昨日の「マットビハイクル」の件に引き続き、今日もツバサ様のブログからこちらの記事を紹介させて貰う。NHK-BS2にて4月3日&10日に放送される「BS熱中夜話」でウルトラマン特集が組まれるというのも見逃せないが、NHK-BS2にて3月23日から7夜連続で約30時間放送される「とことん!石ノ森章太郎」も必見。個人的には第一夜~第三夜、最終夜に放送される「仮面ライダー」(第1話、第4話、第40話&第84話)に「人造人間キカイダー」(第37話&第42話)、「ロボット刑事」(劇場版)、「イナズマン」(第11話)、「秘密戦隊ゴレンジャー」(第46話)、「がんばれ!!ロボコン」(第16話)、「快傑ズバット」(第32話)、「仮面ライダーV3」(第49話&第51話)、「仮面ライダーアマゾン」(第5話)、「仮面ライダーストロンガー」(第39話)といったラインナップが堪らない。「怪傑ズバット」はリアル・タイムで見ていなかったものの、特撮番組のの男優では最も好きな宮内洋氏が主演だし、その他の作品に関しては当時夢中で見ていたからだ。早速、録画予約をしなければ。
閑話休題。
「貴志祐介」という作家を知ったのは、ミステリー大好き人間の後輩からの紹介だった。早速「黒い家」という作品を読んだのだが、余りの面白さから一気に読破。以降、出版されている彼の全作品を読み漁る事に。今では東野圭吾氏や石田衣良氏等と並び、「“外れ”が無い作家」というイメージが自分には出来上がっている。唯一残念なのは、この作家が余りにも寡作な事。1996年の処女作「十三番目の人格 -ISOLA-」以降、昨年迄に僅か6冊しか出版されていない。つまり2年間で1冊弱の出版ペースになり、貴志作品のファンは飢餓状態で新作を待っている状況なのだ。そんな彼の新作が、約4年振りに出版された。上&下巻併せて千頁を超える大長編で、そのタイトルは「新世界より」。
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物語の舞台は千年後の日本。全国に9つの町が存在し、総人口は僅か5~6万人という世界。核爆弾にも匹敵するという念動力「呪力」を得た人類は、その余りの破壊力から「攻撃抑制」と「愧死機構」という2つのメカニズムにて制御されている。
町の一つで在る神栖66町では、古くより「悪鬼」と「業魔」なる恐ろしい異形の存在が伝説として在り、町の外れに在る注連縄「八丁標」より外に出てはならないと子供の頃より教えられて来た。その子供達は呪力に目覚めた日から「全人学級」なる学校への入学が許可され、大人になる為の教育が施されるのだが、呪力を上手く使えない子供の前にはネコダマシなる化け物が現れ、その子は神隠しに遭ったかの様に“消えて”しまう言われているのだった。
争い事の無い理想郷と誰しもが信じていた神栖66町。しかしそれは、子供達を徹底管理する事で成立していた、実に危うい&偽りの共同体だった。古くからの伝説が実体となって現れた時、町は未曾有の危機に見舞われ・・・。
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人の言葉を話すバケネズミの他に、ミノシロやトラバサミ、カヤノスヅクリ、イッタンハエトリガミ、オオオニイソメ等々、奇妙奇天烈な動物達が跋扈する不思議な世界。古くは「不思議の国のアリス」、近年で言えば「ハリー・ポッター・シリーズ」の世界観と何処かオーバーラップする様な感が。
ネット上の書評では「序盤の展開がくどくどしくてつまらなかったが、中盤以降はおもしろくてのめり込んでしまった。」という意見が目立っていたし、件の後輩も同様の事を述べていた。上巻を読み終えた時点では、自分も「余り面白くないなあ。」という思いが。“現代”と似た雰囲気を持ち乍ら、その一方で余りにも乖離した“千年後の世界”のディテール説明が、過剰と思える程に展開されていたからだ。下巻に入っても面白さを感じていなかったのだが、5分の1位を超えた辺りからストーリーに引き込まれてしまった。
それ迄の「不思議の国のアリス」や「ハリー・ポッター・シリーズ」の雰囲気から、映画「猿の惑星」の雰囲気にがらっと変わった感じが。虐げている意識の無い“支配者”、そして常に虐げられている意識を持つ“被支配者”という意識差。其処から生まれる激しい憎悪の念。現代の世界でも同様の事柄は存在しており、作者の痛烈な社会批判とも言える。
冗長とも思えた世界観の説明も、読み終えてみれば“千年後の世界”に思いっ切りのめり込ませる為の“誘引剤”だった様に思う。其処迄計算していたと思われる貴志氏は、やはり只者では無い。
面白い作品だったのは間違いない。かなりのレベルの作品だとも思う。だが中盤からの大盛り上がりの展開からすると、結末にやや物足りなさを感じてしまったのも事実。総合評価はギリギリ星4つとしたい。
閑話休題。
「貴志祐介」という作家を知ったのは、ミステリー大好き人間の後輩からの紹介だった。早速「黒い家」という作品を読んだのだが、余りの面白さから一気に読破。以降、出版されている彼の全作品を読み漁る事に。今では東野圭吾氏や石田衣良氏等と並び、「“外れ”が無い作家」というイメージが自分には出来上がっている。唯一残念なのは、この作家が余りにも寡作な事。1996年の処女作「十三番目の人格 -ISOLA-」以降、昨年迄に僅か6冊しか出版されていない。つまり2年間で1冊弱の出版ペースになり、貴志作品のファンは飢餓状態で新作を待っている状況なのだ。そんな彼の新作が、約4年振りに出版された。上&下巻併せて千頁を超える大長編で、そのタイトルは「新世界より」。
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物語の舞台は千年後の日本。全国に9つの町が存在し、総人口は僅か5~6万人という世界。核爆弾にも匹敵するという念動力「呪力」を得た人類は、その余りの破壊力から「攻撃抑制」と「愧死機構」という2つのメカニズムにて制御されている。
町の一つで在る神栖66町では、古くより「悪鬼」と「業魔」なる恐ろしい異形の存在が伝説として在り、町の外れに在る注連縄「八丁標」より外に出てはならないと子供の頃より教えられて来た。その子供達は呪力に目覚めた日から「全人学級」なる学校への入学が許可され、大人になる為の教育が施されるのだが、呪力を上手く使えない子供の前にはネコダマシなる化け物が現れ、その子は神隠しに遭ったかの様に“消えて”しまう言われているのだった。
争い事の無い理想郷と誰しもが信じていた神栖66町。しかしそれは、子供達を徹底管理する事で成立していた、実に危うい&偽りの共同体だった。古くからの伝説が実体となって現れた時、町は未曾有の危機に見舞われ・・・。
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人の言葉を話すバケネズミの他に、ミノシロやトラバサミ、カヤノスヅクリ、イッタンハエトリガミ、オオオニイソメ等々、奇妙奇天烈な動物達が跋扈する不思議な世界。古くは「不思議の国のアリス」、近年で言えば「ハリー・ポッター・シリーズ」の世界観と何処かオーバーラップする様な感が。
ネット上の書評では「序盤の展開がくどくどしくてつまらなかったが、中盤以降はおもしろくてのめり込んでしまった。」という意見が目立っていたし、件の後輩も同様の事を述べていた。上巻を読み終えた時点では、自分も「余り面白くないなあ。」という思いが。“現代”と似た雰囲気を持ち乍ら、その一方で余りにも乖離した“千年後の世界”のディテール説明が、過剰と思える程に展開されていたからだ。下巻に入っても面白さを感じていなかったのだが、5分の1位を超えた辺りからストーリーに引き込まれてしまった。
それ迄の「不思議の国のアリス」や「ハリー・ポッター・シリーズ」の雰囲気から、映画「猿の惑星」の雰囲気にがらっと変わった感じが。虐げている意識の無い“支配者”、そして常に虐げられている意識を持つ“被支配者”という意識差。其処から生まれる激しい憎悪の念。現代の世界でも同様の事柄は存在しており、作者の痛烈な社会批判とも言える。
冗長とも思えた世界観の説明も、読み終えてみれば“千年後の世界”に思いっ切りのめり込ませる為の“誘引剤”だった様に思う。其処迄計算していたと思われる貴志氏は、やはり只者では無い。
面白い作品だったのは間違いない。かなりのレベルの作品だとも思う。だが中盤からの大盛り上がりの展開からすると、結末にやや物足りなさを感じてしまったのも事実。総合評価はギリギリ星4つとしたい。
子供の頃に「絵空事」と思っていた事柄が、今となっては「現実」となっていたりする。未来を予見したクリエイター達の深い見識や想像力には、唯々敬服する許り。
貴志作品の中ではゲームブック題材にした「クリムゾンの迷宮」(http://www.bk1.jp/product/01675087)が特に好きなのですが、それに一寸似たテーストを持つ作品ですよね。読む前には「宗教的な色彩の強い作品なのかな?」という誤解をしていたので、「どうなのかなあ?」と不安を持っていたのですが、やはり貴志作品はレベルが高いです。
上巻乃至下巻の始め辺り迄ストーリー展開がかったるく、「このまま終わってしまうのか?」という不安が在りましたが、それ以降は怒涛の展開と言いますか、あっと言う間に読み進んでしまう面白さ。仰る様に“仮想の世界”を描き乍ら、その実は“現代社会”の闇の部分を炙り出している。御見事です。
寡作で有名な貴志氏ですが、驚く事に「新世界より」発売から2ヶ月しか経っていない今月中に「狐火の家」なる短編集が発売になるとか。同じ年に2冊発行というのは多分「クリムゾンの迷宮」&「青の炎」以来かと思われるのですが、調べてみたら「狐火の家」に収録されている短編は、一部書き下ろし作品を除いては2005年~2007年に雑誌連載されていたものなんですね。又、「死が二人を結ぶまで」なる長編が連載開始からかなり経っているのに、未だ刊行されていないとか。どうやら新しい構想を元にして、この作品は書き下ろしで出版するという話も在る様です。(Wikipedia情報)
giants-55さんも指摘されているように、ここまで説明が必要か、いや、ここまで説明が必要なものを登場させなきゃいけないのか、と思いながらも知らず知らずその「新世界」に引き込まれていってるんですよね。そうやって作者の「筆力」に捻じ伏せられるのが心地よかったりするのも貴志祐介ならではの魅力ともいえますね。
物語の展開が抜群に面白いので、それと対比すると結末が少し物足りなく感じてしまうのは、これまでの氏の著書にも見られる傾向かなと。
「業魔」「悪鬼」「バケネズミ」等が現代社会における何かを象徴してるようで、色々考えさせられる作品でした。