利用にはそこそこハードルが高かった。其れでも利用者は多い様で、「申し訳無いのですが、"空き"が無いんです。」と断わられた所も。何とか借りられる所が見付かり、「A4より若干大き目のサイズで、深さは7cm程。」という一番小さなサイズの貸金庫を借りる事に。
で、話を元に戻すが、今回のニュースで驚いた事の1つに「貸金庫から盗まれたのが、顧客約60人分の資産十数億円。」という事実。単純計算で言えば、顧客1人当たり2千万円~3千万円が盗まれた事に成るが、何と其の多くが"現金"だったと言うのだ。確かに貸金庫のサイズは色々在るので、現金を入れられなくは無いだろうが、其れにしてそんなに多くの現金を入れている人が少なく無いとは・・・。
「ATMで多額な入金が出来ない事、日本では預金しても利息が小さい事等から、口座に預けるのでは無く、貸金庫を選ぶ人が多い。」という事情"も"在るが、「"秘匿性の高さ"を悪用し、脱税等、不正な金の隠し場所として利用されている。」というのも少なく無い様だ。国税庁が毎年公表する査察概要によれば、脱税等、不正資金の隠し場所として2021年度、2022年度、そして2023年度と続けて、「銀行の貸金庫」が例示されている。2021年度には、不正資金の隠し場所として、銀行の貸金庫から現金約2億5千万円が見付かったケースも在ったとか。
貸金庫での現金の扱いは曖昧で、三菱UFJ銀行は貸金庫規定に、格納品の範囲として「有価証券や貴金属に準ずると認められる物」と記しているが、現金に付いては明示されていない。今回の事件発覚を受け、行われた同行の会見では「顧客によって『準ずる物』という事として、(現金を)預ける人が一定数居ると推察している。」としつつも、「何の様な性質の資金かは知らない。」と説明。禁止も推奨もしていない、実にグレー・ゾーンな状態に在る訳だ。
我が家の場合、隠さなければ成らない程の金銭的余裕は全く無いし、貸金庫に預けているのは通帳や印鑑、重要書類といった物だけ。なので、貸金庫の貸し出し規定が厳しく成っても別段問題は無いのだが、「規定が厳しく成る。→我が家の様な貧しい家庭が、貸金庫を借り難く成る。」という事態だけは、絶対に避けて欲しい。
今回の事件、被害に遭った顧客に対し、同行は補償を開始しているとか。犯人の元行員は、「何の貸金庫から、幾ら盗んだか。」等を詳細にメモにして残している様だが、何しろ"秘匿性の高さ"が特徴でも在る貸金庫だけに、顧客側が「もっと入っていた!」等とクレームを入れた場合は、一体どう対処するのだろうか?